みりん「同じタッチで描けるAdobe Frescoだからできる、アナログ+デジタルのハイブリッド表現」Adobe Fresco Creative Relay 44

みりんさん・メインビジュアル

アドビでは毎月、X(Twitter)上でAdobe Frescoを使ったイラストコンテストを実施しています。応募は簡単、X(Twitter)で アドビ公式アカウント をフォローして、 #Frescoイラコン をつけてポストするだけです。
11月のテーマは「夜空」。朝夕の寒さが増し、日に日に冬へと向かうこの季節、夜の空もまた徐々に澄み渡っていきます。月と星が輝く夜空を見上げる帰り道や、冬の星座の輝きをAdobe Frescoで描き、#Frescoイラコン をつけて投稿しましょう。
そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第44回はTikTok、Instagramを中心にかわいいイラスト、デザインを発信しつづけるイラストレーター・みりんさんに登場いただきました。

黒いバックグラウンドの前に立っている 中程度の精度で自動的に生成された説明
みりんさん・作品

アナログ+Adobe Frescoで描く夜空と月

「お月さまが大好きで、自分の作品のなかにもよく月を描くことが多いので、“夜空”というテーマをいただいたとき、”月だけは絶対にいれるぞ!”と思って描きはじめました。
月は月でも、満月、半月、三日月……いろいろな月がありますよね。わたしは色の濃い、まんまるなお月さまが好きなので、オリジナルのキャラクター・ちゃちゃが月から覗いているようにしよう。夜空がきらきら見えるように空は暗くしよう。全体が暗くならないように夜空の周りには月を散りばめたフレームを描こう……そう考えながら今回の構図を決めていきました」

テクスチャ感のある背景に、アナログタッチのイラストにしあがった今回のイラスト。
実はみりんさんならではの、ユニークなアプローチで描かれています。

「最近、アナログにはまっていることもあって、今回はアナログで描いたものをスキャナで取り込み、Adobe Frescoを使って仕上げるというハイブリッドなプロセスに挑戦してみました」

みりんさん・アナログからデジタルへ

左:アナログで描いた状態/右:Adobe Frescoで仕上げた状態。フレームの影やフレーム外にきらめく星も、Adobe Frescoで描き足されていることがわかる

「テクスチャのある紙に色鉛筆で描くと、どうしても色が乗らない部分が出てくるので、Adobe Frescoでその穴を埋めつつ、全体に水彩ブラシで青みを加えています。
アナログ工程で水彩を使おうかとも思ったのですが、画材の準備もしなくちゃいけないし、失敗もできません。それならいつでもやり直せるデジタルでやっちゃおうと。
アナログの粗い部分を、Adobe Frescoの豊富なブラシで色を重ねて補いながら仕上げる……こうした使いかたができるのは、アナログとまったく同じタッチで描けるAdobe Frescoならではですよね」

みりんさん・アナログ道具

アナログで映える絵と、SNSで映える絵。
みりんさんにとって、デジタルツールはその差を埋めるためのものでもあります。

「アナログで描いたものをスキャンした画像は、たとえPhotoshopで調整をしたとしても、アナログで描いた表現のなかでしか、変化をつけることができません。
SNSでインプレッションを上げるには、色をもっとハッキリさせて、色の塗り残しを埋めたほうがいい。そうしたSNS向けの加筆を、アナログのタッチを活かしたままできるというのは、Adobe Frescoにしかできない強みだと思います」

みりんさん・作品

TikTokをきっかけにトップクリエイターに駆け上がる

TikTokフォロワー・54.7万人、Instagramフォロワー・11.9万人と、主要SNSにおいて絶大な支持を受けるイラストレーター・みりんさん(2023年11月現在)。投稿するものはイラストだけでなく、TikTokではデザイン・イラストのアイデアやテクニックも披露し、数十万の♡がつくこともめずらしくありません。

みりんさん・SNS

圧倒的なコミュニケーション力で活躍するみりんさんですが、実はイラストレーターとして活動を始めたのは2021年から。わずか2年でデザイン・イラストの世界でインフルエンサーへと登りつめた、そのプロセスはどのようなものだったのでしょうか。お話を伺いました。

「2021年にイラストレーターとして活動を始める前は、デザインやイラストとはまったく無縁の、建築業界で働いていました。
ただ、もともと絵を描くのは好きだったんです。小学校の頃は飼っていた犬が大好きで、スケッチブックがあれば一冊、全ページをその犬の絵で埋め尽くすくらい、絵を描いていましたね。
わたしの家族は、ちょっと感情表現がオーバーなところがあって、絵を描けばみんなが褒めてくれるし、賞を取った日にはその絵を額装して飾る……そんな家で(笑)。
だからこそ、絵を描きつづけることができたんだと思っています」

みりんさん・作品

学年が上がるにつれて、みりんさんのなかには「漫画家になりたい」という目標も芽生えます。しかし一方で、絵を仕事にしていくことの難しさも、肌で感じるようになっていきました。

「中学校に入っても変わらず絵を描くのは好きだったのですが、ネットに触れるようになると、“世の中に絵のうまい人は本当にたくさんいるんだ……”と実感して。
絵は好きでも、将来、それを仕事にできるかどうか、不安に思えてきたんです。
高校から先の進路を考える頃には、絵の道は諦め、別の道を探すようになっていました」

そこで選んだのが建築の道。
もともとは興味がなかったものの、“手に職を”という親の希望、“ものづくりが好き”というみりんさんの気質、そのふたつから導き出された選択肢でした。

「わたしは、一度方向を決めたらそこに全力投球するタイプなんですよね。
建築の勉強をすることになってからは、それまで絵に傾けていた熱量のすべてを建築に注ぎこみました。
建築業界に就職したあともそれは変わらず、時間の99%は建築のことに使い、趣味として絵を描くのは週に数時間あるかどうか……そんな生活でした」

原田治さんの本

みりんさんが影響を受けたイラストレーター・原田治さんの本

持ち前の一途さで獲得した知識とスキルによって職場でも信頼を得ていたみりんさん。
しかし、2021年、退職を決意します。

“絵を仕事にする”
中学校時代にあきらめた夢を、もう一度追うことにしたのです。

「それからはイラスト一直線!という感じで、それまで建築に向けていたパワーを全部、絵に向けるようになりました。
ただ、SNSアカウントを作り、絵を発表してみたのですが……最初はまったく見てもらえませんでした。どうすれば見てもらえるだろうと各SNSを調べていくうちに、当時のTikTokにはイラストを投稿している人が少ない、動画をアップしている人もほとんどいないということがわかって。
それからはTikTokを中心に動画をアップするようになったんです」

メインのSNSをまずはTikTokに定め、イラストに動画を組み合わせた発信をスタートすると、これが功を奏してフォロワーが急増。
のちに他のSNSでもショート動画が投稿できるようになると、TikTokで培ったノウハウを水平展開していくことで、活動の幅を広げていきました。

「運がよかったとしか言えません(笑)。
当時のTikTokはイラストレーターにとっての言わばブルーオーシャン。もし、始めるのがいまだったとしたら、同じようにはできないでしょうね」

こう語るみりんさんですが、これだけのフォロワー数は、運だけで到達できるものではありません。
これだけ多くの人の心をつかむコンテンツを生み出す背景には、みりんさんの日々の研究、研鑽に加え、高いコミュニケーション能力があってこそ。
その真摯な姿勢は仕事へも結びついていき、現在はSNSの活動をしつつ、イラスト、デザイン、本の執筆、講演等、幅広いフィールドで活躍しています。

次々と機能が追加されるAdobe Fresco

2022年頃からAdobe Frescoを触りはじめたというみりんさん。
そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

「iPadで描くとき、それまでは別のドローイングソフトを使っていたのですが、もっと違うタッチを試してみたくなって。そのとき出会ったのがAdobe Frescoでした。
いまでも複数のツールを使い分けていますが、使いはじめたころから比べるとAdobe Frescoを使う頻度は何倍にも増えています」

みりんさん・Fresco画面

なぜ、Adobe Frescoを使う割合が増えたのか。みりんさんはその理由のひとつは「新機能搭載のスピード感」を挙げています。

「Adobe Frescoは頻繁にバージョンアップしていて、使いはじめた頃にはできなかったことがどんどんできるようになっています。自分が“こうだったらいいな”と思っていた機能が追加されていくなかで、Adobe Frescoの使用頻度が増えていきました。
ブラシも十分すぎるほど豊富なのに、ふつうならお金を出さないと買えないようなブラシが次々と加わっていますよね。絵を描く人にとって、ブラシは命と同じくらい大事なので、本当にありがたいですし、何よりも描いていておもしろい。
How to動画を作る際も、無料で使えるAdobe Frescoなら視聴者にもプッシュしやすいというのも大きなポイントですね」

みりんさん・制作環境

みりんさんの制作環境

「実は今回、完全にAdobe Frescoだけで描いた作品も用意していて。
これは、ふつうに夜空に浮かぶ月ではなくて、水面に揺れる月をメインにした作品です。
わたし自身、落ち込んでいるときは月を見上げて元気をもらうのですが、この絵では趣向を変えて、水面に映った月を眺める様子を描きました。
水面に映るものは水彩で、現実に存在するものは油彩でと描き分け、最後に粗めのテクチャを重ねて仕上げています。
最後にテクスチャを乗せる処理は、わたしの作品では必ず入る工程です。“これで完成!”という感じがするんですよね(笑)」

みりんさん・作品

イラスト、デザイン、SNS……さまざまな分野で、パワフルな活動を続けるみりんさんが次に描く目標はどこにあるのでしょうか。

「いまやりたいことは2つあって。
ひとつは自分の画集を出すこと。もっと作品を描いて、どんな想いでこの絵を描いたのか、そうしたメッセージも伝えていきたいと思っています。
もうひとつは社会貢献。いろいろな人に支えてもらったからこそ、いまのわたしがあります。絵を描くことを通して、その恩返しのようなものをしたいと考えています」

その活動はすでにスタートしており、みりんさんは著書をいま住んでいる市に寄贈しているほか、SNSマナー講座ではボランティアとして講演することもあるそうです。

「そうした活動を発信していくことで、”社会貢献=かっこいい”みたいな風潮が生まれたらいいですよね。それが当たり前の社会になったら、イラストレーターもいまよりもっと”夢のある職業”になるんじゃないか。そう思っています」

みりん
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