Adobe Fontsオススメ欧文書体-Serif・San Serif・Slab Serif編|文字とフォントのことはじめ10
欧文書体の新定番をAdobe Fontsで見つけよう
文字・フォント・デザインの情報をお届けする連載「文字とフォントのことはじめ」、第10回は膨大な欧文書体のなかからオススメフォントを紹介していきます。
Adobe Fontsは非常に多くのフォントを自由に使えるクラウドフォントサービスです。
その数は2023年12月現在、25,000以上にものぼり、その多くはラテン文字を中心にした、いわゆる“欧文書体”が占めています。
デザインワークでは、使えるフォントの数が多いほど、文字表現の選択肢は増えていきます。さまざまな書体が使えることはデザイナーにとって歓迎すべきことなのは間違いありません。
しかし一方で、その膨大な書体を前に、“数が多すぎて、探すのが大変”、“どれがいい書体なのか、よくわからない”と、頭を悩ませることもあるのではないでしょうか。結果、いつも使っている書体に落ち着いてしまうとしたら、目の前に広がる書体の山も宝の持ち腐れになってしまいます。
この連載では、国内外のタイプファウンダリの情報を届けるwebサイト・TypeCache を運営する Akira1975 さんによるセレクトのもと、Adobe Fontsで使える欧文書体を「おさえておきたい定番書体」「あると便利な書体」「注目の書体」という3つの視点でピックアップ。クリエイティブの幅を広げるオススメ書体を2回にわたって紹介していきます。
Adobe Fontsという宝の山から、新しい書体を見つけ出し、欧文書体の定番をアップデートしていきましょう。
- 書体見本は標準的なウェイトのみ抜粋して構成。一部の書体では特徴的なグリフも掲載した。
- 書体名につく( )は、Adobe Fontsで利用可能なファミリーに含まれるフォント数を示す。バリアブルフォントの場合はVと表記し、プリセットのスタイル数を付記。例:(V・10)
- Adobe Fontsでは同じ書体名でも、オプティカルサイズや用途の違いによってファミリーが分けられているものと、ファミリー内でスタイルとしてバリエーションを持つものがある。
- 欧文書体の種類、Adobe Fontsでの利用方法は以下の記事を参照。 → 「欧文書体のきほん|文字とフォントのことはじめ09」
Serif(セリフ)のオススメ書体
Adobe Fontsの欧文書体は、Serif、San Serif、Slab Serif、筆記体、手書き風、等幅という6つのジャンルに分けられています。
2023年12月現在、Serif(セリフ)には554のファミリーがあり、Adobe Garamond、Garamond Premier、Adobe Caslon、Century Old Style、Goudy Old Style、ITC Galliard、Minion、Linotype Didot、Plantin、Sabon、Warnock、Mrs Eaves といった、日本でもなじみのある書体はしっかりと網羅されています。
しかし、これらの書体は、Adobe Fontsで使える書体のごく一部にしか過ぎません。ここからは akira1975 さんによる解説とともに、いま使いたい、オススメの書体を紹介していきます。
Serif|おさえておきたい定番書体
- Scala(6 )……伝統的な骨格に現代的な肉付けを施した、本などによく使われる人気の書体。サンセリフ版・Scala Sans や、装飾的なセリフ書体・Scala Jewel もある。
- Freight Text(24 )……Joshua Dardenによるデザイン。より大きいサイズ用のFreight DisplayやFreight Big、小サイズ用のFreight Micro、サンセリフ版のFreight Sansがあり、Adobe Fontsでは Freight として提供されている。ここに含まれる Macro や、Freight Neo などのバリエーションは、オリジナルデザイナーのデザインではないので注意。
- Miller Text(4 )……より大きいサイズ用のDisplay、Bannerもある。Headlineはやや幅の狭い、見出し用のバージョン。
- Farnham(30 )……フライシュマンの書体をベースに、時代遅れな部分や気が散る部分などを修正し、現代的な書体によみがえらせたもの。Commercial TypeのChristian Schwartzによるデザイン。Headline は、Displayよりコンパクトにし、Farnhamの個性を維持しつつ、その癖を抑えたもの。Text は3ウェイト+イタリック、Display は5ウェイト+イタリック、Headline は7ウェイト+イタリックがある。
- Dolly(4 )……コントラストが比較的低く、やわらかさと温かみがあるのが特徴。本文向きの書体。
Serif|使いやすい&あると便利な書体
- Garvis(4 )……IPA(国際音声記号)をサポート=発音記号が入った書体。
- Canto(32 )……Trajan系の書体だが、小文字もある。通常の筆致以外に、Brush、Brush Open、Penといったバリエーションを持つ。
- Nexus Serif(4 )……Regular Italicにはスワッシュ文字が入っている(大文字には2種類ずつ)。Nexus Sans、Nexus Mix、Nexus Typewriterもあり。
- Chapman(24 )……見出し用のモダン・セリフ書体。3種類の字幅と4ウェイトを備える、豊富なバリエーションが魅力。
- Bookmania(10)……20世紀初頭のオリジナルのBookmanの頑丈な優雅さに、1960年代のBookmanのたくさんのスワッシュを組み合わせた書体。非常にたくさんの異体字やスワッシュ文字が入っている。
- Desire Pro(1)……やや幅の狭めの見出し用セリフ書体。スワッシュ文字が大量に入っている。ロゴに最適。
- Skolar PE Variable(V・10 )……キリル文字、ギリシャ文字にも対応した Skolar のバリアブル版。デーヴァナーガリー文字版、グジャラーティー文字版、サンセリフ版、サンセリフ版のアラビア文字版もAdobe Fontsで利用可能。
- Atlante Variable(V・36 )……太さとオプティカルサイズの軸を持つバリアブルフォント。異体字やスワッシュ文字、合字が豊富。アイコンもあり。
- Marlide Display Variable(V・6 )……太さの軸を持つ見出し用のセリフ書体のバリアブルフォント。
- Sherborne Variable(V・30 ) ・ Palast Variable(V・18 )……太さとオプティカルサイズの軸があるセリフ書体のバリアブルフォント。
Serif|注目書体
- Bely(5)……本文用のものは2ウェイト+イタリック。見出し用のDisplayは非常にコントラストが高く、太さも備える人気書体。
- Capitolium 2(11)……有名書体デザイナー・Gerard Ungerによるデザイン。クラシックだが同時に現代的でもある。もともとは2000年のローマ・カトリック教会の聖年記念のために、ローマのサインや情報システム用にデザインされた書体。
- Ohno Blazeface(18)……非常に太く、xハイトの高いモダン・セリフ書体。12pt〜72ptまで、9つのオプティカルサイズがある。
- Ohno Fatface(45)……太さが太く、xハイトの高いモダン・セリフ書体。幅が5種類あり、それぞれに12pt〜72ptまで、9つのオプティカルサイズがある。
San Serif(サンセリフ)のオススメ書体
続いて、San Serifを見ていきましょう。
2023年12月現在、San Serif(サンセリフ)には1149のファミリーが登録されています。
日本でもよく知られている Century Gothic、Futura PT、ITC Avant Garde Gothic、ITC Franklin Gothic、Myriad、ITC Officina Sans などはAdobe Fontsで利用できる一方、Helvetica、Frutiger、Univers、Avenirのような定番書体は提供されていません。
しかし、Adobe Fontsには、それを補うに十分な書体が数多く用意されています。
San Serif|おさえておきたい定番書体
- FF Meta(32 )……ドイツ連邦郵便からの依頼で作られた(結局不採用)、非常に人気のあった書体。FF Meta Headline、FF Meta Serifもある。
- FF Dax(42 )……小文字の「a」の右下の部分が出ないデザインになっているのが最大の特徴。このような a(spurless a)を持った書体のなかで最も有名な書体。幅が4種類ある。
- Interstate(36 )……かつてのアメリカの高速道路用の書体をベースに作られた書体。幅が3種類ある。
- Klavika(24 )……全体的にスクエアで、開口部の広い、モダンな書体。ボウルの空いた二階建ての g が特徴。
- Neo Sans(12 )……スクエアでソフトでモダンな書体。開口部は広い。キリル文字、ギリシャ文字もサポート。
- Brandon Grotesque(12 )……ややソフトな、幾何学的サンセリフ書体。小文字が小ぶり。より本文に向いたBrandon Textもあるが、Adobe Fontsでは提供されていない。
- Agenda(54 )……幅が4種類あるヒューマニスト・サンセリフ書体。改刻版 Agenda One もある。
- Proxima Nova(16 )……一時期、多くのwebサイトで使われた超有名書体。Extra Condensed、Condensed、Wide、Extra Wide の幅があるほか、Proxima Softも提供されている。
- Vista Sans(24 )……xハイトが高く、開口部も広い、現代的なデザインのサンセリフ。小文字のaが特徴的。カーリーな飾りのついた異体字がおもしろい。Vista Sans Narrow や Vista Slab もある。
- Parisine(30 )……パリの地下鉄のサイン書体として作られた書体。似た仲間のParisine Plus、Parisine Office もある。
San Serif|使いやすい&あると便利な書体
- Omnes(72 )……人気の丸ゴシック書体。前述の Freight と同じデザイナー。Latinには4つの幅がある。Adobe Fontsでは、Cyrillic、Greek、Arabic、Georgian、Hebrew版も利用可能。
- Sweet Sans Pro(18 )……Engravers Gothicの代替になる書体。Engravers Gothicにはない小文字もある。9ウェイトとそのイタリックがある。
- Cy(9 )……異体字が非常に豊富な幾何学的サンセリフ書体。9つのウェイトを持つほか、Adobe Fontsでは Cy Text も利用可能。
- Neue Haas Grotesk(22 )……Commercial TypeのChristian Schwartzによる“Helveticaの改刻書体”。Helveticaの前身であるNeue Haas Groteskに立ち返って、デジタル化をやり直したもの。
- Bree(12 )……Type Togetherのロゴをベースに作られたサンセリフ。イタリックを直立にしたようなデザイン。Cyrillic Variable、Greek Variable、Thai Variable のほか、スラブセリフ版の Bree Serif もある。
- Forma DJR(82 )……イタリアのファウンドリー・Nebioloから1968年にリリースされたネオ・グロテスク「Forma」のデジタル版。ネオ・グロテスクだが小文字の a は一階建てで、G のスパーは出ない。R の脚もまっすぐである。ただし、異体字として二階建ての a やスパーの出る G、脚のカーブした R も入っている。5つのオプティカルサイズ(Banner / Display / Deck / Text / Micro)を持ち、Cyrillic、Greek、Thai、Arabic、Hebrew版もある。
- Auto(24 )……イタリックが3種類あるヒューマニスト・サンセリフ書体。
San Serif|注目書体
- IvyMode Variable(V・10)……コントラストのあるサンセリフで近年人気の書体。高級感を出したいデザイン向き。
- Degular(42)……近年の企業ロゴでよく見られる、幾何学的なグロテスク書体を意図して作られた書体。見出し用(Display)、通常用、本文用(Text)の3つのオプティカルサイズがあり、それぞれに7つの太さがある。G、a、g、tに、デザインの異なる異体字が用意されている。
- PF Marlet Display(12)……数々の賞を受賞した、コントラストの大きい見出し用サンセリフ書体。多くの異体字、大文字同士の派手な合字を持つ。キリル文字やギリシャ文字もサポート。
Slab Serif(スラブセリフ)のオススメ書体
最後に、Slab Serif(スラブセリフ)を見ていきましょう。
2023年12月現在、Slab Serif(スラブセリフ)には159のファミリーが登録されています。
Clarendonは日本でもよく知られているスラブセリフ書体のひとつですが、Adobe Fontsではこのスタイルを備えた、Clarendon Text、Job Clarendon などを利用することができます。このほか、Chaparral、Serifa、Stymie、PMN Caecilia、Rockwell や Rockwell Nova、かつて流行した Triplex Serif なども提供されており、セリフ、サンセリフに比べると数は少ないながらも、充実したラインナップになっています。
Slab Serif|おさえておきたい定番書体
- Jubilat Variable(V・24)……バリアブル・フォント。太さの軸がある。受賞歴のあるスラブ・セリフ書体。G、J、Q、R、a、c、f、gなど多くの異体字がある。
- FF Unit Slab(14)……FF Metaのデザイナー、Erik Spiekermannを中心としたチームで作られた、幅のコンパクトなスラブ・セリフ書体。キリル文字やギリシャ文字もサポート。FF Unit、FF Unit Rounded もある。
- Vista Slab(12)……Xavier Dupréによるデザインの現代的なスラブセリフ書体。サンセリフ版・Vista Sansもある。
Slab Serif|使いやすい&あると便利な書体
- Roster(59)……もとは『Sports Illustrated』誌のために作られた、スポーツに適した見出し用の書体。5つの幅があり、各6ウェイトあるが、Adobe FontsではRoster Blackは提供されていない。外側の輪郭が丸く、内側が四角い処理になっているのが特徴のひとつ。
- Adelle(30)……通常幅は8ウェイト、Condensedは7ウェイト+イタリックで構成される。Adobe Fontsではこのほか、サンセリフ版、等幅フォント版、サンセリフのアラビア文字版 の利用が可能。
- Kulturista(10)……全体的にスクエアな形状のスラブセリフ書体で5ウェイトとそのイタリックで構成されている。サンセリフ版の Nudista もある。
- LiebeRuth(4)……手書き風のスラブセリフ書体。スワッシュ文字もたくさん入っている。
Slab Serif|注目書体
- Mislab(21)……Xavier Dupréによるデザイン。スラブセリフにサンセリフを少しミックスしたような書体。開口部が広く、xハイトは高い。幅が3種類ある。
- Dapifer(18)……オールドスタイルなセリフ書体のスラブセリフ書体版とでも言うべき書体。イタリックの傾きが強い。ステンシル版もある。
- Beastly(9)……xハイトの高い極太のスラブセリフ書体。9つのオプティカルサイズがある。
今回の記事では、Adobe Fontsで使える膨大な欧文フォントのなかから、セリフ、サンセリフ、スラブセリフのオススメ書体を紹介しました。
次回の「文字とフォントのことはじめ」では、手書き書体、筆記体、等幅フォントについてチェックしていきましょう。
文字の表現力を広げるフォントが揃うAdobe Fonts
アドビでは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつであるフォントをより自由に、柔軟に使えるクラウドフォントサービス「Adobe Fonts」を展開しています。2023年12月現在、その数は日本語フォント650超、Adobe Fonts全体では25,000以上。膨大なフォントをメディアを問わず、商用/非商用問わず、自由に使うことができます。
書体名がわからなくても書体の分類や文字の特徴、表現したいイメージから探すこともでき、目的のフォントにすばやく辿り着けるようになっています。
“もっといろいろなフォントを見てみたい、使ってみたい!”
そう思えたらまずは一度、Adobe Fontsを開いてみましょう。
そこには高品質でユニークなデザインの書体が待っているはずです。
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