全学導入を前にAdobe Expressの生成AI機能を体験!〜北翔大学・北翔大学短期大学部
北翔大学は、生涯スポーツ学部と教育文化学部、短期大学部を擁する北海道の私立大学です。同大では、2024年度より全学共通でAdobe Expressの導入を予定しています。その先駆けとして、Adobe Expressの使い方と生成AI機能を体験できるセミナーが11月20日(月)、学生、教員を対象に開催されました。セミナーの様子と北翔大学教育文化学部芸術学科 教授 松澤衛先生にお聞きした導入予定の背景についてレポートします。
Adobe Expressの生成AI機能をフル活用して自己紹介を作成
セミナーに参加した学生、教員の多くはAdobe Expressを使うこと自体が初めてです。本セミナーの講師を務めたAdobe Education LeaderおよびAdobe Community Evangelistで学校法人 阿佐ヶ谷学園の境祐司先生は、利用の手順をステップバイステップで説明しながら、Adobe Expressがプロ向けツールとは異なり一般向けのデザインツールであることや、アイデアを素早く形にするのに便利なことなどを紹介し、実習に入りました。
真剣に実習に取り組む参加者
実習では、「2024年に達成したいこと」をテーマに自己紹介のスライドを作ります。Adobe Expressには、アドビの生成AI「Adobe Firefly」が機能として組み込まれているので、自分自身と背景になる画像は生成AIで作ります。生成した画像を配置して、文字を加えれば、自己紹介スライドの完成です。
自己紹介の制作例を示す講師の境祐司先生
画像の生成は、作りたい画像の指示をテキストで打つだけなので、操作方法はとても簡単です。ただし、意図した画像を作り出すには、プロンプトとよばれる指示内容が重要なので、境先生は例となるプロンプトを提示してコツを伝えました。
デモンストレーションで生成した背景画像のプロンプトは「大量のライム、パターン、商品写真、水、しずく」、人物画像のプロンプトは「日本人の学生のシンプルな男性キャラクター、フラットな背景」
およそ30分の作業時間で参加者は次々に自分の作品を仕上げ、最後に数名の学生が自分の作品を紹介しました。それぞれ実現したいことはさまざまで、個性があふれます。発表者からは、「初心者の私でもここまでできました」、「何回も試行錯誤して作りました。ものすごく使いやすかったです」などの声が上がりました。
作品についてコメントする学生と講師の境先生
制作中などに共有された参加者の作品の一部。いずれも生成AIで作った背景と自分を重ねて配置している(名前のみ加工)
Adobe Expressは初心者にとても使いやすい!
終了後に参加者に感想を聞いてみると、「AIがどんなものなのか気になっていて知りたいと思って参加しました。なんでも出てきてしまってとても驚きました。自分の思ったことが出てくるので使いやすかったです」という声もあれば、「作るための言葉のセンス、選び方が難しかったと感じています」という声も。学生と一緒に受講していた教員は、「学生の作品の出来や発想がすごいなと思いました。私は何か作らせようと思ってもなかなか言葉が出てこなくて、頭の固さを感じました」と話します。生成AIは、プロンプトをどう書くかが画像の出来栄えの鍵を握るということが、みなさんの感想にも表れています。
Adobe Expressについてはどう感じたのでしょうか。普段からPhotoshopなどのアドビ製品を使用している芸術学科の学生は、「自分の作品づくりにはPhotoshopを使いたいですが、Adobe Expressはポスターなどを簡単にすぐに作りたいという時に使えるのではないかと思います。生成AIで作った背景画像などは自分の作品にも使えるかもしれません」と話してくれました。一方、普段画像制作をすることはないという他の学部の学生や先生からは、「直感的で、慣れてない人でも操作ができるところがいいですね」、「Photoshopなどは最初の使い方に慣れなくて大変でしたが、それよりはずっと使いやすかったと思います」といった声がありました。デザインの初心者の皆さんにとっては、Adobe Expressの圧倒的な使いやすさがプラスとなっていることがわかります。
誰もがグラフィック制作できる時代に
同大教育文化学部芸術学科 教授 松澤衛先生は、2024年度からAdobe Expressを全学で導入予定の背景を、「芸術系ではない他の学科でも、グラフィック系のスキルが必要な時代になってきたので、それに気づいてもらいたいと考えています」と説明します。
とはいえ、絵を描いたりデザインをしたりすることに苦手意識を持ったり、自分とは別世界のことと思っている人もたくさんいます。Adobe Expressであれば、デザインのテンプレートが豊富で生成AIの機能もあるため、最初の一歩のハードルが下がることが期待できます。
「Adobe Expressは機能をよく絞り込んでいて、操作性を考えて作られていると感じました。PhotoshopやIllustratorはデザイン以外の学生と教員にはどうしてもハードルが高いので、Adobe Expressならば、他の学部でもグラフィック系のことができるようになるのではないかと思います」と松澤先生。また、画像生成AIは「絵が描けるよりも、国語の知識がある方が逆に面白い絵が描けることもある」と指摘し、生成AIの登場で大きく裾野が広がっていることを示しました。
難しいと思って手を出さなくなってしまうのではなく、まずはAdobe Expressを使用して、グラフィック制作の入り口に立って欲しいと松澤先生は期待します。「ある程度できるようになったら、次のステップとしてPhotoshopやIllustratorを使って欲しいとは思いますが、Adobe Expressの導入がその下地になるのではないかと思っています」。
同大では2024年度すべての学生を対象とする必修の科目「情報機器操作」の中で、画像制作系のソフトを学ぶ時間を設ける予定です。学科を問わずすべての学生がAdobe Expressと出会うことで、まずはグラフィック制作のスタートラインに立ち、それぞれのクリエイティブスキルを育み発揮するきっかけを持つことができそうです。
(文:狩野さやか)