株式会社アドバン|Adobe Fireflyの生成AIをフル活用。画像素材の選定・加工にかかる時間を削減し、デザインのクオリティを大幅にアップ

デスクトップコンピューターのモニター 中程度の精度で自動的に生成された説明

教育事業とクリエイティブ事業の2本柱で事業を展開する株式会社アドバンは、アドビの生成AI技術であるAdobe Fireflyをいち早く実務に取り入れて、かねてからの課題であった画像素材の準備にかかる時間と労力を大幅に削減。デザインにおける妥協を払拭し、クオリティの向上を実現しています。同社のクリエイティブ事業部で制作に携わる3名の方々に、Fireflyを活用するメリットと効果について、実例を交えながらお話を伺いました。

もくじ

  • 「教育」と「クリエイティブ」のニーズに応える
  • 画像素材の選定と加工が、制作業務のボトルネックに
  • 制作チームの課題解決にAdobe Fireflyが貢献
  • 実際の制作現場でのAdobe Firefly活用例
  • Adobe Fireflyの進化とともに、デザインの新たな可能性を探る
  • 画像素材の用意にかかっていた時間とコストを半分以下に削減
  • Adobe FireFlyの利用範囲を教育事業とグループ会社に拡⼤予定

「教育」と「クリエイティブ」のニーズに応える

株式会社アドバンは福岡県福岡市に本社を置き、九州・中国地方を中心とした地域密着型のパソコンスクールを運営する教育事業部と、webサイトやDTPの制作を行うクリエイティブ事業部の、主に2本の柱で事業を展開しています。さらに、コンサルティング業務として新入社員やエンジニア向けの企業研修を実施するなど、「教育」と「クリエイティブ」に関するさまざまなニーズに応える幅広いサービスを提供しています。

同社は、アドビと「プラチナスクールパートナー」契約を結んでおり、制作業務のほかに自社運営のeコマースサイトでアドビの製品および教材・トレーニングサービスの提供も行っています。そのためアドビ製品には深く精通しており、web、DTP、動画などの制作においてはCreative Cloudをフルに活用しています。

株式会社アドバン クリエイティブ事業部 Web制作グループ

左から、マネージャー/ディレクターの井上里美さん、デザイナーの宮下秋蔵さん、マーケティング/デザイナーの三角まどかさん

画像素材の選定と加工が、制作業務のボトルネックに

同社のweb制作実績は多岐にわたり、自社サービスのサイトや広告のほか、企業規模や業種を問わず、全国の多種多様なサイトの制作に携わっています。そうした業務の中で特に時間と手間のかかる作業が「画像素材の選定と加工」だと、Web制作グループ のマネージャー、ディレクター、そしてデザイナーでもある井上里美さんはいいます。

「画像素材の選定にはオンラインのストック素材サービスをよく利用していました。膨大な数のストック素材からサイトのイメージに合う一貫性のある素材を複数探すのですが、なかなかイメージどおりの画像が見つからず、いくつものサービスを行ったり来たりして半日とられることもありました。イメージに近いものが見つかっても『横幅が足りない』なんてこともよくあって、無理やりトリミングしたり背景を伸ばしたりして、そこにもかなりの時間と手間がかかり、デザイン面でも不十分な状態で出さなければなりませんでした」

また、クライアントから支給される画像が画角的にも使いづらいことがあり、レイアウトが自由に組めずに、デザインに対して妥協しなければならないことがしばしばあったことも課題の1つにあげています。

制作チームの課題解決にAdobe Fireflyが貢献

そうした制作チームの課題解決に貢献したのが、アドビの生成AI技術である Adobe Fireflyでした。Fireflyは、シンプルなテキストを入力するだけで新しい画像を自動で生成することができます。このテクノロジーはPhotoshopやIllustratorにも搭載され、既存の画像に新たなオブジェクトを追加したり、置き換えたり、背景をシームレスに拡張したりすることが可能です。

Adobe Fireflyを始めて目の当たりにしたときの感想を、Web制作グループでマーケティング、広告運用、webデザインを担当する三角まどかさんは次のように話します。

「まず生成物のクオリティの高さに驚きました。本当に写真と遜色ないようなものができたりして、実際にwebサイトに組み込んでも全く違和感のないものがいくつもできて、リリースされてから真っ先に実務で使い始めました。操作がすごく簡単で、PhotoshopやIllustratorなど普段使っているアプリの中で使えるというところがすごく気に入ってます」

また三角さんは、Fireflyを実務に採用した理由として、商用利用での安全性と利便性をあげています。

「ストック素材サービスの画像を使用する際も、著作権については常に気を使っていました。生成AIの画像はさらに注意を払わなければならいという懸念はあったのですが、Fireflyは商用利用でも安全に使用できる設計になっているということが確認でき、安心して使っています。それと、他のサービスの場合、『これは生成AIで作成したものであることを明記してください』という規約があるものもあり、やはりデザインとしてそのような注釈を入れるのはどうしても避けたいので、 Fireflyの画像のように生成AI情報がメタデータとして格納されて見た目からはわからない点もありがたいですね」

実際の制作現場でのAdobe Firefly活用例

では実際にFireflyがどのような場面で活用されているのか、制作チーム3名の方々に実例を交えて紹介していただきました。まず1つ目は、福島での就農を支援する『ふくのう』というサイトの制作事例。サイトのヘッダーで使用する画像にお城の写真を選定し、少しアップになるようトリミングしたところ横幅が足りず、Photoshopの『生成拡張』で画像の不足部分を生成しました。全く違和感のない仕上がりになり、キービジュアルとして使用することができました。

Photoshopの「生成拡張」で元画像の横幅をwebサイトのヘッダーのサイズに合わせて拡張

次の例も同様にPhotoshopの『生成拡張』。写真を任意の形でトリミングしようとすると、被写体の人物がアップになりすぎてシチュエーションがわかりづらくなるため、元の写真の右側と下側を拡張することで自由なトリミングが可能になりました。

画像を自由な形でトリミングするために、Photoshopの「生成拡張」で元画像を拡張

次はIllustratorの『生成再配色』を使った例。ベクター素材の中でも特にグラデーションデザインは、配⾊を考えたりIllustrator上で⾊を設定するのに時間がかかります。この機能を使えば、プロンプトだけでいくつものバリエーションが生成されるので、短時間でさまざまな配⾊を試すことができました。

Illustratorの「生成再配色」で、グラデーションデザインのバリエーションをすばやく作成

Adobe Fireflyの進化とともに、デザインの新たな可能性を探る

Adobe Fireflyは、次々と新しい機能がリリースされ、生成の精度やクオリティも日を追って向上しています。「Fireflyは使うたびに新たな発見がある」と、主にDTPデザインを手掛けているデザイナーの宮下秋蔵さんは話します。

「この例は、Fireflyに追加される機能について、趣向という形で作成したバナー広告になります。Photoshopの『生成塗りつぶし』を使って女性の手にのったクッキーを削除すると、クッキーの重みがなくなったことで親指の角度も自動的に補正されています」

Photoshopの「生成塗りつぶし」で手にのったクッキーを削除するとともに、指の角度を自動で補正

「次に背景を選択してピンクと紫のグラデーションで塗りつぶします。すると、元々あったバスローブの細かい毛玉が取れてきれいに補正されています。これは新たな発見でした」

店長研修紹介動画は、座学、実技、OJT、Photoshopの「生成塗りつぶし」で、衣類の細かい毛玉を消しながら背景をグラデーションに変更

「あとは背景を拡張したり、ミルクなどのオブジェクトを追加したり、本当にプロンプトだけでここまでのビジュアルに仕上げることができました」

完成した広告ビジュアル

Adobe Fireflyは、PhotoshopやIllustratorに組み込まれた機能のほかに、webブラウザー上で操作するスタンドアローン型のサービスがあります。その機能の1つ「テキストから画像生成」は、テキストを入力するだけで全くゼロから画像を生成することができます。この機能には「スタイルの一致」というオプションがあり、新しく生成された画像に、別の画像のスタイルを適用することができます。

「いろいろなところから画像素材を集めてくると、ページ全体の雰囲気がバラバラになってしまいがちです。『スタイルの一致』を使用すれば、1つ画像を決めて、そのスタイルと一致した画像を生成することができるので、サイト全体の雰囲気を統一させるのにすごく便利です」(三角さん)

「テキストから画像生成」の「スタイルの一致」を使って、アップロードした参照画像と同じ雰囲気の画像を生成

画像素材の用意にかかっていた時間とコストを半分以下に削減

2023年9月の正式リリース直後からFireflyを活用している同社では、およそ半年間でその成果が確実に表れているといいます。

「ストック素材の購入などにかかるコストは、およそ50%削減できているかと思います。また、素材の選定と加工に費やす時間は確実に半分以下に短縮できています。その時間をアイデアやデザインのほうに費やせるようになりました。それと何より、デザインの自由度が高まり、妥協をすることがほとんどなくなったことが大きいですね」

Adobe Fireflyの利用範囲を教育事業とグループ会社に拡大予定

同社のなかで先行してAdobe Fireflyを導入し、利用実績を作り続けているクリエイティブ事業部。その事例をもとに、教育事業部ではアドビ製品関連の講座内容を更新する準備が進められています。また、同社の親会社であるワールドホールディングスのグループ会社へFireflyの利⽤を展開していく予定だといいます。

教育とクリエイティブを通して、常に時代のニーズを捉えたサービスを提供し続けている株式会社アドバン。いま、社会でも多くの注目を集めている生成AI技術を今後どのように事業に活かしていくのか、その動向が期待されます。