エン・ジャパン株式会社|動画内製をゼロからスタート。Premiere Proを使用した映像制作により、ブランド価値向上に大きく貢献
インターネットを活用した求人・求職情報サービスのリーディングカンパニーであるエン・ジャパン株式会社は、社内の業務およびコミュニケーションの改善を図るため、動画内製をスタート。動画のスキルもノウハウもゼロの状況から、3年間で10倍の制作本数をこなすまでに至った経緯を、同社の映像制作チーム3名のスタッフに話をうかがいました。
もくじ
- クリエイティブの力で、エンのブランドを育てる
- 動画のスキルもノウハウもない、ゼロからのスタート
- 動画編集ツールに Adobe Premiere Proを採用
- 内製スタートから3年で制作依頼が10倍に
- 社内に浸透する動画活用の価値
- インタビュー動画の編集に欠かせない「文字起こしベースの編集』
- 営業職から映像ディレクターに転身
- 動画制作の効率をさらに加速させるFrame.ioとAdobe Stock
- 内製だからこそ成し得るブランド価値向上
クリエイティブの力で、エンのブランドを育てる
エン・ジャパン株式会社は、「エン転職」「エンゲージ」「AMBI」など日本最大級の求人・求職プラットフォーム、HR-Techプロダクトを複数展開しています。
同社の広報・宣伝機能を担うブランド企画室の中には、ブランドコミュニケーションに関わるクリエイティブ制作を専任で手掛けるインハウスクリエイティブ部門が設置されています。
「クリエイティブの力で、エン・ジャパンのブランド価値向上に寄与する」をミッションに、十数名のインハウスクリエイターが広告・SNS用動画、ロゴ、バナー、パンフレット、ノベルティなどの制作を行っています。同社がクリエイティブを会社の重要な柱として捉えるようになった背景について、ブランド企画室 クリエイティブグループ 映像制作チームのチームリーダーである西春 博矢さんは次のように話します。
「主力サービスのひとつである「エン転職」では、業界では珍しく求人広告のコピーライターを新卒・正社員で採用し、育成を続けてきました。広告のクオリティに徹底的にこだわり抜き、求人広告の品質を競う求人広告賞や、外部機関の調査でも複数回満足度No.1の評価をいただいています。それもあって、クリエイティブの力というものを会社全体が信じていて、それがブランド価値を向上させ、エンのファンを増やしていくための変幻自在の武器だと捉えています」
ブランド企画室 クリエイティブグループ 映像制作チーム チームリーダー 西春 博矢さん
動画のスキルもノウハウもない、ゼロからのスタート
それまでコピーライティングやデザインをメインにクリエイティブ業務を行ってきた同部門が、動画の制作に取り組むようになったのは、コロナ禍の影響がきっかけだったといいます。
「2020年の4月頃、緊急事態宣言が出て全社員がリモートワークになったということもあって、社内でのコミュニケーションがなかなか取りづらい状況になっていました。 エンは若手の社員がすごく多く、特に新入社員は会社の雰囲気や社員の人柄を感じる前にリモートになってしまったので、もったいないという気持ちと、離職懸念もあり得るという心配もあって、ブランド企画室で何かできることはないかと考えました。 そこで思いついたのが、動画による社内報でした。活躍社員のノウハウの共有や、組織の新しい取り組みを、本人たちの生の声で伝えるような動画を配信できればいいなと、まずはトライアル的にやってみようとなったのがきっかけです」
しかし、いざ始めるとなった時、社内には動画制作の経験や知識をもった人が誰もいなく、カメラなどの機材も全くない、まさにゼロからのスタートだったといいます。
「撮影から編集、公開まで、最初は僕一人でやっていました。その前の年まで広報の仕事をしていて、動画制作のスキルもノウハウも全くなくて、不安と課題しかありませんでしたね。それでもエンのリアルな雰囲気を伝えるには、それを知っている社員が作るからこそダイレクトに伝えられるという思いがあり、最初から外注は考えず、あくまで内製でやることにこだわりました。それがエンのスタイルでもありますからね」
動画編集ツールに Adobe Premiere Proを採用
そうして始まった動画制作、西春さんはスマートフォン1つでインタビューなどの動画を撮影し、編集にはAdobe Premiere Proを使用しました。Premiere Proを選択した理由については、次のように話します。
「社内のデザイナーがPhotoshopやIllustratorなどのアプリを使っており、会社でCreative Cloudのライセンスを導入していたこともあって、それなら同じアドビ製品のPremiere Proを使おうと決めました。それと、編集ノウハウやTipsがすぐに手に入る、というのも選択の理由です。Premiere Proは使っている人がすごく多いので、わからないことをネットで検索すると誰かしらが同じ壁に当たっていて、その解決方法を教えてくれたりするので、すごく助かりましたね」
内製スタートから3年で制作依頼が10倍に
ゼロからスタートした動画制作は、徐々に活動範囲も広がり、スキルアップとキャパシティ増加が進められてきました。3年以上が経過した現在(2024年3月)、制作スタッフは西春さんを含め3名となり、社内から依頼される動画の年間本数は初年度の8本から10倍の86本にまで増加しています。制作するコンテンツも当初からの動画社内報に加え、選考希望者向けのリクルーティング動画、社内向けキックオフイベント動画、外部賞エントリー用PR動画、新入社員・中途入社者向け研修動画、SNS用広告動画の試作など多岐にわたります。
また、一眼レフカメラ複数台のほか、ピンマイク、照明、ジンバルなどの各種機材が用意されたことからも、動画に対する会社の期待値が高まっていることがうかがわれます。
Photoshopの「生成拡張」で元画像の映像制作チームが編集・配信するYouTubeチャンネル「Welcome! エン・ジャパン」。エン・ジャパンで働く「人」や「カルチャー」をリアルに伝える番組が多数公開されていますをwebサイトのヘッダーのサイズに合わせて拡張
社内に浸透する動画活用の価値
では実際に、動画活用が同社にどのような成果をもたらしているのか。西春さんは次のように話します。
「動画の活用がすごく身近になったということが、この3年間の一番の成果だと思っています。動画の活⽤⾃体がそもそもゼロだったところから、この3年くらいでいろいろな部署が活用を始めるようになりました。しかも、こんな動画を作ってほしいという要求に、社内の人間同士なのでコミュニケーションが取りやすく、こちらからも提案できるのでより良いものが作れる。それも内製ならではの成果といえるのではないでしょうか」
また同社では、月に数十回、一人の講師でまわしていた社内研修を動画化。講師の負担が軽減されるとともに、受講者が繰り返し何度も分かるまで⾃分で学習できるようになり、理解度の向上につながっています。また、新卒などの採用希望者が社外公開している動画を見て、会社説明会や採用ページでは見られないエンの意外な一面を知り、魅力を感じて応募してくる学生も増えているといいます。
インタビュー動画の編集に欠かせない「文字起こしベースの編集』
次々と依頼が飛び込んでくる動画案件に、映像制作チームの3名のスタッフが矢継ぎ早に対応しています。その中の一人、古小路和実さんは、大学の映像科で4年間学び、2023年に映像ディレクターとして新卒入社しました。Premiere Proは大学1年生の時から触ってきたということもあり、入社1年目から即戦力として数多くの編集作業をこなしています。
古小路さんは、Premiere Proの中でも特に気に入っている機能が「文字起こしベースの編集」だといいます。
「インタビューなど受け答えのある動画の編集が多いので、質問の部分をカットしたり、答えの部分を並べ替えたりという作業が一番大変でした。以前は逐一再生してその箇所を見つけなければならなかったのですが、この機能が搭載されてからは文字起こしのテキストからすばやく見つけ出し、そのまま削除したり並べ替えたりできるので、こんなに楽していいのと思うくらい、作業効率は格段に上がっています」
映像制作チーム 映像ディレクター 古⼩路和実(こしょうじなごみ)さん
営業職から映像ディレクターに転身
もう一人の映像ディレクターである小水流佳菜さんは、新卒入社から4年間、営業職を経験した後、2023年4月に社内公募制度を使って同部門に異動しました。動画制作の経験はこれまでほとんどなく、他の2人に聞いたり、ネットの動画でPremiere Proの使い方を練習したりしながら、実務の中でスキルを身につけてきました。
Premiere Proを本格的に使いはじめて1年ほどの小水流さんですが、触らない日はほとんどないといっていいほど、日々の実務の中で使いこなしています。
「私も文字起こし機能にはすごくお世話になっていますが、そのほかでいうと、エッセンシャルサウンドパネルは毎回触っています。インタビューの収録はどうしても後ろに雑音が入るので、そういったノイズ処理も簡単にできますし、人によって声の大きさが違う時などは、音量の自動一致機能がすごく役立っています。それと、BGMを入れる時に、映像の尺に合わせて音楽を自動で縮めてくれる機能も、私にとっては無くてはならない機能の1つです」
映像制作チーム 映像ディレクター ⼩⽔流佳菜(こずるかな)さん
動画制作の効率をさらに加速させるFrame.ioとAdobe Stock
同社は現在、週の半分をオフィスワークに、後の半分をリモートワークにあてています。そうした中、関係者間のレビューのやりとりもオンラインで行われることが多く、以前はデータの受け渡しやフィードバックのとりまとめにかなりの時間と手間を要していたと、西春さんはいいます。
「以前は、全部書き出して関係者にレビューしてもらっていました。書き出しや共有にも手間がかかりますし、PCの負担も大きかったと思います。コメントする側は、動画からスクショを撮り、該当箇所を丸で囲んで、タイムコードと一緒に修正指示のコメントを書き込むわけです。それらを編集中の動画と照らし合わせながら修正していくのですが、本当に気の遠くなるような作業でした」
この課題を解決するため、かねてから検討していたFrame.ioを、2023年4月に映像制作チームができたタイミングで使いはじめました。
「レビューの依頼も、フィードバックのとりまとめも、Premiere Proを離れることなく行えるようになったのは大きいですね。コメントする側も、スクショを撮ったり、タイムコードを打ったりすることなく、Frame.ioの画面上で簡単に行えます。今までやっていた作業を考えると、半分どころから1/3くらいまで時間短縮できていると思います」
また、Premiere Proと連携するサービスとしてAdobe Stockを活用。動画制作の効率とクオリティの向上に役立てています。
「インタビュー動画のインサートで使う素材によく使用しますね。動画のタイトルや場面転換などに、モーショングラフィックステンプレートを使うこともしばしばあります。あと、求人シェア用の動画サムネイルを作る際に、その会社やサービスのイメージに合うような画像を探してくるのですが、最近では動画素材を使ってサムネイルを作ったりもしていて、静止画よりもクリック数が上がったという話も聞かれます。本当に色々な場面でAdobe Stockを利用してきましたが、これがなかったら今の本数はこなせなかったでしょうね」
画像や動画、モーショングラフィックステンプレートなどAdobe Stockの豊富な素材を活用することで、コンテンツのクオリティと制作効率の大幅な向上を実現しています。
内製だからこそ成し得るブランド価値向上
「エン・ジャパンがゼロからチャレンジした動画内製。それは、動画活用の価値を会社全体に浸透させ、社内における業務やコミュニケーションに大きな成果をもたらしました。エンだからできたこと。内製だからできたこと。最後に西春さんは次のように締めくくりました。
「動画を含め、クリエイティブは会社の勢いを後押しする力をもっていて、内製でやるということ⾃体にすごく価値があると思います。今回の動画内製の例でいえば、動画活用によって社員同⼠の交流が深まったり、誰かの仕事の助けになったり、会社全体の業務の改善につながったりもします。それは、社内のことをよく分かっている、社員を思いやるメンバーが作るからこそ、できることだと思います。特にエンの場合、会社愛の強い人がたくさんいるので、思った以上の成果を生み出せたのかもしれません。今後も、僕らが何か作って満⾜するだけでなく、ちゃんと会社のため、社員のため、その先にいるユーザーやカンパニーの方たちのためになっているか、そこをぶれずに考えていきたいですね