常総市のPDF活用事例~ネットでの情報発信から日常業務、災害対策まで

日本国内には1,700以上の市区町村があり、それぞれの自治体のWebサイトには、さまざまなPDFが掲載されています。これまで何気なく見ていましたが、誰がどのように作成しているのでしょうか?また、実際にはどのように活用されているのでしょうか?私、桑名が地方自治体に直接取材を行いました。

ご協力いただいたのは、茨城県南西部に位置する常総市です。2006年に水海道市と石下町が合併して常総市が誕生しました。現在の人口は約6万人。東京都心から1時間弱でアクセスできる場所にあり、歴史的な建物と豊かな自然に恵まれ、多くの映画やドラマのロケ地としても利用される魅力的な街です。

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▲常総市役所 本庁舎

今回、取材に応じていただいたのは、常総市役所 市長公室 秘書課の猪瀬さん、小田倉さん、中島さんです。PDFの作成や活用についてお話を伺うことができました。

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▲右から猪瀬さん、小田倉さん、中島さん

──自治体のWebサイトには、さまざまなPDFが掲載されていますね。特にPDF形式の申請書が豊富ですが、掲載している理由や目的について教えてください。

小田倉さん:住民票の交付申請書や住民異動届など、一通りの申請書をPDFにしてWebサイトに掲載しています。今はインターネットが使える人が多いですから、市役所で記入する時間と手間を省いてもらうのが目的です。PDFならWindowsとMac、どちらのパソコンでも正確に表示できますし、スマホでもレイアウトがくずれないので安心です。

──どのように申請書PDFを作成しているのでしょうか?

小田倉さん:ほとんどの文書はWordやExcel で作成してからPDFに変換しています。

──常総市の印鑑登録申請書のPDFですが、すっきりとしたレイアウトで、見やすく作られています。これをWordで作成するのは大変だと思うのですが、専門の人が作成しているのでしょうか?

小田倉さん:PDF専門の者がいるわけではなく各部署で作成しております。たとえば「法人の設立等に関する申告書」は「課税課」、「介護認定申請書」は「介護保険課」というように、各課で作成しています。

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▲常総市の印鑑登録申請書PDF

──どの申請書PDFも良くできていますよね。自治体によっては、紙の申請書をスキャンしてPDFにし、Webサイトに掲載しているところもあります。

中島さん:そのようなケースもあるのですね。ほとんどの自治体では、条例に基づいて作成されたデータがあるはずです。データがあるものは、それをPDFにするだけなので簡単にできます。各自治体によって条例が異なるため、当然、様式も異なりますね。

──「適当に」と言うと失礼ですが、任された人が自由に作成していると思っていました。自治体の条例に基づいて作られていたのですね。自治体ごとに住民票申請書が異なるのはそういうことでしたか。

中島さん:そうです。常総市と隣のつくば市では地域のニーズや政策が異なり、それらに基づいた条例があるため、申請書の様式が異なるわけです。申請者は、申請書に記載してある地域固有の要件を確認した上で、提出することになります。

──PDFだけでなく、WordやExcelも掲載されていますが、何か意味があるのでしょうか?

中島さん:やはり手書きではなく、文字を入力したいという方もいらっしゃるので、WordやExcelを使っている方に向けて載せています。一方で、マイクロソフト製品をパソコンに入れていない方もいますから、どなたにも使えて、どの端末でも使えるPDFは不可欠ですね。

猪瀬さん:市民の中には、パソコンでPDFに入力したり、フォーム形式にしたりして使える方もいらっしゃいます。それができない方はWordやExcelで入力すればよいので、多方面から使えるようにと掲載しているんです。

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▲PDF形式とWord形式の両方が用意されている

──はじめからフォーム形式の申請書PDFであれば、入力ボックスをクリックして文字を入力できるので便利だと思います。使用している自治体は少ないですが……

小田倉さん:PDFを利用する主な目的は「レイアウトが崩れないようにすること」なので、そのままPDFにしていました。テキスト入力では、文字の位置を揃えるのが難しいときがあるのでフォームも活用した方がよいですね。

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▲Acrobat Proで「フォームを準備」からフォーム形式のPDFが作れる

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▲フォーム形式なら、入力箇所(色で塗りつぶされた部分)をクリックして入力できる

──広報紙もPDFで掲載されていますが、1冊まるごとのPDFとページで分けたPDFのリンクが掲載されているのですね。個別のリンクがあると、リンクの上を右クリックして「名前を付けてリンクを保存」でダウンロードできるので便利ですね。

中島さん:かつては広報紙やお知らせを紙媒体のみで配布していましたが、若い世代の中には電子版で十分だと考える方もいらっしゃいます。スマホやタブレットを使って、容易にアクセスしてもらえるようにPDFで掲載しています。

猪瀬さん:当市はお祭りも多く、都心からのアクセスも良好なため、市内外の方に向けたイベント関連のお知らせも多く掲載しています。様々な方のニーズがあるので、特定の記事や情報だけを見たい方や、ダウンロードして読みたい方のために個別のリンクも用意しています。

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▲広報紙は、ページごとのリンクが用意されている。リンクの上を右クリックして「名前を付けてリンクを保存」で保存可能

中島さん:市では様々なメディアを駆使した情報発信を行い、市内外に受けてターゲット層に合わせた広報を行っております。そういった情報を PDFで配布する中で、時にファイルサイズが大きくなるものがあります。そのままWebサイトに掲載するとサーバーの容量を使いますし、市民がダウンロードする際にも負担がかかるので、Acrobat Proの圧縮機能を使ってサイズを縮小する場合もあります。

──PDFを開いたときに、目的のページにジャンプできるように、Acrobat Proでしおりを追加するのもよさそうです。ページを表示させ、画面右端のしおりのアイコンをクリックし、「新規しおりを追加」ボタンをクリックして名前を付けるだけで作成できます。

小田倉さん:しおりは付けていなかったです。確かに目次のように使えるのであった方が読みやすいですね。

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▲ページを表示させ、右端の「しおり」のアイコンをクリックして「新規しおりを追加」ボタンでしおりを追加できる

小田倉さん:PDFのページを分割や結合する際にAcrobat Proを使うものだと思っていましたが、他にも実務に活用できる機能がありますね。

──常総市のWebサイトには、ハザードマップのPDFがたくさん掲載されていますね。他の自治体よりも詳細なデータが含まれているのが気になったのですが……

猪瀬さん:常総市は平成27年9月の関東・東北豪雨によって大きな被害を受けまして、鬼怒川の無堤防箇所からの溢水や堤防の決壊によって、広範囲にわたり水没しました。東日本大震災もあったので、日ごろから防災対策はおこなっていましたが、水害に関してはさらに強化し、河川ごとの洪水ハザードマップや国土交通省の画像を引用した「浸水継続時間と浸水シミュレーション」をPDF化してWebサイトに掲載しています。

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▲洪水ハザードマップの他、浸水継続時間と浸水シミュレーションもPDFで掲載している

中島さん:市の中央には鬼怒川、東側には小貝川が流れているので、洪水対策は欠かせません。当市はブラジルや中南米から働きに来られている外国籍の居住者の方も多くいらっしゃいますが、命に関わることですから、そういった方向けにポルトガル語での洪水ハザードマップもPDFで掲載しています。土砂災害のハザードマップについては、地形がひと目でわかるように写真を使用し、Adobe Photoshopで編集してPDFに変換しています。

マップ 自動的に生成された説明
▲土砂災害ハザードマップ。Photoshopを使用して編集

──洪水被害の後、業務のやり方や意識で変わったことはありますか?

小田倉さん:洪水によって紙文書が水損したことで、デジタル化への意識が一層強まりました。市のWebサイトに掲載している文書以外にも、PDFで管理している文書が多くあります。一方で、まだ紙の文書も必要なため、紙とPDFの両方を使用し、災害時のリスクを軽減するようにしています。

──紙文書を手早くPDFにしたいときは、スキャナーはもちろんのこと、スマホのAdobe Scanアプリもおすすめです。スキャンする際に自動で切り抜き部分を感知して、鮮明な状態でPDFにできますし、Acrobatと連携しているため、スキャン後すぐに閲覧と編集が可能です。

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▲スマホにAdobe Scanアプリをインストールすれば、紙文書のPDF化が簡単にできる

グラフィカル ユーザー インターフェイス 低い精度で自動的に生成された説明
▲自動で切り抜き部分を感知してくれる。周囲にある〇や□をドラッグして変更も可能。

小田倉さん:ますます便利になりますね。日常的にPDFを活用していますが、その利便性を特に実感できるのは災害が発生したときです。災害は予測不可能であり、紙文書の損失リスクを考慮すると、PDFでのデジタル化は欠かせません。大規模な洪水被害を経験したからこそ、その重要性を強く感じています。

さらにデジタル化を進めることで、業務効率化と市民サービスの向上に結び付く可能性を感じたので、これからも模索していきたいと思います。

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猪瀬さん、小田倉さん、中島さん、お忙しい中、ありがとうございました。

今回は、自治体のPDFの活用事例として常総市を取材しました。自治体の規模に関わらず、紙文書をPDFにしてWeb上に公開することは、市民にとって非常に役に立ちます。また、デジタル化することが作業効率の向上や災害への備えにつながります。Acrobat Proを活用すれば、デジタル化がより簡単になり、使いやすいPDFを作成できるので、ぜひお試しください。

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