12年目のAdobe Education Forum 2024 -Creative Campus Summit-を開催

2024年6月20日、アドビの教育イベント「Adobe Education Forum 2024 -Creative Campus Summit-」を開催しました。今回のテーマは「生成AI時代に求められる創造的で革新的な大学教育とは」。 今年度、学校法人立命館が日本で初めてのCreative Campusに加盟したことを記念して、立命館大学 大阪茨木キャンパス(OIC)に全国から大学教職員が集まり創造的な学びの可能性を体感し、また、AI時代における効果的な教育方法の議論が行われました。

学校法人立命館が日本で初めて加盟したAdobe Creative Campus

Adobe Creative Campusは、学生のデジタルクリエイティブリテラシーの育成に力を入れている、世界各国の先進的な大学が参加するグローバルコミュニティです。

最初のご講演は、日本で初めて加盟したことの意義や取り組みについて、立命館大学 社会共創推進本部 本部長 OIC 総合研究機構 教授の三宅雅人先生(以下、三宅先生)にお話しいただきました。

建物の前に立っている男性たち 低い精度で自動的に生成された説明

立命館大学の三宅雅人先生がOICの新設備と取り組みについてご紹介

空港のターンテーブルの周りに集まっている人たち 低い精度で自動的に生成された説明

H棟1FにあるTERRACE GATE。350インチの大型LEDビジョンがあり開放的なつくり

三宅先生は、同学のAdobe Creative Campus加盟のメリットについて、全学生にAdobe Expressライセンスを提供し、授業、ものづくり、地域連携、グローバル人材育成など幅広いプログラム設計が可能になり、世界90校以上の大学との先進事例共有による学びの深化を実現していることに触れました。

ソーシャルインパクト創出を目指す次世代研究大学の最新設備と模擬授業を見学

続いてはH棟の見学ツアーです。

建物の前を歩く人々 中程度の精度で自動的に生成された説明

H棟1Fの中央部にある半屋外広場から見学をスタート

H棟の特長の一つは、ソロワーク、共創、研究など多様な活動に対応するフレキシブルな空間を実現していることです。学修スペース、共創活動を行う教室、研究室やホールなどは、外から見える開放的なつくりになっており、学生同士の交流や学び合いを促進し、創造性を発揮しやすい環境を生み出しています。

空港のロビーにいる人々 自動的に生成された説明

見学に続き、H棟2階のLearning Infinity Hallで、Adobe Expressとアドビの生成AIであるAdobe Fireflyを活用する模擬授業を実施しました。

空港のロビーにいる人たち 低い精度で自動的に生成された説明

リアルとバーチャルを融合させ、学びとコミュニティを拡張するLearning Infinity Hall

このLearning Infinity Hallは、6人掛けのブースにタッチパネルモニター、カメラ、マイクなどを設置し、38ブースの映像を自由に切り替え、リアルとオンラインの垣根を超えた学びを実現しています。伝統的な1対nの講義形式や学内の閉じていた世界から、アクティブラーニングや学修者同士の対話を重視する学びへの変化を意識したつくりになっています。

屋内, コンピュータ, 座る, テーブル が含まれている画像 自動的に生成された説明

今回の模擬授業では、アドビの冨田洋平が講師となり、「茨木市課題の解決を考える」をテーマにグループワークが行われました。70名以上の学生が自主的に参加し、各グループではリアルとオンラインで参加する学生が混ざり合い、学年も専攻も異なる初対面のグループでありながら、すぐに活発な議論を繰り広げました。

コンピューターで作業をしている人たち 中程度の精度で自動的に生成された説明

それぞれのグループで茨木市の課題を分析し解決策を模索。Adobe Expressをディスカッションのツールとして活用することで、オンラインの参加者も含めて一つの場所にグループ全員が書き込み、自然と作業分担しながら議論が進みます。

また、生成AIを活用してイメージを伝え合うことで、従来のテキストや言葉だけのコミュニケーションとは異なるビジュアルなコミュニケーションが活発に行われ、チームコラボレーションが実現されていました。

屋内, 男, 写真, 民衆 が含まれている画像 自動的に生成された説明

各グループが考えた課題解決策をもとに、生成AIによる画像で発表を行った

デジタルオーセンティック・アセスメント(DAA)の役割と重要性とは

次に英国アドビの教育部門、Principal Strategic Development Manager のMark Andrewsが、Times Higher Educationとアドビが共同で作成したレポート「高等教育のオーセンティックアセスメントにデジタルクリエイティブツールが果たす役割とは」に基づき、デジタルオーセンティック・アセスメントが学修者にもたらすメリットと、その実践においてテクノロジーが学修者と教員の双方に対して果たす役割について話題提供を行いました。

アドビのMark Andrewsがグローバルな視点でオーセンティック・アセスメントを紹介

コロナ禍がデジタルスキルを仕事で極めて重要なスキルに押し上げたように、生成AIの出現が評価の枠組みの変化を促すことになることを踏まえ、オーセンティック・アセスメントが今後直面しうる課題と、学修者と教員双方にとって最適な学修カリキュラムを構築する方法について、事例を交えて紹介しました。

北海道大学が描く「創る」と「教える」を融合した授業によるデジタルリテラシー育成

最後に、北海道大学 情報基盤センター メディア教育研究部門 教授の重田勝介先生より、Adobe Express全学導入によるデジタルリテラシー育成:「創ることで学ぶ」授業から、をテーマにご講演いただきました。

北海道大学 情報基盤センター メディア教育研究部門 教授の重田勝介先生による講演

情報社会における必須スキルであるデジタルリテラシーは、単に情報機器を使いこなせることだけではありません。膨大な情報の中から必要なものを選択し、適切に活用する能力、変化する技術に対応する柔軟性、そして創造的に表現する力などが求められます。

重田先生は、高等教育におけるデジタルリテラシー教育の重要性は「情報を選択し応用する能力の育成」「技術変化への対応」「職業能力の向上」の3つにまとめることができ、大学での学びや将来のキャリアにおいて不可欠であり、学術活動と企業活動を繋ぐ架け橋となると話しました。

コンピューターのスクリーンショット 中程度の精度で自動的に生成された説明

重田先生は、Adobe Expressを活用した「創ることで学ぶ」「教えることで学ぶ」授業である「大学生のためのデジタルリテラシー入門」を担当しており、このような「創る」と「教える」を融合した授業においては、学生の利用するツールが実社会で通用するものであること、そして課題は学生自身がウェルビーイングと存在意義を見出すものであることが重要であると述べました。

また、従来のPBL(問題解決型学修)は言語(literal)によるコミュニケーションが中心でしたが、生成AIの利用によって、画像を使った自己表現など、画像(visual)による視覚的なコミュニケーションも可能になったことを踏まえ、この変化は、言語発達段階の多様である学生同士の意志疎通や知識構築を支援し、より効果的な学びを実現する可能性を秘めていると強調しました。

今回のイベントを通じて、デジタルリテラシー教育におけるさまざまな可能性と課題が浮き彫りになりました。アドビはこれらの課題解決に向け、教職員と学生、そして産学官連携による取り組みをさらに推進していく予定です。そして、デジタル技術を駆使した創造的な学びをさらに推進し、高等教育におけるデジタルリテラシー教育の可能性を最大限に引き出していきます。

※記事中の所属・肩書は取材時点のものです。