Adobe Substance 3D を使って没入体験を提供する ZDF Digital の 取り組み

画像提供は ZDF Digital。

ドイツの公共テレビ放送局 ZDF は、ニュース番組から話題になったドラマまで、60 年にわたってドイツ国内の数多くの人々を楽しませ、情報を伝えてきました。今日、この放送局の最も革新的な番組やマルチメディア体験の多くは、ZDF グループのメディア制作子会社である ZDF Digital との共同制作です。ZDF Digital は、最新のテクノロジーを使った没入体験やインタラクティブなコンテンツの制作で有名です。

ZDF Digital のデジタル制作チームは、多くのプロジェクトに 3D ビジュアルを採用しています。映画のためのリアルな仮想空間の制作もあれば、VR や AR 体験の開発もあります。チームは Adobe Substance 3D を使用することで、制作スピードと、視聴者が ZDF に期待している高品質なビジュアルとのバランスを取っています。

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感情に訴えるバーチャルな世界の創造

ドキュメンタリーチャンネル ZDFzeit のために制作されたドキュメンタリー「Nach der Flut(洪水の後)」は、アール渓谷で起きた自然災害のその後の様子を記録したものです。このドキュメンタリーでは、背景に瓦礫が映し出されたバーチャルスタジオ内で、洪水の被害者へのインタビューが行われます。被災者がなにを失ったのかを常に思い出させる仕掛けとして、デザイナーは、2D 画像を組み合わせて構築した、3D のバーチャルな洪水後の廃墟を背景にしました。

「全体的に非常に感情的な、インタビュー環境をつくる全く異なる方法でした。オフィスとか中立的な環境では得られないような視聴者の反応を引き出せる、ユニークな環境をこのインタビューのためにつくりました」と ZDF Digital の 3D/モーションデザイン/3D リアルタイム/バーチャルプロダクションのチームリーダー Mario Hill は言います。

ZDF Digital は、しばしば若年層のグループにアピールするための、人工知能や言語モデルと組み合わせた 3D 体験も提供しています。 Terra X は、歴史、冒険、自然に関する楽しいドキュメンタリーを、あらゆる年齢層向けに提供することに注力しているブランドです。「Tiefseetauchfahrt (Deep Sea Dive)」というデジタル体験 では、ユーザーがバーチャルな海底の世界をクリックして進みながら、海の生き物について学びます。プレイヤーは、動物を見つけたら、3D の姿を 360 度から詳細に見ることができます。

同じく Terra X のために制作されたチームの最新作のひとつは、旅行代理店 Thomas Cook が世界で初めて提供したホリデーパッケージツアーの再現です。この番組では、Adobe Substance 3D を使用したアーティストたちが、イギリスのレスターにある列車と駅を、1841 年のオリジナルデザインと同じテクスチャに修正しました。アーティストたちは、Substance 3D Painter を使用して、建物のファサードのひび割れなどの細かなディテールまでテクスチャとして追加するなど、高度にリアルな成果を達成しました。この作品で ZDF Digital は、高額な予算やリソースが必要な現場撮影を行わずに、視聴者に可能な限り本物のように見える映像が必要でした。

「私たちのアプローチは、3D 環境と実際の場所の差異をぼかすことです」と ZDF Digital イノベーション&クリエイティブプロダクション部門トップの Renée Abe は言います。「3D を使うと、セットもよりサステイナブルなものになります。俳優を LED ウォールの前に立たせるだけで、ロケ地へ行く費用を削減できるだけでなく、望ましくない天候といった要因によるスケジュールの遅れもなくなります」

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3D をクリエイティブワークフローに統合

ZDF Digital のデジタル制作チームは、Substance 3D アプリの使いやすさを、特に高く評価しています。Adobe Creative Cloud の長年のユーザーとして、彼らはすでにアドビのクリエイティブアプリケーションに慣れ親しんでおり、Substance 3D も、短期間のうちに彼らのワークフローに統合しました。

「レイヤーの操作やマスクの作成に慣れているため、Substance 3D Painter での作業は慣れ親しんだ感じがしました。3D であるだけの Photoshop のようです。そのため、慣れるまでに長い時間はかかりませんでした。その反対に、すぐに想像を自由に膨らませられました」と Hill は言います。

Substance 3D が Unreal Engine など他の 3D ツールと統合されていることが、チームのクリエイティブな自由を広げています。例えば、アーティストは、他の 3D ツールで作成したキャラクターを、追加プラグインをインストールすることなく Substance 3D で編集できます。そのため、ワークフローの効率が大幅に向上して、アーティストが 3D パイプライン全体を通して、一貫性のあるビジュアルをリアルタイムで試す時間がより増えます。

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信頼性のために

コンテンツの真正性と責任ある扱いは、あらゆる公共メディア機関にとって最も重要な関心事です。アドビが設立メンバーである Content Authenticity Initiative を通じて、ZDF Digital は、フェイクニュースとの戦いにおける強力なパートナーと、商用利用可能なコンテンツへのアクセスを手に入れました。商用利用可能な画像には、Adobe Stock のビジュアルや Adobe Firefly 生成 AI を使用して生成した動画などが含まれます。

「私たちの名前 ZDF は、透明性を持った本物のコンテンツへの責任と同義です。その意味で、現在市場に出回っている多くの AI ツールは、制作に使える状態にありません。積極的な事例と、信頼性の高いコンテンツにより、私たちは公共放送に対する信頼性を高めています。同時に、生産性を高めるツールの恩恵も受けています」と Abe は言います。

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プロンプトから 3D 素材を生成

ZDF Digital の今後の重要な目標のひとつは、ワークフローをさらにシンプルで、効果的で、自動化されたものにすることです。チームは特に、最適化された音声ダビングや、テキストプロンプトからの 3D 素材作成など、アドビエコシステム内の前途有望な生成 AI 機能の開発に注目しています。

「結局のところ、必要なのは、フォトリアリアルなコンテンツの需要が高まっていることへの対応です。これは、自動化、プロセスの高速化、そして最高の品質が揃って初めて実現できます。アドビはそのすべてと、それ以上を提供してくれます」と Abe は言います。

Substance 3D の詳細はこちらをご覧ください。

この記事は How ZDF Digital is using Substance 3D to deliver immersive experiences (著者: Marc Hamaker)の抄訳です