フリーランス新法対応!発注書のPDFを作成してみよう
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こんにちは!桑名です。フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が広く知られるようになってきました。この新法では、フリーランスに業務委託をする発注事業者に複数の項目が義務付けられています。
特に取引条件を書面等で明示する義務は、フリーランス同士の取引も対象となるため、発注側にとって非常に重要です。
メールや紙文書に取引条件を記載してもかまいませんが、便利さから「発注書」に記載して送信する人もいるでしょう。そこで今回は、発注書PDFの作成方法を紹介します。
発注書をPDFにするメリットと注意点
発注書は、どのように作成していますか?ExcelやGoogleスプレッドシートで作成し、メールで送信する方も多いでしょう。確かにこの方法は手軽で便利ですが、実は多少のリスクを伴います。
もし受け取った人がExcelで内容を変更してしまったらどうなるでしょう?たとえば、報酬額や支払い期日が勝手に書き換えられてしまったら?
そのような事態はめったに起こりませんが、リスクはゼロではありません。
▲Excelの発注書は書き換えができてしまう
そういったリスクを避けるために役立つのが、PDFの発注書です。PDFなら、Acrobatを使って編集禁止の設定ができるので、内容が勝手に変更されるリスクを防げます。
では、どのように編集できないようにするのかを説明しましょう。
まずは、PDFに変換した発注書をAcrobatで開きます。開いたら「すべてのツール」タブにある「PDFを保護」をクリックしてください。
▲「すべてのツール」タブにある「PDFを保護」をクリック
続いて、一番上にある「パスワードで保護」をクリックします。
▲「パスワードで保護」をクリック
するとダイアログボックスが表示されます。「閲覧」と「編集」がありますが、「閲覧」はファイルを開くときのパスワードなので、「編集」を選んでください。パスワードは6文字以上の半角英数字を入力します。このパスワードは、再編集が必要になったときや編集禁止を解除するときに使うパスワードなので忘れないようにしましょう。
パスワードを2か所に入力したら、「適用」をクリックします。
▲「編集」をクリックして、パスワードを入力し「適用」をクリック
最後に上書き保存を行うと、編集禁止のPDFが完成です。これ以降は、編集しようとするとパスワードの入力が求められるため、勝手に変更される心配がなくなります。
▲編集しようとするとパスワード入力が求められる
発注書のテンプレートで業務効率アップ!
そもそも発注書は、毎回同じような形式で発行しますよね。Excelで必要な箇所を更新して、それをPDFに変換する……この繰り返し、少し面倒だと思いませんか?
そこで、Acrobatのフォーム作成機能で発注書のPDFをテンプレートにしてはいかがでしょう。
一度テンプレートを作成してしまえば使い回しができるので、大幅に作成時間を節約できます。特に複数人で注文書を扱う場合は、1つ作成して共有すればよいので便利です。
▲フォーム形式の発注書PDF(例)
フリーランス新法のパンフレットによると、取引条件の明示が義務化されているのは次の項目です。
- 発注事業者とフリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 業務の内容
- 給付を受領・役務提供を受ける期日
- 給付を受領・役務提供を受ける場所
- 検査完了日(検査を行う場合)
- 報酬の額および支払期日
- 支払方法に関する必要事項(現金以外の方法で支払う場合)
5と8は、書き換えずにそのまま使えることが多いですが、他はその都度入力が必要になるでしょう。これらをPDFに直接入力できるようにしておけば、他のアプリを使わずにAcrobatだけで作成できるのです。
直接入力ができるようにするには、フォーム作成機能を活用します。難しいと思われがちなフォーム作成機能ですが、実はそれほど難しくないのでお試しください。
まず、Acrobatで注文書のPDFを開いたら「すべてのツール」の「フォームを準備」をクリックし、次の画面で「フォームを作成」をクリックします。「フォームを準備」が一覧にない場合は、「さらに表示」をクリックすると表示されます。
▲「すべてのツール」の「フォームを準備」をクリック
ExcelやWordなどで作成した文書の場合、枠線で囲んだ部分が自動的にフィールドとして設定されます。入力箇所にフィールドが追加されていない部分は、左の一覧からフィールドをドラッグして追加しましょう。さまざまなフィールドがありますが、発注書では「テキスト」フィールドと「日付」フィールドで十分です。
▲フィールドが自動作成されなかった部分は、左の一覧からフィールドをドラッグする
日付の部分は「日付」フィールドを使うので、「テキスト」フィールドが入っている場合は「Delete」キーで削除し、「日付」フィールドを追加してください。
追加したら「日付」フィールドをダブルクリックして「プロパティ」画面を表示します。
▲「日付」フィールドをダブルクリックして「プロパティ」ダイアログを表示する
「フォーマット」タブで、一覧の一番下にある「カスタム」を選択し、「yyyy年mm月dd日」と入力して「閉じる」をクリックしましょう。そうすれば、「2024年11月1日」のように西暦で表示されます。
▲「フォーマット」タブで「カスタム」を選択して「yyyy年mm月dd日」と入力
PDFで自動計算ができるってホント?
あまり知られていないのですが、PDFに計算式を設定して自動計算ができるのをご存じですか?たとえば、数量と単価を入力すると、その合計金額がすぐに画面に表示されます。金額の計算が必要なために、毎回Excelで作成している人もいるでしょうが、Acrobat上でできるので活用してほしいです。
計算式の設定も簡単にできるので説明しましょう。
まずは数量の欄にある「テキスト」フィールドをダブルクリックし、「プロパティ」画面を表示します。後で計算式を楽に作成できるようにするために、フィールドにわかりやすい名前を付けてください。「一般」タブの「名前」ボックスに「数量1」と入力します。
「ツールヒント」は、マウスポインタを置いたときに表示させるメッセージのことです。ついでに「数量」と入力しておきましょう。
▲プロパティ画面で「一般」タブの「名前」ボックスに「数量1」と入力
また、他の行にある数量には「数量2」「数量3」「数量4」……と別の名前を付けるようにしてください。その際、プロパティ画面は閉じずに表示させたままにし、他の行の「数量」フィールドをクリックして、コピーアンドペーストしながら設定をすると迅速に操作できます。
▲プロパティ画面を表示させたまま、他の「数量」フィールドにも設定する
同様に「単価」のフィールドをクリックし、「一般」タブの「名前」ボックスに「単価1」と入力します。
▲のプロパティ画面で「一般」タブの「名前」ボックスに「単価1」と入力
続いて「金額」のフィールドをクリックし、「一般」タブの「名前」ボックスに「金額1」と入力します。
そして自動計算ができるように式を設定しましょう。「計算」タブをクリックし、「次のフィールドの」を選択します。
「v」をクリックし、ここでは掛け算するので「積(×)」を選択し、「選択」ボタンをクリックです。
▲「計算」タブをクリックし「次のフィールドの積(X)にして「選択」をクリック
「数量×単価」を求めるので、「数量1」と「単価1」にチェックを付けて「OK」をクリックします。
▲「数量1」と「単価1」にチェックを付けて「OK」をクリック
同様に税率や消費税、合計金額にも式を設定しましょう。税率は、フィールドのプロパティの「フォーマット」タブで「フォーマット分類を選択」を「パーセント」、「小数点以下の桁数」を「0」にします。
▲「フォーマット」タブで「フォーマット分類を選択」を「パーセント」「小数点以下の桁数」を「0」にする
税率欄に「0.1」と入力すれば「10%」と表示されるので、そのまま保存すれば、その都度「10%」の部分を入力する必要がなくなります。
▲税率欄に「0.1」と入力すると「10%」と表示される
あとは必要に応じて細かな設定を行ってください。たとえば、数値に桁区切りの「,」を入れたい場合は、プロパティ画面の「フォーマット」タブで「フォーマット分類を選択」を「数値」に「小数点以下の桁数」を「0」にします。合計金額に「¥」を入れる場合は、「通貨記号」で「¥」を選択してください。
また、文字サイズはプロパティ画面の「表示方法」タブで設定でき、数値を右寄せにしたい場合は「オプション」タブで「整列」を「右揃え」にします。
フォーム形式の発注書で気を付けることは?
フォーム形式のPDFも、そのまま送信すると変更できてしまうので、編集禁止にする必要があります。ただし、先ほど紹介した編集禁止の方法は、文章の編集を禁止するだけなので、フィールドの部分に入力ができてしまいます。そこでフォームの編集ができないようにする必要があるのです。
▲一般的な編集禁止の設定では、フィールドの部分に入力ができてしまう
フォームも編集できないようにするには、「すべてのツール」の「PDFを保護」をクリックした後に、「パスワードによる暗号化」をクリックします。
▲「パスワードによる暗号化」をクリック
「文書の印刷および編集を制限~」にチェックを付け、「変更を許可」が「許可しない」になっていることを確認してください。
また、同じ画面にある「印刷を許可」が「許可しない」になっているとPDFの印刷ができません。発注書を印刷する場合もあるので、「印刷を許可」の「v」をクリックして、「高解像度」(または「低解像度」)にしておきましょう。
「権限パスワードの変更」に6文字以上のパスワードを入力し、「OK」をクリックします。次の画面で再度パスワードを入力して、「OK」をクリックします。
▲「文書の印刷及び編集を~」にチェックを付け、「変更を許可」を「許可しない」にする。パスワードを入力し「OK」をクリック
最後に保存をすれば、フィールドの部分も編集できなくなります。
せっかく発注書をPDFで作成しても、自由に編集できてしまうとPDFにした意味がなくなってしまうので、送信前に必ず編集禁止の設定を行いましょう。
今回は、発注書PDFの作成について紹介しました。最近ではさまざまなクラウドサービスがあるので、ご自身に合った発注方法を見つけていただけると良いですが、Acrobatでもフリーランス新法に対応できますし、編集禁止の設定をすれば文書の改ざん防止にもなります。
ただし、発注書だけでは法的効力が低いため、トラブルが発生したときの証拠としては十分ではありません。そのため、業務委託契約書を締結することをおすすめします。Acrobatには便利な電子サイン機能も備わっているので、ぜひそちらも活用してください。