映画「ブルー きみは大丈夫」の画期的な SNS キャンペーンに生成 AI を採用した Paramount+ の舞台裏

大ヒット映画「ブルー きみは大丈夫」は、12 歳の少女ビーを巡る物語です。困難な生活環境で暮らす彼女は、幻想的な生き物を目にするようになります。そして、それらは、周囲の人々の空想上の友達(IF)であることが判明します。IF たちの多くは、現実の側で生きている友人たちの成長に伴って、何年も前から置き去りになっていました。ビーは、彼らを再会させようと試みます。

Paramount+ は、この映画の配信開始に注目を集めるためのプロモーション戦略として、子供の頃の思い出、そして人々の多くが持っている空想上の友達に対する感情を利用したいと考えました。そこでマーケティングチームは、視聴者に自分自身の IF を空想する機会を提供することにより、彼らを惹きつける方法を模索しました。チームが到達した構想はどのようなものだったのでしょうか?それは、フォロワーが自分の IF の記述を投稿すると、数分以内にオリジナルのデジタル描画が送られてくるというソーシャルメディアキャンペーンです。

制作するデジタル描画は、映画のキャラクター(そしてビーのスケッチブック)に忠実であるために、一貫したスタイルを維持しつつ、個人的な依頼それぞれを正確に解釈したものである必要がありました。デザインチームは、大量の反応が来るであろうと想定し、この任務を効率的に達成できるソリューションを探し始めました。

IF に登場するキャラクター達。

Paramount+ のチームがこのソーシャルキャンペーンを実現するために選択したのは、Adobe Firefly の生成 AI 機能でした。ハッシュタグ #BringYourIFtoLife でソーシャルメディアから IF を記述したテキストが収集されたら、デザイナーが作業に取り掛かる番です。特別に描いた画像を Firefly にアップロードして、すべての生成画像にそれを参照させることにより、チームはスタイルを標準化しました。投稿された IF の記述はプロンプトに使われて、素早く Firefly がカスタム画像を生成しました。新しい IF キャラクターに命が吹き込まれ、ファンと共有する準備は完了です。

このソーシャルキャンペーンは 2 時間行われ、その間に 70 を超えるカスタム画像が生成されました。画像はソーシャルメディアの管理者によって、数分以内にファンに送り返されました。当日、「イーゼルに絵を描いている、両目と笑顔のホタル」や「風船を持った笑顔の雪だるまが『J ⛄️』とだけ書かれた名札を持っている」といった記述を投稿したファンには、彼らの想像を現実のものとするデジタル描画が提示されました。チームが特に注目したのは「ふわふわのフクロウの姿をした、私の愛する亡き父」という記述から生成された、ハートを抱えたフクロウのスケッチです。

このソーシャルキャンペーンは大成功を収め、Paramount+ からの映画の初回配信に向け、高レベルのエンゲージメントと会話を生み出しました。また、ソーシャルチームは @ForrestGump や @Dungeon&DragonsMovie などのハンドルネームからの記述に基づいて画像を生成し、これらの視聴者の共感を呼ぶ魅力的なコンテンツを作成しました。

「大規模なプロモーショ案の多くは、日の目を見ることがありません。特に、厳密に決められているスケージュールに従って作業する映画の場合はそうなりがちです」とパラマウント・ストリーミングの SVP 兼デザインチーム責任者の Matt Hernandez は語ります。「Adobe Firefly は、『ブルー きみは大丈夫』のための素晴らしいソーシャルキャンペーンを可能にしてくれました。画像を 1 対 1 でパーソナライズできる方法によるコンテンツ制作を推進し、ファンとのエンゲージメントを高めるために役立ちました」

以上のストーリーは、クリエーターとマーケターの垣根を越えて、短期間で優れたアイデアを実現した素晴らしい例です。チームがソリューションとして Firefly を採用した理由には、高品質の画像を生成できることだけでなく、安全な商用利用を念頭に設計されているという重要な要素もありました。結果として、一貫したブランドのスタイルを維持しながら、ソーシャル上の視聴者を喜ばせるコンテンツの制作を加速できました。また、同社が採用したアイデアは、生成 AI がデジタルマーケティングキャンペーンにもたらすことのできる価値を示すものです。既存のプロセスを見直すことにより、マーケティングチームはファンを映画に引き寄せるクリエイティブなアイデアを実践に移すことができました。

パラマウントの Adobe MAX 2024 のセッション「New Creative Flows: The GenAI Jump-Start(英語)」はこちらのページからご覧になれます。

この記事は Behind the scenes: How Paramount+ used Adobe Firefly generative AI in a social media campaign for the movie IF(著者: Ken Reisman)の抄訳です