《 生成AI × ゲーム業界 》 生成AIが切り開くゲームデザインの未来
2024年12月10日、アドビ東京オフィスのPanorama Squareにて、「Adobe Firefly Meetup EXTRA《ゲーム業界篇》〜生成AI時代におけるゲーム制作と生成AIとの付き合い方」を開催しました。
本ミートアップは、生成AIがゲーム制作にもたらす可能性を深掘りし、業界全体での課題解決を模索する場として開催 され、ゲーム業界の生成AI担当者、テクニカルアーティスト、デザインリード、テックリードなど、多岐にわたるメンバーが集まりました。本記事では、当日のディスカッションから得られた気づきや課題、参加者の声をご紹介します。
もくじ
- 開催背景と目的
- 生成AIとゲーム業界:見解と洞察
- 参加者の声と振り返り
- 考察と今後の展望
- まとめ

開催背景と目的
生成AIは、ここ数年の急速な進化とともに、ゲーム制作における開発の効率化や新たな創造性の可能性を示しています。その一方で、導入にはさまざまな課題が伴っています。本ミートアップでは、以下の3点をテーマに参加者による熱いディスカッションが展開されました。
- 生成AIの最新技術とその応用可能性
- 倫理的課題や社会的影響への向き合い方
- 未来のゲームクリエイティブの方向性
膝を突き合わせて率直な意見交換ができる場として、各社が抱える課題や悩み、今後の解決策やビジョンについて活発な議論が行われました。
ミートアップの冒頭で、株式会社Cygames エンジニア2部 / AIテクノロジー 専門役員 金井 大 氏は次のように参加者に呼びかけました。
「生成AIというホットなトピックを、このような場でみなさんと議論できることを非常に嬉しく思います。私も専門役員として、できる限り多くの情報を共有したいと考えています。本日は、みなさんと熱いディスカッションを進められることを楽しみにしています。」
金井氏は、生成AIに関する一歩踏み込んだトピックを参加者全員で議論し、未来のゲームデザインに生かすことを強調しました。
生成AIとゲーム業界:見解と洞察
本ミートアップの核心とも言えるディスカッションパートでは、3つのテーマを軸に、ライトニングトークとグループディスカッションが展開されました。それぞれのテーマにおいて、ディスカッションリードと、参加者による対話を通じて深い洞察が得られました。
《 ディスカッション 1 》 ゲーム制作領域における生成AIの現在
ディスカッションリードの株式会社セガ 田林 大輔 氏
ディスカッションリード:
田林 大輔 氏|株式会社セガ 第3事業部 第3オンライン研究開発 デザイン2部 シニアデザイナー
ディスカッション概要:
田林氏は、生成AIがゲーム制作に与える影響と現在の課題について、多角的な視点から解説しました。
- ゲーム制作における生成AIの受け入れられ方と推進状況の共有
- 言語生成AIや画像生成AIの生成事例や活用方法
- 制作上のメリット/デメリットと業務への寄与
特に注目されたのは、クリエイティブの変化、制作チーム文化への影響、クリエイターの役割の変化への期待や抵抗感です。田林氏は、生成AIが既存のクリエイティブのプロセスにどのように溶け込み、新しい価値を生み出せるかについて幅広い議論を呼びかけました。
グループディスカッションの主な意見:
田林氏の講演を受け、参加者たちは生成AIの現在について活発に議論しました。その中で、以下の意見が共有されました。
- 生成AIの導入状況と、クリエイターの補助ツールとしての役割
- 生成AIの推進状況は、アイディア出しやコンセプトアート作成などの補助的な役割に留めて活用している例から、バリエーション展開における検証テストまで行っている例まで各社さまざまでした。方向性としてはクリエイターが自身の独自性や創造性を発揮するための補助ツールとして活用するのが良さそうだという意見が多数を占めました。
- 専門知識を持つ人材の育成と結果を評価する仕組みの強化
- 生成AIを効果的に活用するためにはツールを使いこなせるだけでなく、AIが生成した結果を正確に評価するためのガイドライン策定とクオリティチェックの仕組みの必要性、そしてクリエイティブのプロセスに統合できる知識を持つ人材が必要だという意見が出されました。
- 業界全体での知見共有の重要性
- 参加者からは、他社の成功事例や失敗事例を共有し議論することで、業界全体の生成AI活用を加速できるとの意見がありました。このためには、今回のようなイベントの継続的な開催が求められるとの声が多く上がりました。
ゲーム制作領域における生成AIの現在について意見交換
《 ディスカッション 2 》 生成AIの倫理的課題とクリエイターとしての矜持。 それを踏まえた社会的影響とは?
ディスカッションリードの株式会社MIXI 異儀田 諭 氏
ディスカッションリード:
異儀田 諭 氏|株式会社MIXI 開発本部 たんぽぽ室 DX推進グループ マネージャー
ディスカッション概要:
異儀田氏は、生成AIの利用における倫理的課題と、それがクリエイターに与える影響について、具体的な事例や考察を交えて議論の方向性を示し掘り下げました。
- 既存事例に見る、生成AIが直面する社会的反発
- AI活用によるクリエイターの矜持と役割の変化
- 生成AIがクリエイターの創造性に与える影響と、それにどう向き合うべきか
異儀田氏は 「クリエイターの倫理観が重要」 と述べ、生成AIが補助的な役割を果たす中で、クリエイターがその価値観をどう維持し、どのようなスタンスに基づいて、何を守って行くのか?を深く考えることがカギであると語りました。
グループディスカッションの主な意見:
異儀田氏の講演を受け、参加者たちは倫理的課題と生成AIの活用におけるクリエイターの役割について深く議論しました。その中で、以下の意見が共有されました。
- クリエイターの専門性と責任の確保
- 生成AIを効果的に活用するためには、クリエイターが生成物を正しく判断し、その意図や制作過程を明確に説明する能力が重要とされました。これは、生成AIが出力するデータの品質管理や倫理的問題に対処するために不可欠です。クリエイターの専門性とプロの目が、生成AI時代においても重要な役割を果たすことが改めて強調されました。
- クリエイターのモチベーションと創造性を守る環境作り
- AI導入が進む中で、AIと人間の役割を明確にし、 AIはクリエイターの「コパイロット」として活用されるべきであり、人間が主役であるべきという意見が共有されました。 AIを利用することで効率化を図る一方、クリエイターの独自性や創造性を尊重し、モチベーションを維持する環境作りが重要とされました。
- ユーザーに受け入れられる生成物の基準と信頼の構築
- 生成AIが生み出したクリエイティブがユーザーに受け入れられるかどうかは、その制作意図やプロセス次第であるとの意見がありました。ユーザーへの説明責任を果たすことで、生成AIの利用に対する理解を深め、社会的な受容を促進する一助とすることができるのではないかと議論されました。
- 適材適所のAI活用とクリエイターの共感力の向上
- AIは万能ではなく、向いていない領域に無理に適用するべきではないという意見が共有されました。最終的には、クリエイター自身が社会やユーザーの期待を理解し、共感力を持ちながら制作活動を進めることが重要であるという意見も出されました。生成AIが制作に関与する場面でも、クリエイター自身の判断力と倫理観が大きな影響を与えるとされました。
改めて強調されたクリエイティブのミッション
《 ディスカッション 3 》 生成AIとゲームクリエイティブの未来
ディスカッションリードの株式会社Cygames 金井 大 氏
ディスカッションリード:
金井 大 氏|株式会社Cygames エンジニア2部 / AIテクノロジー 専門役員
ディスカッション概要:
金井氏は、生成AIがゲームデザインにどのような具体的な影響を与え、どの分野で変化を生むかについて、短期的な展望から中長期的なビジョンまで幅広く解説しました。
- 短期的な視点では、反復作業の効率化やオペレーション業務を効率化するツールとしての活用
- 中長期的な視点では、3D技術や動画生成といった新しい技術との融合を視野に入れ、より革新的なエンターテインメント体験を創出する必要性を強調
- 社内リテラシーの向上やデータ管理の効率化が、AIの活用をさらに促進
特に、3D技術との融合や、ビッグデータを活用した生成AIによるプロセス全体の効率化により、ゲーム開発のコスト削減と生産性向上が期待されています。
グループディスカッションの主な意見:
金井氏の講演を受け、参加者たちは生成AIの導入と未来のゲームデザインについて意見を交わしました。主な意見は以下の通りです。
- データ管理と統合の課題
- 多くのグループが、ゲーム制作におけるデータ管理の難しさを共通の課題として指摘しました。データの種類や形式が多様であるため、チーム間で統一することが難しいという現状があります。これに対して、社内のデータを効率的にクロールし統合する仕組みが必要であり、AIを活用したクローラーの導入がその一つの解決策として挙げられました。特に長期的な視点では、データの管理と連携を一元化することが求められており、業界全体での標準化が今後の大きな課題となることが期待されています。
- 生成AIの効率化とクリエイティブへの影響
- 生成AIは効率化の面で大きな可能性を持っている一方で、クリエイティブ業務にどのように影響を与えるかが議論されました。例えば、繰り返し作業やオペレーション業務をAIが代行することで、クリエイターが創造性を発揮しやすい環境を整えることが重要です。一方で、AI導入による効率化がコスト削減やリードタイム短縮に繋がることが期待されていますが、その効果が目に見えにくい場合、企業としての投資判断が難しいという課題も共有されました。
- 長期的な視点での技術進化と環境整備
- 生成AIの進化を長期的な視点で捉え、ゲーム制作の未来に備える必要性が強調されました。参加者の間では、業界全体で共通の基準やモデルを策定することの重要性も議論されました。AIの活用が進む中でクリエイターの役割や仕事の在り方が変化していくことは避けられないため、人材育成や環境整備が欠かせません。また、生成AIの可能性に過度な期待を寄せるのではなく、適材適所での活用を進めることの重要性も指摘されました。
金井氏の講演とグループディスカッションを通じて、生成AIがゲームデザインの未来に与える影響が具体的かつ多角的に掘り下げられました。参加者たちは、生成AIを活用した新しいゲーム体験や業界全体の成長の可能性に大きな期待を寄せている様子でした。
グループディスカッションでの気づきを発表する金井氏
参加者の声と振り返り
ミートアップを通じて得られた気づきと感想
ミートアップを通じて多くの気づきがありました。参加者からのコメントの一部をご紹介します。
- 「同じ業界における単一テーマに対する多角的なディスカッションができて大変参考になりました。」
- 「他社の方々がどのようにAIを活用し向き合っているのか知る場所がなかったので、情報交換ができて大変有意義でした。」
- 「センシティブな議題でしたが、非常に有意義な時間でした。」
- 「各社の状況や新しい視点の意見などを聞くことができ、とても有意義で楽しい時間でした。」
特に以下のコメントは、イベントの成果を象徴するものでした。
「このたび設けていただいた施策は、少なからずゲーム制作における生成AI活用の推進に繋がっていくと確信しています。」
また、イベントの最後には、金井氏が振り返りのコメントを述べました。
「今回のような場での議論は、ゲーム業界内での連携と議論を深める上で非常に重要です。参加者間で知見を共有できたことは大きな収穫でした。この会が来年以降も継続することを期待しています。」
アドビ 名久井による「ゲーム領域で有用なAdobe Fireflyの活用情報と海外の状況」セッション
考察と今後の展望
主催者としての学び
今回のミートアップを通じて、生成AIの導入と活用促進において重要なのは、同じ課題感を持つ業界のリーダー同士による、リアルな場での対話と議論、そして、それらがもたらす新たな視点や発見、気づきやヒントの共有だと、改めて実感しました。
生成AIは、効率化や創造性の拡張に寄与する一方、引き続き課題も数多く存在しています。本ミートアップで得られた知見が、業界全体での課題解決の一歩を進めるきっかけとなることを期待しています。
今後のフォローアップ
本ミートアップで得た知見をさらに活用しゲーム業界に貢献できるよう、今後の継続的なフォローアップと新たな施策を予定しています。次回開催時には、さらに具体的なユースケースや成功事例の共有に焦点を当て、議論を深化させたいと考えています。
まとめ
生成AIは、ゲーム業界における新たな可能性を切り開く技術として期待されています。本イベントで得られた知見が、未来のゲームデザインに貢献することを願っています。次回のミートアップでお会いしましょう!
