Adobe Illustrator の「生成再配色」が役に立つ 6 つのシーン:現場で役立つ Adobe Firefly 第 2 回
本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用ノウハウやヒントをお届けします。第 2 回は、タマケンから Adobe Illustrator の「生成再配色」がデザイン作業に役立つ場面を 6 つご紹介します。
Illustrator の「生成再配色」が役に立つ 6 つのシーン
デザインにおいて「色」は、視覚的な印象やメッセージを左右する、重要な要素のひとつです。
Illustrator で作業中に「もっと魅力的な配色にしたいけれど、なかなかしっくりこない…」と行き詰まった時。そんなお悩みを解決するのが、Firefly がいろんな色の組み合わせを瞬時に提案してくれる「生成再配色」です。
本記事では、生成再配色の基本操作と、特に役立つ 6 つのシーンを具体例とともに解説します。
上の動画と、この記事の内容は同じです。お好みに合わせてご覧ください。今回使用しているサンプルはこちら(ZIP : 3MB)からダウンロードできます(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)。
生成再配色とは
生成再配色は、ベクターオブジェクトのカラーを Illustrator が提案してくれる機能です。プロンプトに基づいて配色を自動で提案してくれます。
例えば、下の画像のように、緑色を基調としたポストカードのデザインを、春をイメージしたピンクの配色に変更することができます。
生成再配色の基本操作
生成再配色を使用するには、配色を変更したいオブジェクトを全て選択した状態で、上のメニューから「編集」>「カラーを編集」>「生成再配色」を選択します。
生成再配色のパネルが開いたら、プロンプト入力欄に配色の指示を入力します。ここでは、春をイメージした柔らかなピンクの配色にしたいので、プロンプトに「春の淡いピンク」と入力します。
プロンプトを考えるのが難しい場合は、シンプルに使いたい色の名前をそのまま入力するだけでも十分です。例:「淡いピンクとイエロー」、「ダークブルー」 など。
プロンプトは日本語で OK ですが、システム上、自動的に英語に翻訳されてから生成されます。英語が得意な方は、直接英語で入力するとニュアンスがより正確に伝わるため、おすすめです。
プロンプト入力欄の下には、9 つの「サンプルプロンプト」が用意されています。プロンプトが思いつかないときや、まずは試してみたいときに活用してみましょう。どのようなプロンプトが、どのような配色に繋がるのかを実際に体感することができます。
プロンプトを入力するとカラーの「➕」ボタンが押せるようになります。このボタンをクリックすると、スウォッチが表示され、キーとなるカラーを指定することができます。今回は使用しませんが、プロンプトだけでは色のイメージが伝わりにくい場合や、イメージ通りの配色にならない場合に、補助的な役割として活用するのがおすすめです。
生成ボタンをクリックすると、プロンプトのイメージにあったピンクの配色が 4 つ生成されます。生成結果の中から好きなバリエーションを選択しましょう。気に入った結果がなければ、もう一度「生成ボタン」をクリックします。さらに 4 つのバリエーションが追加されます。
プロンプトやカラーの指定を工夫することで、さまざまなバリエーションを簡単に作成することが可能です。
「生成再配色」が役に立つ 6 つのシーン
ここからは、生成再配色がどのようなシーンで便利に使えるのか、具体的なケースを 6 つご紹介します。便利な場面を知ることで、この機能をさらに効果的に活用することができます。
【1】色数が多いデザイン
色数が多いデザインは、配色の変更に手間が掛かります。特にオブジェクトの数が多く、細かい要素が多い場合はなおさらです。こうしたケースでは、「生成再配色」を使うことで、効率よく理想の配色に変更することが可能です。
カラフルなデザインの色相を少しずらしたり、彩度を調整する程度であれば、従来からある機能の「オブジェクトを再配色」でも十分対応できます。
一方で、全体の色相を統一したり、2〜3 つの色相で構成されたシンプルなデザインに仕上げたい場合は、「生成再配色」を活用することで、オブジェクトを一つ一つ選択して色を変更する手間を省きながら洗練された配色を実現できます。
もちろん、色相が多いカラフルな配色にも展開可能で、グレースケールに変更することも簡単にできます。
【2】グラデーションのデザイン
グラデーションを使ったデザインの色変更は、手間がかかるだけでなく、自分で調整すると綺麗な配色に仕上がらないこともあります。こうした場合でも、「生成再配色」を活用することで、効率よく理想の配色に変更することが可能です。
シンプルなグラデーションであれば手動でも比較的簡単に調整できますが、グラデーションが複雑になるほど「生成再配色」の効果が際立ちます。この機能を使えば、時間を節約しながら洗練された配色が実現できます。
【3】パターンのデザイン
シンプルなパターンであれば色替えは比較的簡単ですが、要素が複雑なパターンでは、配色の変更が一気に難しくなります。通常、パターンを編集するには、メニューの「オブジェクト」>「パターン」>「パターンを編集」を選択し、編集画面を開く必要があります。
しかし、「生成再配色」を使えば、煩雑な作業をスキップして、効率的にイメージに近い配色に変更することが可能です。
【4】モノクロのデザイン
モノクロのイラストやデザインに、色を加える際も活用できます。
特に、複雑で要素が多いオブジェクトに、手動で一つ一つ色を付けるのは非常に手間がかかりますが、この機能を使えば簡単かつ効率的に理想の配色を実現できます。
【5】画像トレースしたベクター
画像トレースしたベクターの色替えにも便利です。
元の画像に近い配色で仕上げたい場合は、手動で調整するだけでも十分対応できます。しかし、「生成再配色」を使えば、元のイメージとは大きく異なるポップアートのような大胆で個性的な配色も簡単に実現できます。
【6】色がバラバラなイラスト
色がバラバラな複数のイラストをデザインに使用すると、全体にまとまりがなく、洗練された印象を与えにくくなります。こうした場合、色相やトーンを統一し、デザインの一体感を高めることが求められます。
「生成再配色」を使えば、わずかな操作で色味を揃え、簡単に統一感のあるデザインに仕上げることが可能です。
まとめ
今回は、生成再配色の基本操作と、特に役立つ 6 つのシーンを具体例を交えてご紹介しました。どのような場面でこの機能が便利に使えるのかを理解しておくことで、デザインの効率化やクオリティアップに大いに役立てることができます。
非常に便利な機能なので、ぜひ皆さんも積極的に活用してみてください!