株式会社DINOS CORPORATION|デザイン知識なしでも直感的に作れるAdobe Expressと生成AIを活用して、商品に込めた思いをカタチにして伝える
もくじ
- クリエイティブを重視する、ディノスのマーチャンダイジング
- 撮影ラフの作成にかかる時間が最大の課題に
- Adobe Expressの生成AI機能に着目
- 画像の検索や加工にかかっていた時間を大幅に短縮
- SNSアカウントのコンテンツ制作にCreative Cloudを活用
- メンバーのスキルのばらつきを埋めるAdobe Express
- 動画制作の完全内製を支えるPremiere Pro
- Creative Cloudグループ版の活用により完全内製化を目指す
クリエイティブを重視する、ディノスのマーチャンダイジング
家具、インテリア、ファッション、美容健康、食品などを扱う総合通販ブランド「ディノス」を運営する株式会社DINOS CORPORATION。1970年に日本で初のテレビ通販をスタートさせ、その後カタログ、インターネット、店舗といった様々なチャネルを通じて、付加価値の高い商品やサービスを提供しています。
幅広い商品を展開するディノスの中で長年に渡って人気を博しているカテゴリーの一つに、家具・収納があります。その商品の企画から選定、写真撮影のディレクション、カタログの構成までを一気通貫で行なっている部署が、家具・収納部です。こうしたマーチャンダイジングを行ううえで、クリエイティブ性というものがとても重要であると、同部署のチーフMDである大谷 光政さんは話します。
「我々は通信販売会社なので、お客様が商品を選ぶときは、実物を見たり、触ったりできないわけです。なので、お客様にその商品がいかに上質で魅力的であるかを写真やテキストで伝えることが我々の仕事だと思っています。もちろん商品の特徴を詳しく伝えることが大事なのですが、お客様がその商品を使うことで暮らしにどんなストーリーが生まれるのか、そんなことがイメージできるようなコンテンツを届けたい。それには、写真の撮り方であったり、レイアウトの見せ方であったり、あるいはテキストの言い回しであったり、クリエイティブな発想や表現力がすごく重要になってきます」
家具・収納部 家具・収納第2ユニット チーフMD 大谷 光政さん
撮影ラフの作成にかかる時間が最大の課題に
カタログやオンラインショップに掲載される商品の写真、中でも暮らしのシーンを背景とした写真の撮影は、家具・収納部のスタッフと外部のカメラマンやスタイリスト、デザイナーなどのチーム体制で行われます。まず、同部署のスタッフがどのようなシーンで、どのような撮り方をするかを考え、そのイメージからデザイナーがラフを起こし、撮影スタッフに伝えます。そのラフの作成にかかる時間と手間が最大の課題だったと、同部署の杉本 茉由さんは話します。
「“こんなふうに撮ってほしい”というイメージは、頭の中ではできているものの、それを言葉や絵にして伝えることがすごく難しくて。ネットの画像検索とかでイメージに近い画像を探したりするのですが、ぴったりの画像は早々に見つかるものではなく、何十枚も何百枚も探して、それでも見つからないこともあります。そうしたときは、“部屋の雰囲気はこんなイメージ、インテリアはこれ”といったように別々の写真を用意して、デザイナーさんにスケッチを描いてもらったりもします。そこから何度か修正のやりとりをして、イメージどおりのラフが上がってくるまでに約1.5〜2ヶ月はかかっていました」
次々と新しい商品が開発されるなか、こうしたラフの作成に毎回かなりの労力と時間を費やしていた同部署は、その解決策を模索しつづけていました。大谷さんは、「何しろ我々は絵が描けないので。絵が描けてそれが伝われば一番いいのですが、そこはもうひたすらイメージに近い画像を探して、あとは口頭や文章で一生懸命伝えるしかなかったです」と当時を振り返ります。
商品撮影のイメージを伝えるための指示書(左)と、デザイナーが描き起こしたラフ(右)
Adobe Expressの生成AI機能に着目
同社では、以前よりAdobe Creative Cloudグループ版を導入し、それを必要とする部署やチームにライセンスを割り当てて運用していました。しかしながら家具・収納部のスタッフは、個人的に他のデザイン系デジタルツールを試したことはあっても、Creative Cloudに触れる機会はほとんどなかったと、大谷さんはいいます。
「Photoshopなどの存在はもちろん知っていましたが、それらはプロのデザイナーさんが使うというイメージが強くて、自分で触って何かやってみようと思ったことは今まで全くありませんでした」
そうしたなか、すでにCreative Cloudを使っていた部署から、初心者でも簡単に画像やデザインが作れるAdobe Expressというツールがあることを聞いた杉本さんは、さっそく無料プランで試してみることになりました。そこでまず目に飛び込んできたのが、Adobe Fireflyの生成AI機能だったといいます。
そのときの様子を、杉本さんはこう話します。「最初は適当にテキストを入れて画像を生成してみたのですが、“あっ、本当にできるんだ”という驚きがありました。面白くて色々と試しているうちに、“シンプルな部屋にあるソファ”みたいなテキストを入れてみたら、すごく完成度の高い画像が出てきて、これもしかしたら指示書に使えるのではと思い、それが使い始めるきっかけでしたね」
それ以降、毎日のようにAdobe Expressを開き、操作やコツを覚えて、より自分のイメージに近い画像を生成できるようになっていきます。実務で使えるレベルになった頃には、無償プランの生成クレジットが追いつかなくなり、有償のプレミアムプランに切り替えました。
家具・収納部 家具・収納第2ユニット 杉本 茉由さん
画像の検索や加工にかかっていた時間を大幅に短縮
家具・収納部のなかでAdobe Expressを実務に使い始めるようになってから約半年が経過し、その効果は確実に表れていると杉本さんはいいます。
「画像を探す時間が圧倒的に減った、というのが一番ですね。以前は1つのシーンを説明するのに何枚もの画像を探さなければならなかったのが、ほぼほぼ1枚の画像で出せるようになりました。たまに余計なものが生成されるときもあるのですが、それも簡単に消すことができたり、逆にこんなのが欲しいというものを簡単に足すことができたり、それもExpress内でできてしまうのですごく効率的です」
また杉本さんは、日頃よく使用する機能の1つとして「生成拡張」をあげました。「弊社のカタログやwebに使用する商品写真はそれぞれ画角が異なり、それに合わせるためにトリミングをするのですが、そのときどうしても横がちょっと切れてしまい、切れないようにするには上下の画像が足りなくる、といったことがよくあります。でもこの機能を使うと、足りない部分に自然に画像を生成してくれるので、トリミングに悩むことがなくなりましたね。もう毎日のように使っています」
Adobe Expressの導入により、画像の検索や加工にかかっていた時間を大幅に短縮し、同じ時間でより多くの商品の処理が行えるようになり、また他のやるべき業務に時間を回せるようになるなど、業務全体の効率化を実現しています。
Adobe Expressの「画像を生成」機能を使って、自分の頭の中のイメージに近い画像を作り出す
SNSアカウントのコンテンツ制作にCreative Cloudを活用
同社では、Instagramを中心としたSNSの公式アカウントの運用を行い、インフルエンサーからの投稿も活用しながら商品の認知度を広げていく活動に注力しています。Instagramのフォロワー数は現在20万人を越えています(※2025年2月現在)。
SNSアカウントの運用は同社のEC部 デジタルマーケティングユニットという部署が行っており、自社発信のコンテンツの制作も自らが手がけています。「投稿するコンテンツは、カタログなどで使った画像に文字などを入れてデザインしたり、ちょっとしたアニメーションを入れて動画にしたりしています。最近では活用シーンや便利な使い方などを動画で紹介するコンテンツが増えていて、その場合はストーリー作りから、撮影、編集までを内製で行っています」と話すのは、同部署のユニットマネージャーである佐藤 友紀さん。コンテンツの制作には、これまでPhotoshopやPremiere ProなどのCreative Cloudアプリを活用してきたといいます。
Instagramの公式アカウントに投稿された画像および動画コンテンツの数々
メンバーのスキルのばらつきを埋めるAdobe Express
佐藤さんがCreative Cloudを本格的に使用するようになったの同社に転職してからだといいます。「前職では、すごくベーシックなことだけ知識として持っていた程度で、そこまで本格的に制作するということはありませんでした。この部署に配属され、“自分たちでコンテンツを制作して投稿していこう”となったときに、社内のデザイナーたちが基本的なアプリとして使っていたのがCreative Cloudだったため、私たちもPhotoshopやPremiere Proを手配していただきました」
コンテンツの内製化においては、当初は画像に簡単な文字をのせる程度のものでしたが、フォロワーの滞在時間を伸ばし、より多くのリーチを獲得するための施策として、デザイン性を重視するようになりました。しかし同部署では、画像や動画の編集をある程度やったことのある人、まったく経験のない人など、メンバーのスキルにばらつきがあり、そのばらつきをどのように埋めるかが課題となっていました。
その解決策について、佐藤さんはこう話します。「あまり制作工数を増やさず、コンテンツのクオリティを上げながら投稿数を増やしていくにはどうしたらいいのかを考えたときに、Creative CloudのなかにAdobe Expressというアプリがあることを知りました。自分で触ってみて、これならPhotoshopを1から学ぶよりも、デザインの知識がなくても直感的にクリエイティブを制作することができるというのを実感しました。それをチームのメンバーと共有したところ、かなり使い勝手が良いという意見があったので導入することになりました」
EC部 デジタルマーケティングユニット ユニットマネージャー 佐藤 友紀さん
動画制作の完全内製を支えるPremiere Pro
SNSのコンテンツでも最近の主流となっているのは、やはり動画。同部署では、静止画にアテンションとなる簡単な動画を入れる場合はAdobe Expressで、15〜30秒の完全な動画の場合はPremiere Proを使用して編集を行っています。
Premiere Proの使用感について佐藤さんは、「動画の制作は、スタジオの手配も、撮影も、編集もすべて自分たちで行っています。基本的にはスマホで撮影して、Premiere Proに取り込んで編集するのですが、どうしてもハイエンドな機材で撮影したり、録音したりするわけではないので、色味や音声などの調整は編集のほうでカバーするようにしています。Premiere Proにはカラーやオーディオを補正するための機能がひと通りそろっているので、そこはすごく助かっています」と話します。
また、動画コンテンツの制作の割合が増えていくなかで、佐藤さんは次のような懸念をしまします。「皆がPremiere Proを使いこなせるわけではないので、やはり編集作業に大きな比重がかかってくると思います。ただ、うちの部署に限ったことではなく、動画編集に興味を持っている人はたくさんいるので、Adobe Expressでも15〜30秒くらいの動画が作れるようになると、皆が使い始めやすくなるのではないかと思っています」
スマホで撮影した動画素材を読み込み、カット編集からカラー補正、オーディオ調整、テロップ作成までを全てPremiere Proで行なう
Creative Cloudグループ版の活用により完全内製化を目指す
Creative Cloudグループ版の導入により、組織全体におけるクリエイビティの底上げと、各部署の業務効率向上とコスト削減を実現しているDINOS CORPORATION。そのなかで、内製化をスタートさせたばかりの家具・収納部のお二人に、クリエイティブに対する自身の思いと、今後の展望について伺いました。
杉本さんは、「Adobe Expressを毎日ちょっとずつ触って、できることがちょっとずつ増えて、だんだん自分のイメージに近い画像ができるようになってきたという実感を持てるようになり、今まで全く関わりのなかった画像編集やデザインの、ほんの一歩を踏み出せたような気がしています。今は撮影指示のための画像を作ることで精一杯ですが、いずれはPhotoshopも使ってもっと先のこと、例えば以前からある商品の写真の背景を変えて、全く新しいイメージに作り変えてみるとか、そうすれば再度撮影をしなくても数日あればできてしまうので、時間やコストをだいぶカットできます。ゆくゆくは新しい商品の写真も撮影なしで作れるようにしたい、それが将来的な目標ですね」と話します。
最後に、大谷さんはこう締めくくりました。「内製化といっても、我々もまだ始めたばかりで試行錯誤の段階ですが、いずれは完全に内製化することが目標でありますし、理想の形であると思っています。もちろんExpressだけで完全な内製化は難しいですが、少しずつ使い込んでいくうちに、クリエイティブの知識や技術、あるいは楽しさを覚えるようになり、それがPhotoshopやPremiere Proを使うきっかけにもなります。なので、最初から無理とか、関係ないとかという意識を持たずに、自分のペースで、自分のスキルに合ったツールで、クリエイティビティを高めていければ良いかなと思っています。我々が使っているCreative Cloudのなかには、そういったツールがそろっているわけですから」
