企業のAI活用、その先にある創造的な働き方への挑戦| Acrobat Tech Talk
Acrobat Tech Talk は、ドキュメント資産の活用に向けてAI導入を検討している企業や行政機関の関係者が、アドビ東京オフィスに集まり情報交換を行うイベントです。第2回となる2025年2月のAcrobat Tech Talkでは、米国アドビ本社からドキュメント製品群のプロダクトマーケティングディレクターである山本 晶子が来日し、米国における「ドキュメント × 生成AI」の最新動向を解説。海外の顧客事例を交えながら、2025年2月に日本語対応したアドビのAIサービスであるAcrobat AIアシスタントが業務改善や課題解決にどのように役立つかを紹介しました。また、アドビ株式会社ドキュメントクラウド戦略部 ソリューションコンサルティング部マネージャーの倉林 則之から、具体的なプロンプト例を提示しながら AI のユースケースを紹介し、目的に応じた生成 AI の使い分けの重要性について説明しました。
さらに、Adobe Acrobat の製品スペシャリストによるライブデモセッション も行われ、参加者の業務プロセスや課題について意見交換を行いながら、Acrobat AI アシスタントによるソリューションを実演 しました。
AIのビジネスへの影響と可能性
冒頭のセッションでは、企業がAIを活用することで創造的な働き方を実現する方法について山本が解説しました。 アドビの調査によると、マーケティングおよびカスタマーエクスペリエンスのリーダーの89%が生成AIが顧客体験をパーソナライズするのに役立つと考えています。 また、2024年のGartner調査によれば、AIの活用により従業員は週に3.6時間を節約できるとされています。 さらに、CIOの74%「AIが業界に大きな影響を与える」、57%が「企業のAI戦略とビジョンのリードを担っている」と回答しました。これらのデータからも、AIがビジネスに与える影響の大きさと可能性が明らかです。
生成AIを採用する際には、データのプライバシー、知的財産、セキュリティの確保が重要です。企業はこれらの課題に対応するため、慎重な戦略立案が求められます。アドビの調査によると、PDFは企業のSharePointストレージで最も使用されているファイル形式であり、Outlookで受信するファイルの40%がPDFです。現在、3兆以上のPDFがメールやクラウド、ウェブ上に存在しており、企業はデータの安全性を確保しながら、文書管理の効率化を進める必要があります。

Acrobat AIアシスタントの活用事例
Acrobat AIアシスタントの活用事例として、以下のような事例が紹介されました。
まず、インドの大手ITサービス企業TCSは、大規模なグローバルイベントにおいてセッション要約を即時配信し、参加者のエンゲージメントを向上させています。また、ドイツの大手自動車メーカーは、技術文書の分析とレポート作成にAIアシスタントを活用し、組織の意思決定を支援しています。さらに、米国の大手出版社では、書籍のテーマレビューやレイアウトアイデアの生成を自動化することで、デザインチームの作業効率を向上させています。
加えて、社内事例として、アドビのマーケティングチームがブランドガイドラインのレビューを通じ、重要情報の要約を迅速に行い、マーケティング戦略の策定を効率化しているケースも紹介されました。
Acrobat AIアシスタントは、使い慣れたインターフェースですぐに利用でき、ハルシネーション(誤情報)を抑えるアトリビューション機能を搭載。さらに、データは機械学習には使用されず、12時間後に削除されるため、機密文書も安心して扱えます。これにより、各部門での煩雑な文書作成・レビュー作業が大幅に短縮され、従業員は創造的な業務に集中できるようになります。山本は、煩雑な文書業務の時間を短縮し、その時間を新しいアイデアや戦略創出に使うことで、ビジネスの成長に繋がると強調しています。
2025年2月には、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語などの言語に加え、日本語版も提供開始。これにより、日本企業の業務効率化がさらに加速すると期待されています。

目的やフェーズに応じた生成AIツールの使い分け
続いてアドビの 倉林から、Acrobat AIアシスタントのデモを通じてユースケースの紹介が行われました。契約書のチェックやリスク評価、長文や複雑な資料の要点把握、必要項目の抽出などのプロセスにおいて、AIアシスタントがどのように活用できるかが具体的なプロンプト例を用いて示されました。
多数の生成AIツールがある中で、それらの使い分けが必要であることも強調されました。たとえば、膨大なデータソースからアイデアの種を見つけ、関連付けて広げる段階(発散フェーズ)と、ピックアップした情報の裏付けを取り、価値のある情報やアイデアを採用する段階(収束フェーズ)では、活用すべきツールが異なります。 また、それぞれの生成AIツールの回答傾向の違いについても言及され、特定の結果に依存しない柔軟な対応が求められることが強調されました。各ツールはそれぞれ異なる能力を持っており、これらを適切に使い分けることで、より効果的な情報収集と分析が可能となります。

講演後にはテーブルごとに分かれてのインタラクティブなデモセッションが行われ、参加者とアドビの間で、具体的なユースケースや導入に向けた課題について議論が交わされました。特に関心が寄せられたのは、AIアシスタントのチャットログ共有やPDFの情報抽出、表や図のテキスト処理の正確性などです。
また、校正や問い合わせ対応、経費精算の効率化、ファクトチェックなど、幅広い業務への適用の可能性が議論されました。実際にAIアシスタントを操作した参加者からは、「活用イメージが具体的になった」「業務効率化の可能性を感じた」との声が寄せられました。
今後のAcrobat Tech Talkでは、より具体的な活用事例を紹介予定です。ドキュメント活用の新たな可能性を探るため、ぜひ今後のイベントにもご注目ください。
講演の様子
デモセッションの様子

ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました