中高生がAdobe Expressで福祉車両のプロモーション動画制作に挑戦!〜産学協同ワークショップ
Adobe Expressを使って、中高生が福祉車両のプロモーション動画を制作するワークショップが2025年2月23日(日)、トヨタハートフルプラザ横浜で開催されました。このワークショップは、アドビとウエインズトヨタ神奈川株式会社、学校法人神奈川大学附属中・高等学校、学校法人岩崎学園による産学協同の取り組みで、神奈川大学附属中・高の生徒12人に岩崎学園の横浜デジタルアーツ専門学校の学生6人がサポートに入り、6グループに分かれて動画制作に挑戦しました。
福祉車両と映像制作の基本を学ぶ
福祉車両というのは、車椅子や身体の不自由な人が使いやすいように作られた自動車のことで、助手席への乗降をサポートするタイプや車椅子のまま乗降できるタイプなど、ニーズに応じてさまざまなタイプがあります。会場となったトヨタハートフルプラザ横浜は「ウェルキャブ」と呼ばれるトヨタの福祉車両専門の展示場。参加者は、はじめにスタッフから日本の超高齢化の現状や福祉車両のタイプについてレクチャーを受け、フロアに出て実車で各種機能を体験しました。
初めて福祉車両を体験する参加者。質問もしていた
続いて、プロの映像クリエイター 平沢健次氏から実例を元に企画の立て方や動画の構成を考える手順を学びます。撮影の仕方についても、アングルやカメラワークなどの基本を教わりました。
スマートフォンを手にカメラワークを練習
グループワークで企画とコンテ制作
知識をつけたところで、いよいよプロモーション動画制作のグループワークに入ります。神奈川大学附属中・高等学校 校長の小林道夫先生は、「ただ車を紹介するというのではなく、コンセプトが大切です。どのようにして魅力的に伝えるかを考えてください」と呼びかけ、参加者はグループごとにAdobe Express上のワークシートを共同編集しながらディスカッションを進めました。
最初のうちはターゲットや目的が漠然としているグループが多かったようですが、次第に絞り込んで周りと差別化するポイントを見つけていきました。「親が老人ホームに入った家族を対象にしよう」とか、「40〜50代のまだ困っていない人に当事者だと思わせるにはどうしたらいいかな……」、「この場合、施設向けの車の情報は刺さらないよ」などの声が聞こえてきます。企画に続いてコンテも考え、「これだけで30秒終わっちゃうな……」、「グラフを出してもいいかも」などと相談しながら、起承転結を意識して構成を詰めていきました。
企画書やコンテのワークシートはAdobe Expressで作成。共同編集で作業した
撮影とAdobe Expressによる映像編集作業
企画がかたまったところでグループごとに各自のスマートフォンで撮影に入ります。教わったばかりのカメラワークを意識しながら、客観的な視点で撮ったり利用者の視点で撮ったりいろいろな手法を試しています。また、メンバーがレポーター役をしたりお年寄りの役を演じたりと演出の工夫をしている様子もあり、どのグループも楽しそうに撮影を進めていきました。
考えたばかりのコンテに沿って、展示場のあちこちで撮影を進める
撮影が完了したグループから動画の編集作業を始めます。Adobe Expressでの動画編集方法は小林先生が簡単に紹介しただけですが、操作方法が直感的で機能が厳選されていることもあり、皆さん戸惑うことなく編集していきます。作業中に活躍していたのがAdobe Expressの共同編集機能です。参加者に聞いてみると、「相手の編集箇所はもちろんカーソルも見えるので、わかりやすくて驚きました。同期のスピードが本当に早くてとても使いやすかったです」と大好評でした。
同じ画面で相談しながら編集したり、共同編集機能で複数のパソコンから同時に編集したりして制作を進めた
また、「BGMや素材もたくさんあってとても便利でした。“クール”と入れるだけでぴったりの曲がすぐ見つかりました」という声も。Adobe Expressの便利な機能を最大限に利用して、限られた時間ながらどのグループも無事、1分程度の動画を完成させることができました。
さまざまなタイプのプロモーション動画が完成!
最後に各グループの発表となり、企画のポイントと共に完成したプロモーション動画が披露されました。動画のコンセプトは、例えば「ストーリー性を持たせて介護を考える世代に興味を持ってもらう」、「10〜20代向けに福祉車両のメカ的なかっこよさを伝える」などさまざまです。中には「親を介護する世代に向けて、車椅子生活の親を旅行に連れて行き親孝行するというストーリーで興味を持ってもらう」というCMの提案も。これは生徒自身の祖父が介護が必要になった実体験が発想のきっかけになったそうです。このグループは動画に加え、福祉車両をレンタカーとして体験してもらうサービスなどを展開する提案もしました。
完成したプロモーション動画のプレゼンテーション。コンセプトも動画の構成もグループによってさまざま
動画の編集にもそれぞれ工夫があり、キャプションやイラスト、ロゴの入れ方、ナレーションやBGMによる音の演出などにグループの個性が出ます。ターゲットに応じて縦型か横型かも検討していて、「(動画のターゲットにした)50代はInstagramではなくYouTubeだと思うので横型にしました」という説明には会場から笑いが起きる一幕も。講師の平沢氏とウエインズトヨタ神奈川株式会社 まちいちばん支援部 部長の宮石真希子氏が各グループの作品についてコメントし、ユニークな視点や編集の工夫を称えました。
映像クリエイター 平沢健次氏(写真中央)
ウエインズトヨタ神奈川株式会社 まちいちばん支援部 部長 宮石真希子氏(写真中央)
学校の外に飛び出すワークショップの価値
参加者の皆さんに感想を聞いてみると、充実した様子で「楽しかったです」という声がたくさんあがりました。「専門学校の先輩と一緒に楽しく活動できたのがとてもよかったです」、「中学生も高校生の自分も一緒にできて中学生もたくさん意見を言ってくれました」、「大勢の大人の前で発表するというのは初めてだったのでよい経験になりました」など、新鮮な経験になった様子です。
講師の平沢氏は、「ひとりひとりに考える力があり、できあがった動画も全然違うもので、クリエイティブな力は無限大だと感じました。これを機会に生徒の皆さんが映像を創ることに興味を持ってくれるといいですね」と期待を寄せます。また、ウエインズトヨタ神奈川の宮石氏は、「生徒のみなさんがいろいろなコンセプトで動画を作ってくれてプレゼンテーションも飛び抜けて上手で、とても驚きました。Adobe Expressは簡単に使えることを実感したので、私たちが実施しているお子さん向けのワークショップでも使えそうです」と話します。
神奈川大学附属中・高と横浜デジタルアーツ専門学校からの参加者の皆さんと小林先生
小林先生は中学1年生から高校3年生までの参加生徒たちの様子を見て、「学校の中だけで学べることには限界があるので、今回のように本物を見て実際に働く人の話を聞いて、直接アドバイスを受けるということは何にも代えがたく、生徒が自分ごととして考える良い機会になりました」と全体を振り返りました。
今回の産学協同ワークショップを経験した皆さんが、これをきっかけに社会の見方を広げ、ますますクリエイティビティを発揮していくことが楽しみです。
(文:狩野さやか)