精密なディテールの作成やリソース管理がこれまで以上に簡単になった Substance 3D Painter 11.0 公開
出典: Damien Guimoneau
GDC 2025 に合わせて発表された Adobe Substance 3D Painter の最新バージョン 11.0 は、より速く、より正確に芸術的なビジョンを実現できるように設計された、パワフルなアップデートです。この記事では、リソースの自動更新、新しく追加された Filled path ツール、パスの精度と柔軟性の向上、ベイク作業用の新しい自動ケージを始めとする新機能を紹介します。
リソースの自動更新
新しい自動更新のワークフローでは、ライブラリやプロジェクトで使用しているリソースを常に最新に保つことが可能です。この機能を有効にすると、Painter が、ディスク上のリソースに対する変更を監視します。そして、最新のリソースを自動的に読み込んで、ライブラリやプロジェクトを更新します。
具体的には、以下のような機能が提供されます。
自動更新の有効化
アセットウィンドウの右下に、自動更新の設定ボタンとメニューが追加されました(小さな二つの矢印のアイコンです)。このオプションをオンにすると、アセットパネルはライブラリを監視し、リソースの再読み込みを行うようになります。
プロジェクトのリソース更新
リソースの再読み込みだけでは、レイヤースタック、表示設定、シェーダー設定などの、プロジェクト内で使用されているリソースは更新されません。これを有効にするには、「Resourses used in project(プロジェクト内で使用されているリソース)」オプションをオンにします。
更新頻度の設定
Painter がリソースの更新をチェックする頻度は、分単位で設定できます。0 分に設定すると、Painter は、数秒ごとに更新を確認します。ただし、この設定は、パフォーマンスの問題につながる可能性があります。
アプリケーションが再フォーカスされたタイミングでも、自動更新が行われます。
手動のリソース更新
自動更新メニュー下部にある専用ボタンを使用することにより、手動で更新プロセスを起動できます。これは、自動プロセスが開始されるのを待つよりも、ずっと便利な場合があります。
不一致やエラーのログを表示
リソースを更新するとき、旧バージョンと新バージョンの違いによっては、問題が発生する可能性があります。例えば、パラメータが変更されたり削除されたりしていると、テクスチャリングの結果が大きく変わったり、問題が起きたりする可能性があります。そのため、「Skip asset when their parameters mismatch(パラメータが一致しないアセットをスキップ)」のオプションは、デフォルトで有効化されています。発生した問題は、ログウィンドウに表示されます。問題が報告されても更新を強制したい場合は、このオプションを無効にします。
プロジェクト管理自動化のための Python API
自動更新ワークフローは Python から利用できます。古くなったリソースを一覧し、それらを置き換えるための新しい関数が追加されています。詳細な情報については、専用のドキュメントをご覧ください。
Filled Path ツール
Filled path ツールは新種のパスツールで、3D モデルのサーフェスにシェイプを作成し、その内側を均一な色で塗りつぶします。パスのメニューから選択できて、パスを閉じると内側を塗りつぶしてくれるため、複雑なパターンの作成に便利です。塗りつぶしは、テクスチャセットの各チャンネルごとに行われます。
このツールには、以下のような機能があります。
サーフェスに自動的に適応
Filled path ツールは、あらゆる種類の表面に適応します。平面の領域だけでなく、ギャップやオブジェクトの境界をまたぐこともできます。
ミラー対称とラジアル対称に対応
このツールは、対称性に関するプロパティをサポートします。これにより、複雑な形状を作成することが容易になります。
容易なパスツールの切り替え
プロパティウィンドウに、異なるパスツールに切り替える新しい手段が追加されました。これにより、いくつかのパスツールを試すことが容易になります。例えば、アウトラインパスを作成し、それを複製して Filled path パスに変換すると、アウトライン付きシェイプを素早く作成できます。
パスツールの改善
このバージョンでは、パスツールの使い勝手を向上させるために多くの改善が行われました。以下は、その具体的な項目です。
パスのプレビュー (Shift+P で切り替え)
パス編集時に、新しい点を追加しようとしたとき、パスがどのように変化するかを示す点線が表示されます。このプレビューは、設定メニューまたは Shift+P キーで無効にできます。
直線と角度のスナップ
Shift キーを押すと、ポイント間に自動的に直線を作成できます。Ctrl キーを押していると、角度スナップが有効になり、幾何学的な形状の作成が容易になります。スナップする角度の設定は、ツールバーのパス設定メニューから行えます。
パスのポイントをメッシュのポリゴンにスナップ
ポイントの配置を容易にする、新しいスナップ機能 (磁石アイコン) が利用できます。これを有効にすれば、3D モデルの頂点にポイントを配置できます。このオプションは、サーフェスやエッジに沿ったパスの作成を容易にします。
スナップの振る舞いは、以下の 3 種類が利用できます。
- 頂点にスナップ
- エッジにスナップ
- エッジの中心にスナップ
この設定は、ツールバーのパス設定メニューで選択します。
パスの自動クローズ
Filled path ツールを使いやすくするため、最後の頂点が選択されている状態で、最初の頂点をクリックすると、自動的にパスが閉じられます。閉じずに選択するには、Ctrl キーを使用します。(この振る舞いは、以前のバージョンと逆になっています。)
パスをコンテンツからマスクにコピー
マテリアルモードで作成したパスをコピーして、「Paste all vertices」を使って、マスクのパスにペーストできます。これにより、マテリアルとマスクの間で、異なるパスを同期できます。
UI の表示/非表示の改善
ビューポート操作 UI のショートカットキー (W, S, D) を使用すると、表示を即座に切り替えられます。ツールバーの専用ボタンからも操作可能です。この変更により、ビューポート内の他のビジュアル(パスのカーブやポイント)を隠すことなく、素早く UI の表示を切り替えられます。
パスの頂点の回転とスケール
複数の頂点を選択したときに、回転とスケールを使用できます。これにより、複数の頂点をまとめて調整したり揃えたりすることが簡単になります。
パス情報をプロパティウィンドウに表示
パスツールを選択すると、プロパティウィンドウ内に新しいセクションが表示されます。そこには、パスの長さ、投影深度、種類を切り替えるスイッチなど、パスに固有の情報やアクションがまとめられています。
タンジェント編集の改善
カスタムタンジェントの編集は、カメラの角度によって困難になることがあります。今回、タンジェントは自身の平面に制約されるように変更されました。
レイヤーのパスリストの表示状態を維持
従来は、ビューポートのパスパネルが閉じている状態でペイントレイヤーやエフェクトを切り替えると、他のレイヤーでもパネルは閉じていました。このバージョンでは、レイヤーを行き来しても、パスパネルは開いたままになります。
選択しているパスにフォーカス
パスを編集中に F キーを押すと、3D モデル全体ではなく、そのパスにフォーカスします。
Backspace キーでパスを削除
Backspace キーで、素早くパスを削除できます。
新しいフィルターとテクスチャジェネレーター
このバージョンでは、いくつかの新しいフィルターとプロシージャルパターンが追加されました。
フィルター
- Stylization
既存のテクスチャを、よりスタイライズされたものに変換する新しいフィルターです。3D 空間でブラシのストロークを模倣し、絵画的な見た目をつくり出すいくつかの効果を適用できます。扱いやすくするために、複数のプリセットが用意されています。
- Quantize
画像内の色数を削減できるフィルターです。上限を決めて、フラットな領域を作成できます。テクスチャのスタイライズにも利用できます。
- Anisotropic Kuwahara
Kuwahara フィルターを適用します。ノイズの削減やテクスチャのスタイライズに利用できます。
- Directional Distance
2D 空間で、指定された方向にピクセルを引き延ばすシンプルなフィルターです。ブラシストロークをぼかしたり、漏れの作成に使用できます。
- Bevel Smooth
Bevel フィルターの新バージョンで、より良い結果とより使いやすいコントロールを提供します。既存の Bevel フィルターに加えての提供です。
- Grayscale Conversion
画像やチャンネルをグレースケールに変換する新しいフィルターです。必要に応じて、RGB の各チャンネルごとに調整できます。
新しいテクスチャジェネレーターとノイズ
- Scratches Generator
改善された引っかき傷のジェネレーターです。ランダムさを制御しつつ、細い糸状のものを生成できます。
- Triangle Grid
接続された三角形からノイズを作成します。ランダムさや滑らかさを調整できます。
- Tile Random
タイルパターンを作成するために仕立てられたテクスチャジェネレーターです。
- Voronoi and Voronoi Fractal Noises
3D ノイズとしては、既に利用可能でしたが、新しいバージョンは 2D バージョンとして使用可能です。タイル敷きや UV スペースのテクスチャ作成に便利です。
Painter で利用できるノイズのほとんどは、Substance 3D Designer の最新版で更新されました。ノイズのパラメータが公開され、編集しやすいようにグループにまとめられています。
ベイク時の自動ケージ(実験的機能)
ハイポリメッシュをローポリメッシュにベイクする際、ケージモードとして、新しい Automatic オプションを選択できます。この新しい手法は、不適切な個所が発生しないようにしつつ、ハイポリメッシュに最もフィットするケージのメッシュの自動生成を試みます。
ベイクの共通パラメータの新しい設定
ベイクの共通パラメータが更新され、ケージパラメータを、以下の 3 つのオプションから選択できるように変更されました。
- Distance-based:フロント/リアの距離設定
- Automatic (experimental):自動ケージ
- Custom file:カスタムメッシュファイルをケージとして読み込む
注:この機能は実験的なもので、将来のバージョンではアルゴリズムの改善を予定しています。結果の品質やバグの可能性がある点についてのフィードバックをお願いします。
Mac OS での Metal レンダリング
このバージョンにおける Mac プラットフォーム固有の変更点があります。
OpenGL に替えて Metal グラフィックス API を使用
新しい Painter は、Mac で、ビューポートのレンダリングとテクスチャ計算に、Metal グラフィックス API を使用します。この変更は、アプリケーションのパフォーマンスと安定性を大幅に向上します。MacOS では OpenGL が非推奨になったため、将来の新機能の統合にも寄与します。
Intel 製 CPU を搭載した Mac のサポート終了
このバージョンから Intel CPU を搭載した Mac との互換性がなくなりました。ARM アーキテクチャ(M1, M2 など)のみがサポートされます。
その他の更新
その他にも、このバージョンにはちょっとしたいくつかの変更があります。
新規 Fill Layer/Effect は Base Color チャンネルのみ有効
新規に Fill Layer/Effect を作成すると、デフォルトでは Base Color チャンネルのみ有効になります。(この変更は、リソースをドラッグ&ドロップして Fill Layer/Effect が作成された場合には適用されません。)
これはコミュニティからのフィードバックに応えるもので、不要なチャンネルの計算を避けることにより、パフォーマンスが改善されます。高解像度や UV タイル作業時における反応の改善を感じられるはずです。すべてのチャンネルをすばやく有効にするには、ALT キーを押しながら Base Color ボタンをクリックします。
テクスチャ書き出し時の UV タイル名設定
テクスチャセットリストウィンドウでは、UV タイルにカスタム名を設定できません。しかし、専用の $uvTileName タグをエクスポートプリセット内で使用すると、カスタム名を取得できます。
この新機能は、エクスポートの際に、UDIM 番号を特定の名前に置き換えることを可能にします。
Dock ツールバーの新しい書き出しボタン
他のアプリケーションに簡単に送信できるアクションが、専用ウィンドウに移動しました。アプリケーション右側にある Dock ツールバーから利用できます。
コピー&ペースト時のレイヤーやパス名の改善
複製やコピー&ペーストしたレイヤーとパスを命名する規則が改善されました。より一貫性があり、予測しやすい名前になっています。