企業のAI活用、その先にある創造的な働き方への挑戦

Acrobatの生成AI機能、日本語版がいよいよ登場

どのような企業でも業務上で必要な文書は多数あり、それらは企業の財産といえる。だが、膨大な文書を読み込んでレビューしたり内容を要約したり、複数の文書から新しいインサイトを得るような業務は負担が大きい。文書業務にかける時間を、アイデア創出のような創造的な業務ができる時間にシフトし、ビジネスを変革していくにはどうしたらいいか。そのヒントになるのが、PDFを開発したアドビのAcrobatの生成AI機能「Acrobat AIアシスタント」である。「NIKKEI生成AIシンポジウム」でアドビ デジタルメディア事業部 Document Cloud プロダクトマーケティングディレクター 山本晶子氏が語った内容をもとに、ユースケースを交えて紹介しよう。

文書は「資産」、Acrobatの生成AI機能とは?

●生成AIの現状と期待

生成AIの話題はIT系ニュースだけでなく一般誌やテレビでも取り上げることが増えており、日々関心が高まっている。山本氏は、AIを取り巻く状況についてこう語る。

「マーケティングやCX(顧客体験)の担当者の多くは生成AIが顧客体験のパーソナライズに役立つと考えていますし、ほとんどのITリーダーはAIをエージェント(業務をサポートしてくれる便利な秘書)として活用することで人間がよりクリエイティブな業務に頭脳を使えると考えています。AIに対する期待値が変わってきていることを実感しています」。

生成AIへの期待が高まる中で、どんな業種や業務でも「文書」はなくなることがなく、AI活用の一つの鍵になるというのがアドビの見立てだ。「ビジネス文書には、データやアイデア、実行体験などの知見が詰まっています」(山本氏)。過去から現在までの知見が詰まった「資産」が文書となり、ビジネスを成功へと導く。

アドビ デジタルメディア事業部 Document Cloud プロダクトマーケティングディレクター 山本晶子氏

●「Acrobat AIアシスタント」登場

そこで、文書という「資産」を生かせる「Acrobat AIアシスタント」の日本語版が、このたびリリースされた。文書は「資産」であるものの、多くのデジタルドキュメントを前にして、その内容を素早く理解したり、組み合わせて

再活用したりするのはハードルが高いと、感じている人が多いのも事実。

山本氏は、「アドビのAcrobatが提供する最新機能の『Acrobat AIアシスタント』を活用することで、デジタルドキュメントのコンテナとして最も多く使われているPDFやその他の文書を、生成AIと組み合わせることでより再活用できるようになります」と語る。

デジタルドキュメントとは、従来の紙による文書を電子機器による表示に置き換えたもので、アドビが開発したPDFもデジタルドキュメントの一つだ。もちろん、マイクロソフト社が提供するWord形式やPPTX形式のファイル、txt形式のファイルもデジタルドキュメントである。このようなデジタルドキュメントに多様なビジネス知見が含まれるというのは、多くの人にとって異存がないことだろう。

2025年2月12日にリリースされた日本語版Acrobat AIアシスタント

「Acrobat AIアシスタント」の特徴とは?アドビとAIの技術の融合

では、Acrobat AIアシスタントは、どのような特徴があるのか。山本氏は「文書に関わる煩雑な作業に対して、対話形式で人間のエージェントとして働いてくれます」と、その概要を説明する。

●PDFに限らないドキュメントファイルに対応し、1ファイルではなく複数文書を横断して解読

まず、複数の文書から概要や要点を素早く理解する作業を手助けしてくれるのがAcrobat AIアシスタントの一つの特徴である。PDFはもちろん、WordやPowerPointといったOfficeの文書ファイル、TXTやRTFといったテキスト形式のファイルなどが扱える。

また、Acrobat AIアシスタントは、PDFの内容を理解し、複数文書を横串に通して必要な情報を抜き出すことができる。これを可能にしているのはPDFを開発したアドビが長年にわたって蓄積してきた文書関連の技術がベースになっているからだ。アドビ独自の文書解析エンジンが力を発揮している。PDFを開発した会社ならではの技術であり、もちろん紙をスキャンしたPDFでもWordからエクスポートしたPDFでも、自然な形で内容を抽出して生成AIのエンジンに渡すことが可能になる。

この高度な文書解析能力により、ユーザーは異なる形式のファイルを意識することなく、必要な情報をシームレスに取得できる。例えば、契約書・議事録・仕様書などが異なるファイル形式で分散していても、Acrobat AIアシスタントが横断的に分析し、関連する条項や決定事項を瞬時に抽出する。これにより、業務の効率が飛躍的に向上し、情報の見落としを防ぎつつ、より精度の高い意思決定が可能になる。また、膨大な資料を読む負担を軽減し、要点を簡潔にまとめることで、知識労働の質を高める効果も期待できる。

●これまで難しいとされていた文書内の「表」の読み取りも可能に

もう一つの特徴は、Acrobat AIアシスタントの高度な文書の読解技術である。例えば、PDF内に含まれる表は多くの場合、キレイに読み取ることが難しい。例えば、段組が2つ3つある文章や、表中に線や段落が複雑に構築されているような貸借対照表を、適切に機械が理解して読み取ることは容易ではない。しかし、Acrobat AIアシスタントではこれまでアドビが蓄積してきたPDFの読み取り技術の結晶により、高い精度で読み取ることができるのである。

●様々なOS、デバイスに対応

WindowsとMacのどちらのOSにも対応するほか、Google ChromeやMicrosoft Edgeといったブラウザの拡張機能からもAcrobat AIアシスタント機能にアクセスできる。また、Acrobat Readerモバイル版でもAcrobat AIアシスタント機能が利用でき、iOSとAndroidのAcrobatアプリ上から活用することも可能だ。

「Acrobat AIアシスタント」が活躍するユースケース

アドビの文書にまつわる技術とAIが融合した「Acrobat AIアシスタント」は、どのような場面で力を発揮するのだろうか?業務の具体的なシーンを挙げると、特に次のようなケースにメリットがある。

●法務部:契約書のレビュー業務

ベンダー契約や注文書まで、契約の機会は消費者や企業にとって日常茶飯事。ほとんどの契約文書は長くて複雑なため、内容を理解するのは難しく、時間もかかる。実際、アドビによる2025年1月に行った最新の調査(https://blog.adobe.com/en/publish/2025/02/04/top-5-takeaways-from-new-contracts-survey-most-people-sign-before-they-read)では、消費者の約70%がすべての条件を知らずに契約書や合意書に署名しており、中小企業の経営者の64%が内容を理解している自信がないため契約書への署名を避けたと回答している。

Acrobat AIアシスタントの契約インテリジェンス機能を活用することで、こうした課題が解決する。事業主はベンダー契約の重要な日付をすばやく特定するなど、契約の条件で交渉したい箇所について交渉するためのポイントを簡単に理解することができる。その結果、法務担当者は無駄な時間を削減し、より自身の能力を活かすべき仕事に十分な時間を確保できるようになる。また、営業や財務チームは法務から早くレスポンスを得ることができるようになるため、販売契約などの確認を迅速化することが可能になる。

●IT情報システム部:システム仕様書や運用マニュアルの迅速な解析と活用

例えばIT情報システム部では、膨大なシステム仕様書や運用マニュアルを読み込む場面がある。その際、プロジェクトに関連する膨大な文書を横断的にAcrobat AIアシスタントが解析し、必要な情報を瞬時に抽出するため、システム導入時のリスク評価やトラブルシューティングが格段に効率化される。これにより、担当者は情報の整理にかける時間が削れて、より高度なシステム戦略の立案やセキュリティー対策の強化に注力できるようになる。

●研究開発部:技術文献や特許情報を活用した新製品開発の加速

研究開発では、社内の技術文献や過去の研究データ、特許情報、各種機関が発表している研究文献・データなどを一元的に分析することが多い。その際、Acrobat AIアシスタントで知りたい内容を表にして把握したり、複数文書を横断して求めている知見を抽出できたりするため、新製品や新技術のアイデア創出がよりスムーズに行える。これにより、従来の文献調査にかかる時間を大幅に短縮でき、競争力のある技術開発を迅速に進めることが可能になるだけでなく、過去の知見を最大限に生かした研究戦略の立案が容易になる。

「これまで3時間も4時間もかかっていた文書の準備が、Acrobatで表示するPDF上でAcrobat AIアシスタントと会話することで大幅に短縮できます。すると、印象的なプレゼンテーションの作り方や、新しいアイデアの創出といった、高付加価値な作業に人間は時間を使えるようになるのです」と山本氏は強調する。そのほか、様々なシーンでのユースケースは以下の図版を参考にしていただきたい。

Acrobat AIアシスタントの職種別活用ユースケース。複雑な文書作成の時間を短縮、ドキュメントに含まれる資産を有効活用

透明性とセキュリティーの確保にも配慮

様々な業務に活用できる「Acrobat AIアシスタント」だが、企業内での生成AIの活用においては、セキュリティー面などのリスクを懸念して躊躇(ちゅうちょ)するケースも少なくない。山本氏は「セキュリティーやコントロールについての注意は不可欠です。どのような形で生成AIが作られているか、透明性を持ったアプローチが求められます。お客様のデータが生成AIのトレーニングに使われていないか、提供したデータをどのぐらい保持するか、などを厳格にコントロールする必要があります」と指摘する。

●ハルシネーションに対処するアトリビューション機能

Acrobat AIアシスタントでは、こうしたセキュリティーへの対策も考慮している。まず、Acrobat AIアシスタントは基本的にAcrobatに読み込ませた文書の中からだけ回答を生成する。従って、自身で絞ったデータベース(読み込ませた文書のみ)での生成AI活用が実現できる。もちろん、一般的な質問にも回答することができるが、その場合は「この文書には記載されていませんが、一般的には〜」といったような回答がもらえるため、情報の信憑性を意識したAI活用ができる。また、生成AIの回答がどの文書のどの段落・文章を根拠にしているかの確認が瞬時にできる引用元参照の機能を備えており、ハルシネーション(AIが事実とは異なる情報を生成する現象)による誤回答などの不安を減らした生成AIの活用が可能である。

●データは機械学習には使用しない

さらに、「Acrobat AIアシスタントで読み込んだPDFの情報は一時的に暗号化されクラウド上に保存されますが、12時間で削除されます。つまり、アドビは読み込まれたPDFを学習で利用するといったことは全くありません。AIとチャットした内容ももちろんアドビは学習しませんし、作ったプロンプトを他の人に使われない、といったチャット履歴に対する制御も可能です。従って、扱いづらい社内の機密文書でも安心してご利用いただけます。また、社内ガバナンスのポリシーに合わせて、だれにAIアシスタントの機能を利用させるかといった割当をコントロールする機能もあります」(山本氏)。

つまりアドビでは、生成AI機能の提供に当たって透明性の確保に注力している。それにより、生成AI利用時にありがちなリスクを低減しながら、デジタルドキュメントの有効活用というベネフィットが提供できるのだ。

根拠を明示する引用元を参照する機能を備える

Acrobat AIアシスタントがもたらす未来

このように、文書にまつわる業務を圧倒的に効率化するAcrobat AIアシスタントだが、新しいソフトをインストールすることなく、すでに利用している有料版Acrobatはもちろん、無料版のAcrobat Readerで利用できるメリットは大きいだろう。

また、WebブラウザでPDFをアップロードして生成AIと会話するといった一手間は必要なく、見慣れたAcrobatのUIでPDFと会話をしながらAIの恩恵を受けることができる。使いこなすためのスキルを習得する必要もないほか、前出のように引用元を確認しながら作業を進めることができるため安心感も高い。

しかもAcrobat AIアシスタントは、英語版やフランス語版に多言語対応をしている。ここに日本語版が登場したことで一気に活用の幅は広がった。Acrobat AIアシスタントがもたらす未来について山本氏は「煩雑な文書業務の時間を短縮し、創造的なことに時間を使ってビジネスの成長につなげてもらいたいです」と語った。

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