Illustrator の生成ベクターから始める効率的なドット絵の制作手順:現場で役立つ Adobe Firefly 第 7 回
本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用ノウハウやヒントをお届けします。第 7 回は、コネクリが Adobe Illustrator の「生成ベクター」機能を使って、効率的にドット絵を作成する方法を紹介します。
上の動画と、この記事の内容は同じです。お好みに合わせてご覧ください。今回使用しているサンプル(ZIP: 190 KB)はこちらからダウンロードできます(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)
ドット絵の作成に生成ベクターを活用する
近年、レトロ風デザインの流行りとともに、MV やポスターなどのグラフィックの装飾に、ドット絵があしらわれているのをよくみかけます。
ドット絵をデザインに取り入れようと、ゼロから作成する場合、慣れていないと、シンプルなオブジェクトでも描くのが難しいと感じる方は多いかと思います。
そこで役に立つのが Illustrator のベクターを生成する AI 機能です。イラストを描く際にラフ(下描き)から始めるように、ドット絵もベースがあると難易度が大幅に下がります。そこで今回は、生成したベクターをベースに、ドット絵を効率的に作成する手順を紹介します。
生成ベクターをデザインに活用するとき、生成するたびにテイストがばらつき、デザインの一貫性を保ちにくいことが課題になります。ドット絵にすることにより、テイストごとの違和感が軽減するため、デザインに使いやすくなるというメリットもあります。
今回紹介する手順に慣れると、短時間でさまざまなドット絵を作成できるようになります。
制作の流れ
- 生成ベクターでベクターアートを生成
- [ラスタライズ]を適用
- [モザイクオブジェクト]を適用
- [ライブペイントツール]で補正
- 背景の不要なドットを削除
- 黒縁を追加
生成ベクターでベクターアートを生成
コンテキストタスクバーから[生成ベクター(Beta)]を選択します。
※コンテキストタスクバーが表示されていない場合は[ウィンドウ]メニューから[コンテキストタスクバー]を選択します。
[生成ベクター(Beta)]ダイアログが表示されたら、[プロンプト:ライオンの顔]と入力し、[コンテンツの種類:被写体][ディテール:最低][スタイル:なし][効果:フラットデザイン][カラーとトーン:なし]と設定して、[生成]をクリックします。
出力のバリエーションが[プロパティ]パネルに表示されたら、その中からイメージに近い候補を選択します。最初のバリエーションは、カンバス上に自動的に表示されます。
後の工程でドット絵にする際の確認用に、オリジナルを残しておきます。
[選択ツール]でオブジェクトを選択して複製します(Mac:option+ドラッグ/Win:Alt+ドラッグ)。複製したオブジェクトを、これからドット絵にしていきます。
[ラスタライズ]を適用
[オブジェクト]メニューから[ラスタライズ]を選択します。
[モザイクオブジェクト]を適用
[オブジェクト]メニューから[モザイクオブジェクトを作成]を選択します。
[タイル数]を[幅:16]として ❶、[比率を使用]をクリックします ❷。[高さ]❸ の値が変わったのを確認したら、[ラスタライズデータを削除]をチェックして、[OK]をクリックします。
※タイル数の[幅]を設定した後に[比率を使用]をクリックすると、タイル数の[高さ]の値が自動的に変わります。この変更により、[モザイクオブジェクトを作成]適用後の 1 マスの縦横比は、正方形に近づきます。
適用後のイメージがこちらです。
[ライブペイントツール]で補正
[ライブペイントツール]でドット絵を補正します。
[ライブペイントツール]を選択し、[Mac:option/Win:Alt]キーを押すと[スポイトツール]に変更されます。スポイトで色を拾いながら ❶、ドットを補正します ❷。
調整後のイメージがこちらです。
不要なドットを削除
背景の不要なドットを削除します。
ライブペイントグループを拡張するため、[オブジェクト]メニューから[分割・拡張]を選択します。
[ダイレクト選択ツール]で不要な背景のドットを選択し ❶、選択メニューから[共通/カラー(塗り)]を選択します。すると、選択した色と同じパスが選択されます ❷。
※このとき生成したオブジェクトや補正したドットなど、残すべきオブジェクトがある場合は、それらを選択から外します。
[Delete]キーで消去します。
黒縁を追加
アピアランスで黒縁を追加して、ドット絵の印象を強調します。
オブジェクトを選択し、[アピアランス]パネルで[新規線を追加]を選択します❶。ドラッグして[内容]の下に移動、線の色を黒にして、幅を太くします。❷。
こちらで完成です。
補足
[生成ベクター(Beta)]ダイアログでは、[効果]の[ピクセルアート]を指定して生成することができます。
この場合、ピクセルアート風の出力が生成されますが、線や角が歪んだものになるため、今回はより精度の高いモザイクオブジェクトを使った方法を紹介しています。品質的に問題の無い場合は、[ピクセルアート]を指定して生成するのが一番楽です。
まとめ
Illustrator の生成ベクターには、アートを短時間で量産できるというメリットがあります。これをドット絵作成のベースにすれば、ゼロから描くのに比べて、手間も難易度も大幅に下がります。
また、今回紹介した手順であれば、ドット絵に加工する過程で、生成結果ごとのテイストのばらつきを軽減できます。
生成したアートをもとにして、ドット絵を効率的に作成してみましょう。