急成長都市ギルバート(アリゾナ州)の挑戦 ― 生成AIを活用し、創造性と行政サービスの質を同時に高めるまちづくり

アリゾナ州に位置するギルバートは、人口29万2,000人を超える中堅都市でありながら、都市としてのインフラと利便性、そして地域コミュニティとしての温かさの両方を兼ね備えています。全米で経済成長率第1位にランクされており、「家族を育てるのに最適な場所」「中小企業にやさしい地域」「雇用機会に恵まれた町」など、常に全米トップ20に名を連ねています。

こうしたまちの成長を支えているのが、先進的な行政運営を実践する自治体組織です。ギルバートでは、1,800人の職員が日々の暮らしをより良くするために、積極的にテクノロジーとイノベーションを取り入れています。歴史と現代技術が調和するまち、それが「未来型コミュニティ」としてのギルバートの姿です。

「テクノロジーは、住民サービスの向上や暮らしの質を高めるための“差別化要素”だと考えています」と語るのは、ギルバートの最高技術責任者(CTO)であるSasan Poureetezadi氏。「IT部門が中心になって技術を推進するのではなく、できるだけ早く“現場”の手にテクノロジーを渡すことを大切にしています。だからこそ、イノベーションを全庁的に広げ、市民にとって本当に意味のある使い方を見つけることができるのです。」

スマートで安全な未来へのビジョン

ギルバートは、AIがもたらす可能性に特に強い期待を寄せています。

「適切に導入すれば、AIは行政運営と市民サービスを根本から変える“フォース・マルチプライヤー(成果倍増の原動力)”になり得ます」と語るのは、副町長のMary Goodman氏。彼女はテクノロジー導入を含む日々の行政運営を統括しており、町長とともに、AIと先端技術に特化した新たなポジションの創設を後押ししました。そのポジションに就任したのが、Eugene Mejia氏。ギルバートのチーフAI戦略・デジタルトランスフォーメーション責任者として任命された彼は、市場にあるAIツールを調査する中で、すでに町の職員が利用しているAdobe AcrobatとAdobe Expressというアプリに、革新的なAI機能が備わっていることに気づきました。

Adobe Acrobat AI Assistantや、Adobe Fireflyを活用したAdobe Expressのクリエイティブ機能などにより、職員は業務効率を高め、市民サービスの質を向上させる可能性を手にしたのです。

自治体という公共組織にとって、AIを活用するうえで最も重要なのが、セキュリティと法令遵守です。市民の大切な情報を守るためには、安全性に妥協はできません。

「Adobe Acrobat AI AssistantとAdobe Fireflyは、当町が求めるすべての条件を満たしており、市民データの安全性を損なうことなく、安心して利用範囲を拡大することができました」と語るのは、ITカスタマーエクスペリエンスマネージャーのJason Thompson氏です。

Acrobat AIアシスタントで全庁的に業務効率を改善

ギルバートでは、すでにエンタープライズライセンス契約(ETLA)を通じてAdobeの各種アプリケーションを全庁で利用しており、すべての職員の創造性と生産性を高めています。

毎年、数百万ページに及ぶ公文書がAdobe AcrobatでPDF化され、Acrobat Signで最終承認されるなど、日々の行政業務に活用されています。また、Adobe Creative Cloudは、職員と住民とのコミュニケーションを、より一貫性のある、創造的で、効果的なものにしています。

現在では、家庭内暴力対策部門から法執行部門に至るまで、十数の部署がAcrobat AIアシスタントを使い、文書関連業務にかかる時間を大幅に短縮しています。生成された要約や簡単なテキストプロンプト、インテリジェントな引用機能を使って、文書に含まれる情報を迅速かつ容易に把握・分析できるのです。

たとえば財務部門では、過去数年にわたる複数文書の支出情報を比較分析でき、IT部門では、長文の技術レポートを要点を押さえた簡潔なブリーフに要約し、幹部が新技術の本質をすぐに把握できるようにしています。

他の部門では、AIチャット機能を活用して新しいコンテンツの起案にも取り組んでいます。市が新たに「助成金コーディネーター」の採用を決めた際には、人事部門が業界標準と比較しながら、助成金に関する50ページのレポートをAIアシスタントで分析。その内容をもとに、最適な職務記述書を生成しました。

「Acrobat AIアシスタントのおかげで、適切な人材を適切なタイミングで確保できるようになり、人材獲得競争でも優位に立てています」とMejia氏は語ります。「従来なら数か月かけていた調査・作成作業がAIで大幅に短縮され、すぐに優秀な助成金担当者を見つけられました。そのおかげで、市民へのサービス展開を一気に加速できました。」

現在、その助成金コーディネーター自身もAcrobat AIアシスタントを使い、助成金審査のスピードを飛躍的に向上させています。従来は20ページの申請書を1日かけて分析していたのが、今では数分で主要な審査基準、条件、期限、必要アクションを要約可能になり、5倍以上のスピードで処理できます。年間最大80件の助成金審査が必要な中で、住宅支援、水資源保全、消防対応など、住民生活を支える重要な予算を、これまでになく迅速に確保できるようになりました。

「助成金1件あたり、少なくとも40時間分の作業をAIアシスタントで削減できています」とMejia氏は話します。「これは私たちにとって非常に大きな効率化と機会の創出であり、さらに多くの助成金に応募できる体制を整えることができます。最終的には、より良いサービスと地域づくりという形で、市民の皆さんに還元されるのです。」

すべての職員に、創造性とイノベーションを。

明確で魅力的な情報発信は、すべての部署において欠かせない要素です。ギルバートでは、多くの職員がAdobe Expressのスピードと使いやすさに魅力を感じ、目を引くパンフレットや告知文などを、少ない労力で簡単に作成しています。

ブランドガイドラインに沿ったテンプレートや、ストックフォト、音楽、効果音、フォント、グラフィック素材などが揃ったAdobe Expressの豊富なライブラリを活用することで、イベント用のサイン、職員向けワークショップのチラシ、母の日といった季節のSNS投稿まで、誰でも高品質なビジュアルを短時間で制作できます。

さらに、Adobe Expressに搭載されたAdobe Fireflyによる生成AI機能を活用すれば、簡単なプロンプトを入力するだけで、カスタマイズされた目を引くグラフィックを誰でもすぐに作成できます。これにより、専門のクリエイティブチームは、ブランディングやインフォグラフィックといったより高度な制作業務に集中できるようになります。

「AcrobatやExpressといったアドビのアプリケーションへのアクセスを限定的にせず、全庁的に開放し、生成AIの機能を職員全員で活用することで、私たちは市民サービスにおいて最も効果を生む新たなユースケースを見出しながら、イノベーションを全庁に広げています」とCTOのSasan Poureetezadi氏は語ります。「ギルバートというまちを素晴らしい場所にしているのは、ここで働き、暮らしている“人”です。多くの人が関わることで、まちはさらに良くなっていきます。」

なお、本記事の筆者であるHeather Whitlock氏はアドビのディレクターとして、公共機関・金融・医療など主要業界におけるデジタルメディア領域での顧客戦略と成功を統括しています。Adobe Express、Firefly、Acrobatなどの先進技術を活用し、組織の価値最大化と成果創出を支援することを専門としています。アドビ入社以前は、Accentureにてマネージングディレクターを務め、規制業界におけるグローバルクライアント向けに、事業成長、人材戦略、顧客成功を担当していました。

この記事は2025年4月4日(米国時間)に公開されたThe rise of Gilbert, Arizona — a top growth city embracing AI for creativity and productivity.の抄訳です。

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