Illustrator の生成ベクターで欲しいテイストのイラストを生成する:現場で役立つ Adobe Firefly 第 8 回
本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用ノウハウやヒントをお届けします。第 8 回は、北沢直樹が Adobe Illustrator の「生成ベクター」機能を使って狙ったテイストのイラストを生成する方法をご紹介します。
Illustrator の「生成ベクター」には、「ディテール」と「効果」という項目があります。これらを活用することで、イラストが必要だけどあまり時間はかけられないという場面でも、欲しいテイストのイラストを作成できます。
生成したイラストは商用利用が可能で、チラシやバナー、商品のロゴなどにも使えます。
上の動画と、この記事の内容は同じです。お好みに合わせてご覧ください。今回使用しているサンプル(ZIP: 48.3MB)はこちらからダウンロードできます(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)
Illustrator でイラストを生成する手順
生成ベクター(Beta)は、オブジェクトメニューと、コンテキストタスクバーから利用できます。操作の基本ステップは以下の通りです。
1. 新規ファイルを作成
Illustrator で、新しいドキュメントを用意します。用途に応じて適切なサイズを選びましょう。
2. 「生成ベクター (Beta)」ダイアログを開く
オブジェクトメニュー、またはコンテキストタスクバーから「生成ベクター (Beta)」ダイアログを開きます。
3. イラストを生成
プロンプト入力欄に具体的なキーワードを入力します。今回は生成ベクターで生成できるすべての種類を比べてみるため、シンプルなプロンプトにします。
【フルーツタルト 一切れ】
生成ボタンをクリックすると、入力したプロンプトに基づいて、AI がイラストを生成します。
4. イラストを選択
Firefly が生成した 3 つのバリエーションを表示します。その中から目的に合ったものを選ぶか、気に入ったものが無ければ再度生成することもできます。
生成ベクターで生成できるコンテンツの種類
「生成ベクター(Beta)」では、生成するコンテンツの種類を、シーン、被写体、アイコンの 3 つから選べます。それぞれにディテールの強弱を 5 段階で指定できます。
下の図に並ぶイラストは、すべて、プロンプト「フルーツタルト 一切れ」から生成したものですが、「コンテンツの種類」と「ディテール」 の組み合わせによって表現が変わっています。「アイコン」に関してはディテールの強弱による差はあまり見られませんが、「被写体」「シーン」ではディテールによって生成されるイメージが大きく変わっています。
筆者のおすすめは「被写体」と「アイコン」の、ディテールは最小に近い方です。シンプルなタッチで、さまざまな画像に合わせやすいイラストが生成されていると感じました。
「効果」と「ディテール」でさらに思い通りに!
コンテンツの種類だけで好みのテイストが見つからなくても安心してください!
生成ベクター(Beta)には 9 種類の「効果」があり、生成するイラストに特定のスタイルを適用できます。利用可能な「効果」は、「フラットデザイン」「幾何学」「落書き」「ピクセルアート」「ローポリ 3D」「ミニマリズム」「アイソメトリック」「コミック」「3D」です。
「効果」と「ディテール」 の組み合わせによる変化を示したのが下の図です。コンテンツの種類は「被写体」、プロンプトは「フルーツタルト 一切れ」に固定してあります。
ご覧の通り、プロンプトを工夫しなくても、多種多様なテイストのイラストを生成することができました。
自分のスキルでは表現できないものを生成できたり、ここから思いもよらないアイデアが浮かんだりと、バリエーションが多いほど制作のヒントや素材として役立ちます。
『カラーとトーン』でさらに思い通りの表現を!
さらに、「カラーとトーン」を使って、生成するイラストのスタイルを指定できます。「白黒」「落ち着いたカラー」「暖色」「寒色」「鮮やかなカラー」「パステルカラー」の 6 つのプリセットが利用できます。
下の図は、コンテンツの種類に「被写体」、プロンプトに「フルーツタルト 一切れ」を指定して、「カラーとトーン」と「ディテール」 の組み合わせによる変化を示したものです。
このように、プロンプトで色を制御しなくても、プリセットから配色を選んでイラストを生成することができました。
お勧めの組み合わせ
「カラーとトーン」に「効果」を組み合わせると、様々なテイストのイラストを生成できます。下の例は、「カラーとトーン」には「白黒」、「効果」には「落書き」を指定して生成した例です。手描きタッチのイラストが生成されています。
「カラーとトーン」は、プリセットを指定するだけでなく、使用する色の数や、使用する色を指定できます。これを「効果」と組み合わせて使うのもお勧めです。
「効果」にピクセルアートを指定して色数を絞ると、レトロゲームのような雰囲気のものができます。また、「効果」にミニマリズムを指定して色数を 3 か 4 にすると、ロゴやアイコンに使いやすいイラストを生成できます。さらに、使用するカラーを指定してミニマリズムと組み合わせると、オリジナリティのある配色のイラストを生成できます。
Illustrator の 3D 効果と『生成塗りつぶし(シェイプ)(Beta)』で思い通りのアングルを再現
Illustrator の生成 AI 機能には、シェイプの塗りを生成できる「生成塗りつぶし(シェイプ)(Beta)」があります。今回のタルトのような形状であれば、3D 効果を使うと、狙ったアングルのケーキを生成できます。
まず、元になるシェイプを用意します。それを 3D 効果で立体にして、角度を指定します。
思い通りのアングルができたら、「アピアランスを分割」で要素に分けて、「パスファインダー」の合体を使って輪郭となるシェイプを作成します。
シェイプを選択すると、コンテキストタスクバーが「生成ベクター(Beta)」から「生成塗りつぶし(シェイプ)(Beta)」に変わります。プロンプトに「フルーツタルト 一切れ」と入力して生成すると、シェイプの塗りが生成されます。
作成したいイラストの形がはっきりイメージできている場合には、先に紹介した生成ベクター以外にも、「生成塗りつぶし(シェイプ)(Beta)」を試してみるとよいでしょう。簡単なシェイプからよりイメージに近いイラストを生成できることがあります。
Illustrator で活用する
生成されたイラストは、Illustrator で簡単に活用できます。たとえば、下の例のように、作成したチラシにイラストを配置して、見た目にも魅力的で訴求力の高いデザインに仕上げることが可能です。イラストは、ベクターデータで生成されるので、修正も容易です。
複雑なプロンプトを使わなくても「効果」や「ディテール」を活用することで好みのイラストに近づけられるのが生成ベクターの便利な点です。「効果」や「ディテール」の設定を組み合わせれば、制作中のイメージに合ったベクターイラストをスピーディに生成できます。また、3D 効果と生成塗りつぶしを組み合わせると、角度や立体感にこだわった表現が可能になります。思い通りの生成をぜひためしてみてください。