教育における創造性とAIについての調査レポート
生成AIをはじめ、最先端テクノロジーの影響がますます強まる世界において、学生が適応するだけでなく、成功するためにはどうすればよいでしょうか?この新しいテクノロジーには、学生が様々なアイデアを結びつけ、自己を表現し、将来の課題への対処に必要な自信を培えるように支援できる可能性が秘められています。特に、創造性、つまり新しい方法で課題を解決し、アイデアを組み合わせ、解決策を伝える能力は、生成AIを活用して、学生の学修体験、自己表現方法、将来のキャリアへの備えを再定義することによって高めることができます。
このたびアドビはAdvanisとともに、「教育における創造性とAIについての調査レポート(2025)」を公開しました。このレポートは、授業で創造性を育むことが学生の学業成績、キャリアへの備え、人間的成長に与える効果について、貴重な考察をまとめたものです。米国と英国の教育者2,801名から得た定量的および定性的な回答にもとづいて、創造性とAIの組み合わせは単に学修活動を補完するものではなく、次世代の成功を支援するための重要な指導実践であり、身につけるべきスキルであることを示します。
学修成果の向上
効果的な学びには創造的思考が常に重要です。本調査からは、カリキュラムに創造性に関するプロジェクトを組み込むことで、複雑なアイデアの実現、込み入った問題の解決、学習を有意義な自分事とする関係性の構築に役立つことが示されました。
調査では、教育者の91%が、学生にクリエイティブなAIを使わせると学修効果が高まると回答しました。この理由として、カリキュラムに組み込まれた創造的思考が求められる活動と実社会プロジェクトを通じて、学生がコンテンツにより深く関わることが挙げられています。異なる学校種や専門分野の教育者が共通して、創造的思考が求められる活動として以下を挙げています。
興味深いことに、授業により多くの創造的思考が求められる活動を組み込むほど、他の学業成果や認知能力も著しく向上することが確認されました。本調査において、教育者を創造的思考活動の活用頻度にもとづいて分類し、活用頻度の最も高い教育者と最も低い教育者を比較したところ、批判的思考、知識の定着、エンゲージメント、レジリエンスなど、複数の関連技能や成果にわたる総合的な学習効果に大きな違いがあることが判明しました。
調査に参加した複数の教育者は、生成AIには創造的プロジェクトのスピード、容易さ、アクセシビリティを高める効果があるため、小中高校から高等教育に至るまで、優れた学業成果をより広く、より公平に広める触媒になると指摘しています。
「クリエイティブな生成AIツールは、私の教育に新風を吹き込みました。これまでは私が指導している科学という教科が、創造的な教科だと感じることはありませんでしたが、学生と一緒にAIを使って、これまでにない新しい授業を行うことができました。実験レポートの動画制作がよい例で、デジタルスキルやプレゼンスキルを学べることは言うに及ばず、学生たちは学修内容の理解を深め表現する新しい方法を手に入れることができました。私自身も採点や成績評価が従来よりもはるかに面白いものになり、よい作例を共有したり褒めたりすることをいつも楽しんでいます」
- Benjamin Scott博士(イングランド、科学教員)
将来のキャリアへの準備
現代の仕事は急速に進化しており、創造性、AIリテラシー、適応力が重要なスキルとなっています。教育者の86%は、クリエイティブプロジェクトやマルチメディアプロジェクトでの生成AIの使い方を学生に教えることで、こうしたスキルが必要な職種が増え続ける中で、仕事を確保できる可能性が高まると考えています。
教育者は学生に身につけさせたい就業スキルを重視して、授業で利用するべき生成AIツールを選んでいます。これは学生が業界標準のツールを学ぶ機会につながります。
様々な生成AIツールが急速に登場してきていますが、その多くは長く使えることが保証されていません。そのため、教育者の95%は、スタートアップではなく実績ある企業により開発された業界標準ツールを使うことの重要性を強調しています。突き詰めると教育者は、学生が身につけるスキルが将来も仕事に通用することという観点で業界標準ツールの採用を優先しています。
クリエイティブなAIの活用には、スキルを身につけるだけではなく、学生が個人的な興味関心を探究し、仕事の意義を見出す効果もあります。学生は個人の思いや考えと一致するプロジェクトに参加することで、自分の興味関心や目標を反映した有意義で持続可能なキャリアパスを見つけることができます。
「世界は急速に変化しており、今の子ども達はAIが生活の大部分で重要な役割を果たす可能性が高い未来に備えて必要なスキルを身につける必要があります。AIは、創造性を支援し将来のキャリアへの準備を整えさせる方法を根本から変える可能性を秘めています。AIを活用し、子ども達が革新的なアイデアを試したり、プロジェクトで共同作業を行ったり、実社会の課題に取り組めるように支援することで、創造性が育まれます。AIが仕事に不可欠な要素となりつつある今、学習活動でAIを活用することによって、このテクノロジーの可能性と課題の理解を深めつつ、将来選んだキャリアで成功するために必要な適応力とデジタルリテラシーを身につけることができるのです」
-Kate Sturdy氏(ウェールズ、小学校教員)
人間的成長とウェルビーイングの促進
創造性は、学生が自己表現をする手段や感情的レジリエンス、目的意識を身につけ、人間的成長をするうえで重要な役割を果たします。そのため、若者にしばしば見られる目的意識の不足とウェルビーイングの低下に対処するために、多くの教育機関が創造性の発揮と自己表現の機会を増やす取り組みを始めています。
昨年の授業にクリエイティブ活動を取り入れた教育者の82%が、学生のウェルビーイングとエンゲージメントにプラスの効果があったと述べています。これにより逆に、教員側の満足度も向上し燃え尽き症候群を減らす効果もありました。
人にとって目的意識は、ウェルビーイングと充足感に大きな影響を与えます。目的意識を探究する機会は、学生の人生に大きな影響を与える可能性があります。目的は、人生の中心となる自己組織的な目標を持つことを含め、様々な方法で定めることができます。強い目的意識のある個人は、自身にとって最も重要なことを認識し、価値観に合わせた目標設定ができるとされています。
「自己表現にはいろいろな形があり、AIは学生に意見や感情の伝え方のフレキシビリティを与えます。意見を言ったり注目されたりすることに苦手意識がある学生にとっては、AIでアイデアを言葉や画像に変換できる力は非常に大きな効果があります。自己表現はウェルビーイングの土台であり、AIを活用することで、誰もが自分の思いや考えを伝える機会を得られます」
-Eve Heaton氏(サウスカロライナ、教育工学講師)
強い目的意識を持つことは、創造性の向上だけでなく、ウェルビーイングと健康にも重要です。研究によれば、創造的な活動に参加することは、それが課題解決策を探すものであろうと従来とは異なるイノベーションを起こすものであろうと、人間が自身の人生の意味を見出すための重要な方法の1つであるとされています。
今回の調査では、教育者が学生のキャリアの準備に対して抱いている責任感には、それぞれの個人的な目的意識が大きく影響することがわかりました。概ね、強い目的意識を持つ教育者ほど、創造的思考や生成AIの活用法などの重要なスキルの教育に強い熱意を示していました。また、こうした教育者ほど、これらのスキルで実現できるキャリアパスを模索する傾向も見られました。
現代社会において、パーパス(目的)とウェルビーイングは欠かせないものです。そのためには、従来の教育目標を超えた包括的なアプローチが重要となります。教育にクリエイティブなAIを取り入れることは、技術的なスキルを教えることにとどまらず、学生たちが人生の意義を見つけ、自信を培い、レジリエンスを持つよう力づけ、生涯に渡って良い影響を及ぼし続けることなのです。
Adobe Expressの責任感のある安全な生成AIで、創造的な成果物を
教育機関向けAdobe Expressは、学生の成果物の質とスピードを向上させる創造性とテクノロジーを併せ持つツールです。教育での利用を想定して設計しており、信頼できる生成AI機能を備え、多様なデジタルコンテンツを直感的操作で制作できます。小中高校向けは無料でご利用いただけます。
教育機関向けAdobe Expressは多様なテンプレート、リアルタイムの共同作業機能、堅牢なセキュリティおよびプライバシー対策などの機能を備えており、クリエイティブな教育活動に最適です。教育現場では、多様なレベルの児童生徒や学生がそれぞれ自分のアイデアを表現し、学んだ内容の理解を深めることにこうしたツールが役立っていると評価されています。
「AIには、生徒が学んだことを実生活に活かせるように支援し、創造性を通じて学習成果を促進する力があります。AIを活用することで、生徒たちは自分のイメージを絵として形にすることができます。つまり創造性の発揮を画力で制限されることがなくなり、学習障がいのある子どもを含め、どんな生徒に対しても新しい無限の学習可能性を開いてくれます。AIが学習成果と将来のキャリアの可能性への準備段階を公平なものにしてくれることを願っています」
-Rebecca Yaple氏(バージニア、STEM担当高校教員)
教育の新しい未来予測
「教育における創造性とAIについての調査レポート(2025)」では、教育において創造性支援とAIを組み合わせることで実現できる未来を大胆に予見しています。それは、教室がイノベーションやパーパス、可能性の中心地となり、学生たちが変化への対応力を備えるだけではなく、変化を自ら起こすインスピレーションを与える場所になる未来です。
教育におけるAIの活用は遠い未来の概念ではなく、すでに眼前にあり、次の世代を形作る現実の存在です。学校は、子どもたちがAIが変化させる世界で成功するだけではなく、積極的により良い未来を創っていく準備をする場所になることができます。これは単なる戦略の話ではなく、行動への呼びかけです。教育の可能性を共に追求しましょう。
※このブログは米国で2025年1月に掲載されたものの日本語抄訳版です。