Illustrator の「ベクターを生成」で手書き風アートを生成:現場で役立つ Adobe Firefly 第 11 回
本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用術をお届けします。第 11 回は、Adobe Illustrator の「ベクターを生成」を使用して、手書き風のイラストを生成する方法のご紹介です。
※ この記事の内容は、5 月 21 日(水)に配信された「Adobe Firefly の達人に学ぼう!実践的な生成 AI の活用方法 - May 2025」で、コネクリが紹介した内容に基づいています。当日の動画は以下からご覧になれます。(37 分 35 秒あたりから)
動画内で使用しているサンプル(ZIP: 9.6MB)はこちらからダウンロードできます。(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)
手書きアートの利用シーン
手書きのイラストは、ナチュラル感、親しみやすさ、クラフト感などを活かしたい場面でよく使われます。しかし、時間が限られている状況や、人によってはスキル的に、デザインに取り入れることが難しいジャンルの一つです。
Illustrator の「ベクターを生成」機能を利用すると、一般的なオブジェクト、たとえばフルーツなどであれば、アナログ感のあるアートを生成することが可能です。ここからは、そのために役立つ 3 つのヒントを紹介します。
1. プロンプトに「ペン画」と足す
1 つ目は、プロンプトに「ペン画」というテキストを足す方法です。下の図が示すように、プロンプトが「フクロウの顔」だけの時と比べると、「ペン画」を追加して生成した画像のテイストは手書き風になります。白黒を指定して生成すると更にペン画の雰囲気が出ます。
生成の手順は以下の通りです。
- コンテキストタスクバーから「ベクターを生成」を選択してパネルを開きます。
- プロンプトに「フクロウの顔、ペン画」と入力します。
- カラーとトーンに「白黒」を指定します。
これで、生成ボタンを押せば、いい感じにペンの入った画が生成されます。
「ペン画」以外にも、同じような使い方のできる言葉があります。「落書き」「鉛筆画」「水彩画」「水墨画」と言葉を変えるだけで、テイストの異なる手書き風の画像を生成できます。ぜひ、他の言葉も試してみてください。
2.「落書き」効果の活用
2 つ目の方法は、落書きの効果を利用するというものです。上の方法と異なり、プロンプトは「フクロウの顔」だけですが、効果に「落書き」を指定すると、ゆるい感じのイラストを生成できます。
生成の手順は以下の通りです。
- コンテキストタスクバーから「ベクターを生成」を選択してパネルを開きます。
- プロンプトに「フクロウの顔」と入力します。
- 効果に「落書き」を指定します。
- カラーとトーンに「白黒」を指定します。
生成ボタンを押すと、ゆるくてフラットな画像が生成されます。
なお、プロンプトに「落書き」と追記する方法と、効果に「落書き」を指定する方法では、生成結果が異なります。比較したものが以下の画像です。
3. 「スタイル参照」の活用
3 つ目は、スタイル参照の活用です。スタイル参照では、既存の画像のスタイルを模倣した画像を生成できるため、下の例のように、手書きの画像を参照させることにより、手書き風の画像を生成できます。
生成の手順は以下の通りです。
- コンテキストタスクバーから「ベクターを生成」を選択してパネルを開きます。
- プロンプトに「フクロウの顔」と入力します。
- (効果に「落書き」が指定したままになっていたら解除します。)
- スタイル参照のアセットに用意した画像を指定します。
- カラーとトーンに「白黒」を指定します。
生成ボタンを押すと、参照画像のスタイルを受け継いだ画像が生成されます。
参照画像のテイスト次第で、様々なバリエーションを生成できるのがこの方法の便利な点です。下は、書き込み量が少ないペン画、鉛筆画、水墨画、版画風の画像を指定して生成した結果です。
まとめ
今回は、手書き風イラストを生成する 3 つの方法を紹介しました。どれも、簡単に導入できる方法ですので、それぞれの特徴を押さえてぜひ試してみてください。スタイル参照を使うには予め画像を用意する必要があるため、他の 2 つの方法より少しだけ手間がかかりますが、適当な画像さえあれば他の方法よりも細かいテイストまで指定できます。
頂いた質問への回答
Q. イラレで生成されたベクターはパスで編集できますか?
A. はい、可能です。そこが生成ベクターの強みの一つです。今回のテーマに沿ってお答えすると、例えば効果のラフやブラシ、テクスチャを重ねるなどのブラッシュアップを行うことで、よりアナログ感を強調して仕上げることができます。
Q. やわらかい色合いのパステル画のような雰囲気も可能でしょうか?
A. [ベクターを生成]ダイアログの[カラーとトーン]に[パステルカラー]という項目があります。別の方法として、プロンプトに[〇〇、柔らかなパステルカラー]とプロンプトに足す方法もあります。ただし、パステルカラーも様々な配色があるため、形状は良いのに色が…というシーンがあるかもしれません。形状と色を比較すると色の変更の方が調整がしやすく、「オブジェクトを再配色」や「生成再配色」、または Photoshop などのアプリを使うなど、さまざまな方法を取ることができるので、生成後に調整する方法も検討してみてください。
Q. マニアックなものだと名称だけでは上手く生成ができないのですが、プロンプトの指示をするときにどういった点を工夫をしたら良いでしょうか。 例えば、「沖縄そば」を被写体で作りたくても「ラーメン」や「日本そば」が出来上がってしまう等日本の食べ物など意図した生成にならない場合も多いですよね。
A. 固有名詞が伝わらない場合、視覚的特徴を分解して説明すると精度があがる可能性があります。沖縄そばであれば「豚バラ肉とネギをトッピングした薄茶色のスープの太麺の沖縄そば」など。
Q. 既存の画像をフィルタのように水墨画や落書き風に変更することもできますか?
A. Firefly web アプリの[構成]、Photoshop の[コンポジション]を使って生成を行うことが可能です(フィルタは画像をそのまま変換する印象ですが、生成なので多少変わります)。Firefly web アプリを使った 2 つの方法を記載します。
- サイドメニューの[構成/画像をアップロード]から画像をセットして[強度]を最大(右)に、プロンプトに[〇〇、水墨画]で生成
- サイドメニューの[構成/画像をアップロード]から画像をセットして[強度]を最大(右)に、[スタイル/ギャラリーを参照]から水墨画(馬の絵)をセットしてプロンプト(水墨画というワードはあってもなくても)を入力して生成
Firefly を利用するには生成クレジットが必要です。現在お持ちの生成クレジットを確認する方法は、こちらをご覧ください。
その他の生成クレジットに関するよくある質問は、こちらのページをご覧ください。