Camera Raw の AI 機能でガラス映り込みを補正する:現場で役立つ Adobe Firefly 第 9 回
本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用術をお届けします。第 9 回は、Adobe Camera Raw の AI 機能を使って、ガラス映り込みを補正する方法のご紹介です。
※ この記事の内容は、5 月 21 日(水)に配信された「Adobe Firefly の達人に学ぼう!実践的な生成 AI の活用方法 - May 2025」で、パパが紹介した内容に基づいています。当日の動画は以下からご覧になれます。(10分50秒あたりから)
動画内で使用しているサンプル(ZIP: 170MB)はこちらからダウンロードできます。(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)
Camera Raw でガラスの映り込みを削除する手順
Camera Raw の「反射の削除」は、ガラス越しに撮影された写真から映り込みを除去します。公開当初は Raw ファイルのみの対応でしたが、現在は Raw 以外のファイル形式に対応し、より多くの場面で使えるようになりました。
この機能は、現在テクノロジープレビューとして提供されており、利用するには事前に設定が必要です。
設定は、Camera Raw の環境設定パネルで行います。左のリストから「テクノロジープレビュー」を選択すると、「新しい AI 機能と設定パネル」という項目があります。これをチェックした状態にして、OK ボタンを押してから、アプリケーションを再起動すると、AI を活用したテクノロジープレビューにアクセスできます。
「反射の削除」の使い方は簡単です。操作の基本ステップは以下の通りです。
- まず、Camera Raw で、映り込みのある写真を開きます。
- 画面左の消しゴムアイコンをクリックし、削除パネルを表示します。
- 「気になる箇所の削除」下にある「反射」の右にある三角形のアイコンが横向きだったら、クリックして操作メニューを表示します。
- 画質を選択します。ソーシャルメディア用であれば、最も低い解像度の「プレビュー」が適しています。(最も高速に処理できます)
- 「適用」をチェックします。Camera Raw により、写真内の映り込みが自動的に検出されて削除されます。
下は、処理が完了した画像です。きれいにガラス面の映り込みが削除されました。
映り込みが削除された後は、スライダーが操作できるようになります。削除の後は、値が 100 に設定されています。これを 0 に戻すと元の画像を表示できます。-100 にすると、映り込みだけの画像になります。
画像によっては、処理の結果、ガラスの奥にあるものが削除されてしまうことがあります。その場合には、スライダーを -100 にすることにより、映り込みが削除された画像を表示できます。
Camera Raw で映り込みを削除した画像の編集
Camera Raw の「反射の削除」は万能ではありません。Camera Raw で映り込みを削除してから、Photoshop の機能を利用してさらに画像を編集するのが、アドビの推奨するワークフローです。
ここからは、Camera Raw の「反射の削除」では削除できなかった映り込みを削除するテクニックを紹介します。
素材として使用するのは、車内のクッションを撮影した写真です。車の窓ガラスに映り込みがあります。
Camera Raw の「反射の削除」で映り込みを削除したのが、下の画像です。だいぶきれいになりましたが、まだ映り込みが残っています。画像の左上にはピースサイン、クッションの左端には車のパーツが映り込んでいます。
Photoshop の機能を利用して、これらを削除していきましょう。まずは、ピースサインを削除します。選択ブラシツールを使用して、ピースサインの領域を選択します。
「コンテンツに応じた塗りつぶし」を使用します。処理後が下の画像です。ピースサインを削除できました。
次は、車のパーツの映り込みを削除します。再び選択ブラシツールを使用して領域を選択します。
「生成塗りつぶし」を使用します。プロンプトは入れずに「生成」ボタンを押すと、きれいに車のパーツだけ削除できました。
適切なツールを選択して映り込みを削除する
今回は、映り込みを削除するために利用できる 3 つの機能を紹介しました。Photoshop にはこの他にも、不要なオブジェクトを簡単に削除できる「削除ツール」があります。これは、生成 AI を活用した強力な編集機能です。(削除ツールの使い方はこちらの記事をご覧ください)
ピースサインの削除に使用した「コンテンツに応じた塗りつぶし」は、背景がシンプルなものを消すのが得意です。そして、処理が早いという特徴があります。しかし、複雑な背景は苦手です。
削除したい映り込みの背景が複雑な場合は、「生成塗りつぶし」「削除ツール」など生成 AI を活用した機能が向いています。今回はクッションのロゴが背景にあるパーツの映り込みを削除するのに「生成塗りつぶし」を使用しました。ただし、こちらは処理にやや時間がかかります。
Camera Raw の「反射を削除」で映り込みを消した後に、もうひと手間かけて削除をする際は、これらの特徴を踏まえて最適なツールを選択しましょう。生成 AI を使った削除機能は場面を選びませんが、幾つも消す必要がある場合、処理に時間がかかるとストレスになってしまうことがあります。そこを踏まえて、うまく使い分けをしていただければと思います。
頂いた質問への回答
Q. 気になる箇所を削除の項目が出てきません…新しい AI 機能のチェックはつけました。
A. CameraRaw の「反射」は比較的新しい機能なのでまず Photoshop のバージョンを確認してみてください。古いものであれば最新にアップデートしましょう。またテクノロジープレビューの「新しいAI機能と設定パネル」にチェックをいれたら一度Photoshopの再起動を試みてください。Camera Rawの画面右にある消しゴムのアイコンを選択すると画面下に表示されます。