Illustrator の「生成塗りつぶし」で狙ったアングルから捉えたイラストを生成する:現場で役立つ Adobe Firefly 第 12 回

本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用術をお届けします。第 12 回は、Adobe Illustrator の「生成塗りつぶし(シェイプ)」を使用して、狙ったアングルから描かれたイラストを生成する方法のご紹介です。

※ この記事の内容は、5 月 21 日(水)に配信された「Adobe Firefly の達人に学ぼう!実践的な生成 AI の活用方法 - May 2025」で、北沢直樹が紹介した内容に基づいています。当日の動画は以下からご覧になれます。(48 分 40 秒あたりから)

動画内で使用しているサンプル(ZIP: 4.1MB)はこちらからダウンロードできます。(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)

「生成塗りつぶし(シェイプ)」

Illustrator の「生成塗りつぶし(シェイプ)」は、シェイプを指定すると、その形状に合わせてベクターグラフィックを生成してくれる生成 AI 機能です。シェイプを使って形と大きさを指定できるため、デザインにピッタリと合うデザイン素材を生成できます。この機能を利用するには、まず生成領域を指定するためのシェイプを用意して、生成したいグラフィックの説明テキスト(プロンプト)を入力します。

シンプルで特徴的な形状のオブジェクトは、「生成塗りつぶし(シェイプ)」に向いています。たとえば、下の画像で例として使われているスノードームは、丸と台形の組み合わせと、わかりやすい形状です。

生成する際には、オプションとして、シェイプの強度(形に合わせる度合い)と、ディテール(イラストの書き込み量)を選択できます。上の 3 つのスノードームは、ディテールの指定は共通ですが、強度の値が異なります。台座の形を見ると、強度の指定が低くなるほど、台座の形が台形から変化していることがわかります。

「生成塗りつぶし(シェイプ)」で生成する際には、生成するイラストのスタイルやカラーも指定できます。

「3D とマテリアル」

Illustrator では、ベクターアートに 3D 効果を適用できます。この機能を利用するには、ウィンドウメニュー下の「3D とマテリアル」をクリックして、「3D とマテリアル」パネルを表示します。

下の例は、スノーボールの断面を半分にカットした形状をつくり、「3D とマテリアル」の回転体を適用して立体にしたものです。この立体を 3D 空間内で回転させると、斜め上から見た状態や、斜め下から見た状態を簡単に作成できます。

こうして作成したシェイプに「生成塗りつぶし(シェイプ)」を適用すれば、俯瞰や煽りのイラストを手軽に生成することができます。

「生成塗りつぶし(シェイプ)」&「3D とマテリアル」の作例

ここからは、実際に任意の角度から捉えたイラストを生成する手順を、いくつかの例を通じて紹介します。

缶ジュース

まずは、単純な形状の代表として、缶ジュースを生成します。

  1. 長方形ツールを選択して長方形を描く
  2. 「3D とマテリアル」パネルで回転体を選択して立体にする

  1. 自由回転ツールを使って缶の角度を設定する

  1. コンテキストタスクバーの「生成塗りつぶし(シェイプ)」をクリックする
  2. 歯車アイコンをクリックして設定パネルを開く
  3. プロンプトに「缶ジュース」を入力する
  4. 「シェイプの強度」を「高」にする
  5. 「ディテール」を「最低」にする

  1. 「生成」をクリックする

これで 3 種類のイラストが生成されます。生成されたイラストはベクターデータなので、そのまま Illustrator で編集できます。

コーラと氷の入ったグラス

次は、液体(コーラ)と氷の入った透明なグラスを生成します。グラスは透けて見える上に傾けると液体がこぼれてしまうかもしれません。そのため、角度をつけて描くために実物を観察することがやや難しい対象です。

  1. 上辺が少し下辺よりも長い縦長の四角形を描く
  2. 「3D とマテリアル」パネルで回転体を選択して立体にする
  3. 自由回転ツールを使ってグラスの角度を設定する

  1. コンテキストタスクバーの「生成塗りつぶし(シェイプ)」をクリックする
  2. 歯車アイコンをクリックして設定パネルを開く
  3. プロンプトに「コーラと氷の入ったグラス」を入力する
  4. 「シェイプの強度」を「高」にする
  5. 「ディテール」を「最高」にする
  6. 「生成」をクリックする

ちゃんと下から見た絵が生成されました。このように、実物を見ながら描くことが難しい角度から捉えたイラストも自在に生成できるのは、この方法の便利な点です。

パスタが盛り付けられたお皿

次の例は、パスタが盛られたお皿です。今回は、「効果」を指定することにより、ピクセルアート風のイラストを生成します。

  1. 上辺が少し下辺よりも長い横長の四角形を描く
  2. 「3D とマテリアル」パネルで回転体を選択して立体にする
  3. 自由回転ツールを使ってお皿の角度を設定する

  1. コンテキストタスクバーの「生成塗りつぶし(シェイプ)」をクリックする
  2. 歯車アイコンをクリックして設定パネルを開く
  3. プロンプトに「パスタ ボロネーゼ」を入力する
  4. 「シェイプの強度」を「高」にする
  5. 「ディテール」を「最低」にする
  6. 「効果」から「ミニマリズム」と「ピクセルアート」を指定する

  1. 「生成」をクリックする

この例のように、「生成塗りつぶし(シェイプ)」は、プロンプトだけではなくて、「効果」を指定したり「スタイル参照」や「カラーとトーン」を活用したりすることで、好みのイラストに近づけることができます。

まとめ

ここまで紹介してきたように、「生成塗りつぶし(シェイプ)」と「3D とマテリアル」を組み合わせて使用すると、思い通りのアングルから捉えたデザイン素材を手軽に生成できます。最終的には手描きのイラストを使用するとしても、ラフとして生成したり、画角の参考にするため様々な角度からバリエーションを生成したりといった使い方が可能です。

チラシとかポスターを制作する際に、角度や立体感にこだわった表現があれば、少し動きがある、より魅力的なイラストに仕上げられます。ぜひ、「生成塗りつぶし(シェイプ)」と「3D とマテリアル」を活用したデザインを試してみてください。

頂いた質問への回答

Q: 北沢さん紹介の方法は、立体にしたらどんなものでも上手くいきますか?
A: 立体を把握しているわけではないので、あくまで「シルエット」としてわかりやすいものであれば生成できる可能性があります。

Q: 例えばタイトルになるような文字をおしゃれに生成出来ますか?
A: テキストを作ったあと、効果 > 3D とマテリアル > 3D(クラシック) > 押し出しとベベル(クラシック) を使い立体にして、角度を指定します。思い通りのアングルができたら、「アピアランスを分割」すると立体の文字のシルエットも「生成塗りつぶし(シェイプ)」の元にできますので、色々なプロンプトで試していただければと思います。文字のシルエットを作りたいため、3D 効果はクラシックを使うのがコツです!

Q: あくまで例えば何なのですが、自分で思いついたプロントがうまくいかなかった時に 北沢さんは chat GPT に聞いたりしますか?
A: はい!Chat GPT にどういうプロンプトにしたらいいか相談することはよくあります!ぜひ試してみてください!

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