名書体 ロゴラインがAdobe Fontsで復活。ポップで親しみやすい鴨野実さんの文字|Adobe Fontsパートナー紹介18

Adobe Fonts|鴨野実 メインビジュアル

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、映像といったさまざまなフィールドでフォントを自由に使えるクラウドサービスです。2025年8月現在、30,000以上のフォントが提供されています。

この記事では、Adobe Fontsに参加する200を超えるフォントメーカーやタイプデザイナーから、ひとつのパートナーをピックアップ。歴史や特徴、Adobe Fontsで利用可能なフォントを紹介していきます。

名書体「ロゴライン」を手がけた鴨野実さん

今回紹介するのは、タイプデザイナー・鴨野実さんが設立した鴨野実書体デザイン室です。
鴨野実さんは1970年に阿佐ヶ谷美術学園(現・阿佐ヶ谷美術専門学校)タイポグラフィ科を卒業したのち、桑山弥三郎書体デザイン室で書体デザインの経験を積み、1978年に鴨野実書体デザイン室を立ち上げました。
2年後の1980年には写研が開催する書体のコンテスト「第6回石井賞創作タイプフェイスコンテスト」で見事、和文部門第1位を受賞。この書体は、1985年、写研から「カソゴ L」として発売されました。

書体サンプル|カソゴL

「カソゴ L」(写研)

鴨野さんが手がけた書体として、もっともよく知られているのは1985年に写研から発売された仮名書体「ロゴライン」ではないでしょうか。
字面いっぱいにデザインされた、流れるような画線が特徴で、横組みで組んだ際にすっきりとしたラインを形成。視認性とデザイン性を両立したディスプレイ用書体として高い人気を誇りました。
組むだけでロゴのように見えるそのデザインは、誰もが知る企業ロゴやブランドロゴ、雑誌タイトル等にも多く使われ、いまなお愛される名書体のひとつとなっています。

書体サンプル|ロゴライン

「ロゴライン」(写研)…「ゴナ」と組み合わせる書体として、1985年に発売。1990年にはカタカナのバリエーション書体として、画線の流れを抑えた「ロゴライン B」、濁点分高さを下げた「ロゴライン C」も作られた

写研やモリサワなどの写植機メーカーから数多くの日本語書体がリリースされ、文字に多彩なバリエーションが生まれた1980年代は、「ロゴライン」を筆頭に数多くの仮名書体が登場した時代でもあります。
漢字、ひらがな、カタカナ、英数字……と、さまざまな文字種が混在する日本語の文章において、多くの割合を占める仮名のデザインは文章全体の印象に大きな影響を与えます。つまり、仮名書体によってひらがな、カタカナを変えることで、既存書体の印象をまったく異なるものに変化させることができるのです。

この「ロゴライン」は、もともと写研の「ゴナ」に合わせるために作られた書体です。1985年に2つのウェイト(E・U)が発売されたのち、1990年には2つのカタカナのバリエーション(B・C)がリリースされました。
1993年にはアドビが「ロゴライン」のデザインをもとに、あらたに4ウェイトで構成しなおしたデジタルフォント版「ロゴライン」4ウェイト(L・M・B・U)を制作。「ロゴライン」のコンセプトを拡張した「ロゴアール」「ロゴカット」とともに「鴨野かな」シリーズとして発売しました(現在はAdobe Fontsで利用可能)。

書体サンプル|カモライム、カモレモン

「カモライム」「カモレモン」(モリサワ) 下段は「新丸ゴ」とセットになった「カモライム+」「カモレモン+」

以降も、鴨野さんはさまざまな書体制作に関わりつづけ、2011年にモリサワからリリースされた「カモライム」「カモレモン」等、親しみやすい文字をいくつも世に送り出しました。
鴨野さんが遺した名書体の数々……その文字は、これからも多様なデザインに活用され、人々の心にとまり、生きつづけることでしょう。

デザインに自然な親しみやすさがほしいとき、Adobe Fontsで鴨野書体デザイン室のフォントを検索してみましょう。鴨野さんの「ロゴ」シリーズなら、どんなシチュエーションでも明るく、心温まるデザインが実現できるはずです。

Adobe Fonts

https://fonts.adobe.com/foundries/kamono-design-laboratory-minoru-kamono

Adobe Fontsで使える鴨野実さんのフォント

2025年8月現在、Adobe Fontsで使える鴨野実さんのフォントは、流れるようなラインが魅力の人気書体「ロゴライン」、直線的なアクセントを加えた「ロゴアール」、文字のアウトラインがすべて直線で表現された「ロゴカット」の3種類。それぞれ4つのウェイトがあり、3種×4ウェイト=計12フォントが提供されています。

書体サンプル|ロゴライン、ロゴアール、ロゴカット

書体サンプル|ロゴライン、ロゴアール、ロゴカット

上からロゴライン U、ロゴアール U、ロゴカット U/左からL・M・B・U


「ロゴライン」「ロゴアール」「ロゴカット」は、ひらがな、カタカナ、全角数字、基本的な約物と記号のみ収録した仮名書体のため、漢字を含むテキストに使用する場合には、漢字を持つフォントと組み合わせる必要があります。Adobe Fonts提供書体の場合、細いウェイトには 源ノ角ゴシック、太いウェイトには VDL  V7 ゴシック を使うと、違和感なく、文字を組み合わせることができるでしょう。

上:ロゴライン源ノ角ゴシック/下:ロゴラインVDL  V7 ゴシック

上:ロゴアール源ノ角ゴシック/下:ロゴアールVDL  V7 ゴシック

上:ロゴカット源ノ角ゴシック/下:ロゴカットVDL  V7 ゴシック

ここで紹介した組み合わせに使用するフォントは、以下のフォントパックを利用することで、一括でアクティベートすることができます。

また、Adobe IllustratorやAdobe InDesignで使用する場合は、「合成フォント」機能を使うことで、組みあわせフォントをひとつのフォントとして扱えるようになります。

[参考]フォントの魅力をさらにひきだす「合成フォント」で和欧混植にチャレンジしよう

「ロゴ」シリーズに漢字を組み合わせたフォントパック

フォントパックサンプル

Adobe Fontsで使用可能な多くのフォントのなかから、イメージや目的にあわせて厳選して提供する「フォントパック」に、「『ロゴ』シリーズ+漢字フォント」が追加されました。
このフォントパックでは、ロゴライン・ロゴアール・ロゴカットの各フォントに加えて、漢字や英数字を補うのに最適なゴシック体をセレクト。組み合わせて使うことで、どんなテキストでもスムーズに表現できるようになります。

鴨野実書体デザイン室(鴨野実)
web|https://www.space-visual.com/