山形県庁が行政情報の発信力向上を狙って Adobe Express を導入

自治体にとって「いかに行政情報を届けるか?」は、多くの情報や多彩なコンテンツが溢れる今日の状況における主要な課題の一つです。山形県庁職員の広報力向上を目標に業務を行っている山形県総務部広報広聴推進課は、県庁が発信するコンテンツの訴求力を高める必要性を認識し、今年度、広報物の制作に関わる職員を支援するための施策として Adobe Express を導入しました。

Adobe Express を使えば、高品質のテンプレートや素材を利用して、効率的にデザイン性の高いコンテンツ制作を行えます。Adobe Express 導入への反応は事前の想定を超えた広がりを見せて、観光や農林水産物の PR だけではなく、道路など公共インフラの技術的な情報をわかりやすく発信したり、福祉系の啓発をより届きやすい形にしたりと、様々な部署で様々な目的に使われ始めています。同課が用意していたライセンスの 9 割以上が使われている状態です。

山形県総務部 広報広聴推進課 主事 廣谷睦樹氏(左)と同課 広報戦略主査 江口智裕氏(右)。吉村美栄子山形県知事のパネルとともに県庁ロビーで撮影

山形県総務部 広報広聴推進課 主事 廣谷睦樹氏は Adobe Express 導入の背景を次のように説明しました。「昨年度、様々な広報活動をしている職員にアンケートをとりました。その結果、37% の職員が何かしらの広報活動に携わっていると回答があり、そのうちの 38% の職員が広報物のデザインや表現に関する悩みを抱えている状況でした」。この結果を受けて、課内でデザインツール導入に向けた検討が始まりました。

同課では、これまで職員に対して大きな方向性は示してきましたが、技術的なサポートはあまりしてこなかったそうです。「今年度は、職員一人ひとりの広報に関する力を伸ばしていきたいと考えました。その一環としてデザイン面を支援する手段として Adobe Express 導入を決めました」と同課 広報戦略主査 江口智裕氏は今回の導入の狙いを話しました。

ワークショップを開催して早期の活性化を図る

どんなツールであれ、導入しただけでは認知も利用率も上がりません。より多くの職員に興味を持ってもらうべく、山形県庁では、Adobe Express の正式な導入のタイミングに合わせてワークショップを開催しました。新しいデザインツールに実際に触れる機会を提供することで、使いやすさや機能性を認知してもらい、その利点を感じた職員にはそのまま使用してもらえたらと準備された企画です。

ワークショップには幅広く 18 部局から総勢 60 名が参加して、3 時間で Adobe Express の基本的な使い方を学び、課題のデザイン制作に挑戦しました。このワークショップは大変好評で、開催後のアンケートでは、参加者の 98% が参考になった/概ね参考になったと回答、今後の業務に活用できそうという回答も 92% でした。

「ワークショップを開催した直後に調べたところ、非常に多くの職員に使われていることがわかりました。用意していたライセンスの 9 割以上が使用されている状態です。短期間にこれだけ利用が進んだことには、ワークショップの効果があったと考えています」と廣谷氏は語りました。ツール導入の目的を考えれば、ワークショップに幅広い部署が参加したことにより、観光や広報部門だけでなく、技術系や福祉系の部署にも Adobe Express の利用が広がったことには大きな意義があります。

子育ての悩みを相談する電話相談窓口の認知拡大を図るという想定でデザインされたワークショップの制作物

「やまがたフルーツ150周年」をPRする目的でデザインされたワークショップの制作物

素材の多様性と権利面の透明性を重視

山形県庁が Adobe Express を選んだ理由は、素材の多様性と権利面の透明性でした。「機能面では、テンプレートに素材を組み合わせてつくるという点に関して他のツールと変わらないのですが、素材の数が多く種類も多岐に渡ることが良かった点です。さらに、それらの素材がすべてアドビ一社から提供されることが、権利面に関して職員にとってわかりやすいのではないかと考えました。異なる提供者から素材を集めて使用すると、それぞれに固有の規約があるため職員が混乱する原因になるかもしれないという懸念がありました」と廣谷氏は話します。

ワークショップに参加した職員からは、「Adobe Express は直感的に操作できる」、「Adobe Express のテンプレートや素材を活用することで時間短縮につながる」、「デザインに悩む時間が短縮される」と、広報物を制作する際の業務効率化を期待する声が上がりました。

また、参加者からは、「Adobe Express で利用規約上できること、できないことを具体的にしてほしい」のように、コンプライアンス意識の高さが感じられる質問もありました。こうした声に明確に答えられる権利面の透明性が、自治体としてツールを選択する上で重要視されたのは当然と言えるでしょう。

来年度に向けて

「今年度、初めて導入したということで、まずはいろんな人に触ってもらうのが大事だと思っています」と廣谷氏は言います。「デザインの検討や制作に要する時間の短縮にメリットがあるだろうと期待していますので、利用者の声を集めながらそうしたメリットを多くの職員に理解してもらい、利用する職員を増やしていきたいと考えているところです。また、実際にAdobe Express で作成されたコンテンツを収集して、Adobe Express を利用している職員全員に共有する仕組みの検討も行いたいと考えています」

江口氏は廣谷氏の発言に付け加えて、次のように語りました。「Adobe Express を導入したものの、何もフォローをしないと職員の間で利用が広がっていかないのではないかという危惧もあります。そこで、利用拡大のための取り組みとして、庁内で活用コンテストのようなものを実施できたらと考えています。他には、広報広聴推進課から使い方のヒントや上手につくった人の事例などを定期的に紹介して、職員の意識が高まるように継続して働きかけていきたいと考えています」

そして、県庁内でフィードバックを収集しつつ、運用の効率化や来年度の Adobe Express の活用範囲の拡大を検討していきたいという考えです。「こうした施策を通じて広報マインドが高い職員の輪を広げていって、県庁全体としての広報のスキルアップを目指していきたいと考えています」と江口氏は今後の抱負を述べました。