実践Acrobat AI アシスタント活用術【前編】契約書の要約や売上分析も

仕事でAIを活用するのが当たり前になりつつある昨今。とはいえ、業務の一部でしか使いこなせていない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、フリーランスのSNSコンサルタント、Aさんの視点から日々の業務でのAdobe Acrobat AI アシスタント (以下、AI アシスタント)の活用法をご紹介。

Aさんの一週間の業務を追いながら、AI アシスタントを使った業務効率化のヒントをお届けします。

・月曜日:さまざまな形式の資料ファイルをまとめて要約

・火曜日:第三者目線から、自作の提案資料にフィードバック

・水曜日:自分にとって不利な内容がないか契約書を分析

・木曜日:PDFの内容を抽出し、転記作業をスムーズに

・金曜日:請求書をまとめて読み込ませた売上分析

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Aさん:フリーランスのSNSコンサルタント(2年目)。 インターネット広告代理店、アパレル会社でのEC運営経験を経て、フリーランスのSNSコンサルタントとして独立。SNSは仕事でもプライベートでも常にチェックしているが、契約書のチェックにはやや苦手意識がある。

形式がバラバラの複数ファイルをまるごと要約し、リサーチ時間を大幅に短縮!

【月曜日】

先日、クライアントからオリエンがあった依頼は、新しく発売する予定の健康食品のプロモーション。SNSの運用戦略を立てるうえで、まずは業界動向や製品にまつわる情報を集めます。

集める資料はページ数が多く、PDFやWordなどファイル形式がバラバラ。そのため、これまでは一つひとつを読み込むのにかなり時間がかかっていました。

ですが最近はAI アシスタントに要約してもらい、資料のポイントをサクッと押さえることにしています。

やり方は簡単。まずは、Acrobatのホーム画面の「ファイルを選択」から該当データを全て選択し、ファイルを選択後に「開く」ボタンをクリックします。AI アシスタントは、WordのほかにPowerPoint、テキストメモ(.txt,.rtfなど)にも対応していて、データを読み込ませるときにファイル形式を変える手間がありません。

ファイルが開いたら、画面右上にある「AI アシスタントに質問」から「これらは、これから携わる新規案件のリサーチ資料です。見出しを付けて500文字以内で要約してください」と入力。

ファイル形式の違う資料を横断的に分析して、業界の現状から具体的な市場動向まで3つの要点に絞り込んでまとめてくれました。

AI アシスタントの回答の番号部分にカーソルを合わせると引用元が表示されるので、「この部分はどこに記載があるのかな?」と思ったときもすぐに元の資料をたどることができます。

第三者の視点から、自作の提案資料の内容チェック。まだまだブラッシュアップの余地はありそう

【火曜日】

今日は、クライアントの自社ブログ記事をSNSで拡散するための提案資料を作成。準備はばっちり!と言いたいものの、提出する前に内容を客観的にチェックしておきたいところ。そんな時はAI アシスタントに資料のポイントを整理させつつ、クライアントから想定される指摘を確認するようにしています。

例えば、「この提案資料の要点・企画の意図を教えてください」と質問すると、目的やターゲット層、SNSの方向性などの要点を整理するほか、記事ごとの訴求ポイントやトレンドを意識した企画の意図までまとめてもらえます。

自分がこの資料で伝えたかったポイントとAI アシスタントの回答がほぼ一致していたので、第三者の視点から見ても、要点に大きなズレはなさそうです。

続いて「この提案資料に対して、クライアントから想定される指摘や質問も教えてください」と質問。

自信を持って作った資料でしたが、AI アシスタントからは、ターゲット層が広すぎることや、KPI・競合分析の詰めの甘さ、記事内容が季節性と合っているか、などの指摘が挙がりました。どれも痛いところを突かれていて、思わず納得してしまう内容ばかり。

AI アシスタントは読み込ませた情報だけを参照して回答するので、この資料には提案にあたって必要なデータが足りていなかったり、クライアントには言葉足らずで伝わらない部分があったりと改善点が見えてきました。提案前に、もう少し内容を練り上げる必要がありそうです。

難解な契約書のポイントを整理し、自分に不利な内容がないかチェック

【水曜日】

今度、新たに一緒に仕事をするクライアントから業務委託契約書が届きました。大事なことなのできちんと理解しておかないといけないけど、正直、契約書って特有の硬い言い回しが多くて読むのが苦手...。そこで、AI アシスタントで内容の要約を試してみました。

AI アシスタントはセキュリティポリシー上、リスクを最小限に抑える設計がされています。アップロードした情報やAIとの対話内容は学習に利用されず、データも削除されるので安心して利用できます。

AI アシスタントはAcrobatでファイルを読み込んだ時点で要約と重要事項を抽出してくれますが、ここではAI アシスタントに「この契約書の要点とリスクを、分かりやすい文章に変換してリストアップしてください」と質問。

すると、業務内容や業務委託料、著作権や支払い条件などの基本事項をすぐに要約してくれました。

続いて、この契約書に自分(受注者)にとって不利な内容が含まれているか把握したいので「受注者にとってリスクになり得る点を挙げてください」と質問。

著作権が無償でクライアントに渡ることや契約期間中の中途解約のリスクなど、複数の項目を整理してリストアップしてくれました。

確認したところ、大きな問題はなさそうなのでこのまま契約を進めることにします。

月末の売上管理。レイアウトを崩さずPDFの請求書の内容をコピペ


【木曜日】

毎月の売上を確認するため、月末にはクライアントに送った請求書の金額を自分用のExcelシートに転記して、売り上げを整理する作業をしています。

ただ、請求書をそのままコピペすると、列が崩れたり文章がうまく貼り付けられなかったりと、毎回フォーマットを整えるのに時間がかかっていました。

そこで活躍するのがまたまたAI アシスタント。請求書の内容をExcelにそのまま貼り付けられる形で出力させて、作業時間を大幅に短縮しています。

今月分の3つの請求書データをAcrobatで読み込み、AI アシスタントに「全ての請求書のクライアント・品目・金額を、Excelにそのままコピペできるように表形式にしてください」とリクエスト。

すると、AI アシスタントがそのままExcelにコピペできるように表形式でアウトプットしてくれるのです。

AI アシスタントの回答をExcel(Google スプレッドシート)にペーストすると、レイアウトを崩さずにセルに情報を転記できました。複数の請求書を一度に入力できるので、手入力の手間がなくなり、収支の把握や計算もしやすくなります。

さらなる売上アップを目指して、売上の内訳を分析する

【金曜日】

もう年末も近づいているので、そろそろ今年の売上を見直しておくことに。来年はさらに利益を伸ばせるよう、売上の品目を分析することにしました。

まずは先ほどと同様に、1か月分の請求書をAcrobatに読み込ませて「品目ごとにまとめて整理してください」とリクエスト。

すると、1か月分の請求書の内容を項目別に整理されました。この表をExcelにコピペすると、どの業務をどのクライアントに請求しているのか一目でわかります。

別のファイルに出力せず、AI アシスタントへ質問するだけでも売上分析を進められます。「合計の売上が一番大きい品目は?」と質問したら、即座に回答がありました。

ほかにも年間の請求書をまとめて読み込んで「○○社からの売上が高かった月を教えて」などと質問し、データを多角的に分析するようにしています。

使い方は十人十色。機密性の高い資料も安心して扱えるAI アシスタント

ここまで、AI アシスタントを使ったAさんの業務風景を紹介してきました。

AI アシスタントは読み込ませたデータをAIの学習データとして利⽤せず、対話の内容も削除されるため、さまざまな業務で安⼼して使えるのも魅⼒です。

最後に、今回Aさんが活用したシーンと、AI アシスタントに投げかけた質問(プロンプト)を振り返ってみましょう。

・複数ファイルの要点を整理

「これらは、これから携わる新規案件のリサーチ資料です。見出しを付けて500文字以内で要約してください」

・提案資料のブラッシュアップ

「この提案資料の要点・企画の意図を教えてください」

「この提案資料に対して、クライアントから想定される指摘や質問も教えてください」

・契約書の要約とリスクの洗い出し

「この契約書の要点とリスクをリストアップしてください」

「受注者にとってリスクになり得る点はありますか?」

・請求書からExcelのシートに転記

「全ての請求書のクライアント・品目・金額を、Excelにそのままコピペできるように表形式にしてください」

・売上の内訳を分析

「合計の売上が一番大きい品目は?」

「○○社からの売上が高かった月を教えて」

質問の仕方次第で活用の幅はまだまだ広がります。今回の事例をヒントに、AI アシスタントを使ってみてください。

記事執筆:いちじく舞

記事内資料:令和5年国民健康・栄養調査報告「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書食物繊維の必要性と健康(いずれも厚生労働省)

※本記事で使用している契約書、請求書ならびに企業名は、すべて架空の情報です

※この記事は、一般社団法人フリーランス協会のご協力のもとで作成しています。また登場人物は、同協会のご協力を得て実施したアンケート結果を基に構成しています