Acrobatの先へ:新登場のAcrobat Studio日本語版で文書業務はどう進化するか、アドビ社員が徹底解説

こんにちは、ライターのヤマダユウス型です。

PDFを扱うにはAdobe Acrobatが定番ですが、実は2025年12月10日に、Acrobatに新しいプラットフォームが登場しました。

それが「Adobe Acrobat Studio(以下、「Acrobat Studio」)」。スタジオと名のつく通り、PDFをはじめとする、文書業務における課題解決をサポートする統合型のプラットフォームになります。

具体的には、従来のPDF編集機能に加え、AIによるドキュメント内の情報整理からAdobe Expressによる資料や制作物の作成までを幅広くカバー。業務上発生する資料作成、編集、文書読解にかかる時間を大幅に削減してくれます。

...と言われても、なかなか想像しにくいですよね。そこで今回は、

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Acrobatの製品マーケティングを担当されている立川太郎さんに、Acrobat Studioについて語っていただきました。

Acrobat Studioがもたらす変化

インタビュアー:早速ですが「Acrobat Studio」とはどんなものなのか、ざっくりと教えていただけますか?

立川:従来のAcrobatはPDFを編集するのが主な役割でしたが、近年はAI技術の発展に伴い、処理する情報量が非常に増えています。と同時に、アウトプットの速度向上も求められている。Acrobat Studioは、スピーディな情報処理のニーズに応えるものとして生まれました。

インタビュアー:具体的な機能はどういったものでしょう?

立川:PDF編集に加えて、AIが集約した資料の読解をサポートし、分析や考察を深められる「PDF スペース」という新しいワークスペース、そしてAdobe Expressと連携することで、得られたアイデアをスムーズにコンテンツ制作に移行できます。なので一言でまとめると、文書の読解から編集、コンテンツ作成までを一気通貫にサポートしているとも言えますね。

インタビュアー:「読む、まとめる、作る、共有する」といった文書に関する一連の業務、これらをよりスマートに処理できるわけですね。

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立川:これまで、AcrobatはPDF編集ソフトとしてご認識いただいていたと思いますが、Acrobat Studioはそのステージを超えたプラットフォームになりますね。文書を読む時間が多い、あるいは作成する時間が多い方々の利用を想定していて、営業や事務、技術職のマニュアル作成、マーケティングなど、非常に幅広い業務の助けになると思います。

インタビュアー:デザインアプリであるAdobe Expressを含めてはいるものの、特にデザイナーをターゲットとしているわけではないんですか?

立川:そうですね。例えば営業やマーケティング担当者のチラシ作成など、あくまで主眼はビジネスパーソンに使っていただくことを想定しています。例えば企画書や提案書をかたちに落としていく工程などでは、Adobe Expressが役に立つと思います。

新たな情報ハブ「PDF スペース」で、あらゆるファイルを管理

インタビュアー:Acrobat Studioの機能の1つに「PDF スペース」というものがあります。これはどういったものなのでしょう?

立川:Acrobat Studioのホーム画面からすぐにアクセスでき、PDF、Word、Excelなど様々なドキュメントをアップロードできるワークスペースです。スペースはテーマに合わせて複数用意したり、他のユーザーにリンクを共有することも可能です。

▲PDF スペースのトップ画面(ベータ版)

インタビュアー:例えば「人事に関する書類」「◯◯のプロジェクトについて」など、テーマごとに必要なファイルを放り込める場所として使えるわけですね。

立川:そうしてアップロードされたファイルは自動的にAI アシスタントが要約し、インサイト(洞察、ニーズ)を提案してくれます。さらにチャット欄で「◯◯について教えて」と入力すれば、AI アシスタントが引用付きの回答を出してくれます。得られた回答はチャット欄の隣にある「メモ」に蓄積でき、検索のたびに流れていくことはありません。

▲PDF スペースには「メモ」が用意され、AI アシスタントの回答をすぐにコピー&ペーストして保存できる

インタビュアー:なるほど。ユーザーが文書を読む時間を短縮しつつ、欲しい情報に応じた切り口でAI アシスタントに質問できる、と。共有機能で他のユーザーもアクセスできるから、情報の散逸やキャッチアップの手間も大幅にカットできそうです。

立川:PDF スペースの独自の強みとして、アップロードした資料をそのままの状態で確認することができます。

他サービスはアップロードしたファイルのテキスト情報のみを表示、処理することもあり、いわゆる現物を確認することはできません。一方、PDF スペースはオリジナルのファイルを視認できるので、例えば要約時には引用元の資料と照らし合わせて事実確認をしたり、グラフのようなビジュアル要素を確認したりもできます。

インタビュアー:複数ユーザーでアクセスできる点から、チーム内での不要なやりとり(書類の保存場所の確認など)の削減にも繋がると感じました。それこそマニュアルのような、認識に齟齬が出ては困る文書をPDF スペースに置いておけば、インサイトも含めて共通の認識を得ることができそうです。

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立川:よくあるAIを用いた文書処理では、ハルシネーション(生成AIが勝手に情報を作り出してしまうこと)が懸念されます。ですが、PDF スペースの回答はアップロードされたファイルを一次情報として取り扱うため、ハルシネーションが発生しにくいと言えます。

インタビュアー:要約時に引用元も表示してくれるのは、真偽確認においてありがたいですね。

立川:加えて、アップロードしたファイルはAIの学習に利用されないので、セキュリティの高い文書の処理にも対応しています。

インタビュアー:経理や契約関係といった機密性が高く、なおかつ読解に時間のかかる文書をAIにまとめてもらえるのは心強いです。

アレンジ可能なAI アシスタントで、より「欲しい」回答を得る

立川:PDF スペースにアップロードした文書は、チャット欄からAI アシスタントに質問すると回答が得られますが、その時にAI アシスタントの役割を切り替えることも可能です。

▲PDF スペースのチャット欄では、ユーザーが得たい情報に合わせてAI アシスタントの役割を変更できる

インタビュアー:アナリスト、エンターテイナー、インストラクターなど、3種類の役割を変えることで見ている文書は同じでも得られる回答に違いが出る、と。

立川:はい。また、3種類のAI アシスタントに加えて、ユーザー自身でオリジナルの役割を作成し、あらかじめAI アシスタントにカスタム指示を設定することもできます。回答のトーン&マナーが決まっていたり、英語で回答してほしかったりなど、ユーザー側のニーズも様々ですからね。

PDF編集ツールから、活きた情報を引き出すスペースへ

インタビュアー:現在のAcrobatは、高機能なPDF編集ソフトというイメージを持つ方が少なくないと思います。Acrobat Studioの登場で、Acrobatを新たにこう認識してほしいといった願いはありますか?

立川:Acrobat Studioによって、従来のPDFに抱いていたイメージとは全く異なる活用フローが可能になるだろうと我々も認識しています。Acrobatを再定義する時に来ているなと。

インタビュアー:再定義、ですか。

立川:PDFは情報を収めるコンテナです。同時に、Acrobat StudioとAI アシスタントによって、静的な文書ファイルから新たなアイデアや企画に直接的に活かす情報を引き出せる、動的な情報資産になり得ます。

製品としてのAcrobatも、PDFを編集するためのツールから、PDFをインテリジェントな情報ハブとして活用するツールに大きく変わる。今後はアウトプットの形もテキスト、画像、動画や音声などと、ユーザーが好きに選べる時代になっていくと思います。

インタビュアー:思えばPDFというフォーマットとAcrobatが登場したのは1993年とはるか昔です。そこから何度もAcrobatの機能や仕様が変化し、情報密度が高まっている現代のニーズに応えたのがAcrobat Studioであるならば、将来はどのような進化を遂げていくでしょうか?

立川:今のAcrobat Studioは複数のインターフェイスや機能を行き来して動きますが、ゆくゆくは「1つのAIに指示をするだけで、ドキュメントに関する作業とそれに付随する作業もすべて完結」するのが、ひとつの未来の形かなとは思います。

作業効率化が進むと、対面でのコミュニケーションなど、浮いた時間を人間にしかできないことに使えるようになるのかもしれません。業務効率化の行き着く先が人間の繋がりというのは、ある意味で逆説的と言えますね。

インタビュアー:人間にしかできないことにリソースを注ぐための、効率化の過渡期に私たちはいるのかもしれない、と思わされました。今後もAcrobat Studioには新たな機能が追加されるとのことで、ユーザーとして利用できる日が来るのを楽しみにしています。

Acrobat Studioが文書との向き合い方を大きく変える

パソコンの画面 AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

オフィスワーカーにとって、文書を読む行為というのは避けられないものです。その時間を短縮し、得られた情報の共有や整理もスムーズにでき、さらにアウトプットまでの導線もシームレスなら、どれほどのメリットが生まれるでしょうか。

これらをフルパッケージで備えたプラットフォームが「Acrobat Studio」だと言えます。実際に使ってみるまではイメージしにくいかもしれませんが、今後、アドビブログでは実践的な使い方なども紹介していく予定です。ぜひ楽しみにしつつ、皆さんもAcrobat Studioを試してみてくださいね。

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