AI協働型クリエイティブワークフロー変革 | Adobe Firefly Meetup 2025 #3

2025年11月13日、アドビ東京オフィスにてAdobe Firefly Meetup #3が開催されました。企業内のユーザーが抱える生成AIに関する問題や悩みなどをカジュアルに意見交換できるエンタープライズ向けのイベントです。

生成AIの活用は「実験」のフェーズを終え、チーム全体での「実装・運用」がいかにビジネスの成果に結びつくかを問われる新たな段階へと突入しました。今回のメインテーマは「AI協働型クリエイティブワークフロー変革」。スピード、品質、そしてガバナンスを同時に叶えるための、生成AI活用の「現在地」が熱く語られました。

本記事では、楽天グループ株式会社さまおよび楽天カード株式会社さまによる「無限需要」に応えるための量産オペレーションとガバナンス構築、株式会社電通ライブさまによるAI主導型SNS運用、そして株式会社CAMさまによる撮影現場でのリスク低減と時短術など、具体的な実践知をレポートします。

また、Adobe MAX 2025の最新アップデートやマルチモーダル思考のプロンプティング技術など、現場での実装を加速させる実践的なノウハウと共に当日のセッションの模様を振り返ります。

もくじ

  • Adobe Firefly最新アップデート
  • 生成AI最新動向とAdobe Fireflyのベストプラクティス
  • AI時代に「どう作るか」を問い直す。
  • AI主導型SNSコンテンツソリューション
  • AIが変える撮影現場の未来
  • 「実験」から「実装」へ。問われるのはAIと共に描く未来の解像度

Adobe Firefly最新アップデート

最初のセッションは、アドビの横堀直和氏による「Adobe MAXがやってきた!Adobe Firefly 最新アップデートを一気見!」です。ここではプレゼンテーションの内容を抜粋してまとめたいと思います。

Firefly Design Intelligence

Adobe MAX 2025では、生成AI時代の到来を象徴する多数のアップデートが公開され、デザイン制作やブランド運用の未来像が明確に提示されました。

最初に発表されたのは企業向けの新ソリューション「Firefly Design Intelligence」。アドビとコカ・コーラ社の共同イノベーションである「Project Fizzion」が正式に製品化されたものです。

このシステムの核となるのは、人間の想像力を中心に据えたAI起動型のデザインシステム。ブランドのロゴ、レイアウト、カラー情報、フォント、アイコンといったアセットをAIに学習させることで、ブランドガイドラインを遵守したデザイン生成が可能になります。

プロンプトを入力すると、AIは適切なデジタルアセットを呼び出して配置したり、文脈に応じたキャッチコピーを自動生成するなど、統合的なサポートを行います。

アドビとコカ・コーラ社の共同イノベーション

横堀氏が強調したのは、デザイナー自身がこのAIをトレーニングできるという点です。ブランドガイドラインに沿ってAIに学ばせることで、様々なバリエーション作成が可能となり、デザインに最適なアセットの選択やコンテクストに応じて生成されるキャッチコピーまで、統合的に支援してくれる仕組みだと解説しました。

3つのモデルでクリエイティブニーズに対応

続いて、クリエイターが状況に応じて最適なAIを選択できる「複数のAIモデル活用戦略」について解説。アドビは独自のAIモデル「Adobe Firefly」を持っていますが、GoogleやOpenAIなど、様々なパートナー企業の生成AIモデルも活用できるようになっています。

様々なパートナー企業の生成AIモデルが活用できる

モデルごとに強みが異なるため、用途に応じて最適なモデルを切り替えながら制作を進められるメリットがあります。商用利用の安全性を重視するFireflyと、表現力の高い外部パートナーモデル、そしてブランド専用に最適化されたカスタムモデルが共存することで、より広い領域をカバーする制作ワークフローが実現します。

会話型AIアシスタントが制作体験を刷新

今回の発表で大きな話題となったのが、Adobe ExpressとPhotoshop Web版に搭載される会話型のAIエージェント機能「AIアシスタント(ベータ版)」です。高度な推論能力を持っており、全体的な会話の流れを汲みながら最適な提案などを行ってくれます。

Adobe ExpressとPhotoshop Web版に搭載される会話型のAIエージェント機能「AIアシスタント(ベータ版)」

横堀氏によるデモンストレーションでは、アップロードした人物写真に対して「背景を屋外にして」「髭を剃ってすっきりさせて」と指示するだけで、AIが画像を修正する様子が披露されました。また、カフェのデザインテンプレートにおいて「コーヒーフロートをオレンジジュースに変えて」と指示すると、画像だけでなく、テキストや配色、アニメーションまでが文脈に合わせて一括変更されるなど、強力な支援機能が紹介されました。

従来のクリック主体の編集から、会話しながら作る制作体験へと大きく変化しており、初心者からプロまで幅広く恩恵を受ける機能だと言えます。

FireflyとCreative Cloud 主要製品の機能強化

FireflyやPhotoshopなどの主要製品のアップデートについても紹介。Fireflyの最新モデル「Firefly Image Model 5(プレビュー)」がリリースされ、プロンプトベースでの編集が可能となりました。高解像度出力、テキストレンダリングの品質改善、人体構造表現の精度向上なども実現しています。

また、Firefly Video Editor(ベータ版)が新たに実装され、動画作成と編集が一体化しました。サウンドトラック生成(ベータ版)も追加され、スタイルタグを適用して好みのトラックを作成できるようになっています。

Fireflyの最新モデル「Firefly Image Model 5(プレビュー)」がリリースされた

デスクトップ版のPhotoshopについては、Gemini 2.5 Flash Image (Nano Banana) などのパートナーモデルが使用可能となり、異なる画像を自然に組み合わせたり、人物にレインコートや帽子を着せるなど、高度な編集が容易になりました。さらに「調和」機能を使えば、合成した素材の影やライティングをワンクリックで背景に馴染ませることができ、合成写真特有の違和感を瞬時に解消することが可能です。

操作性の改善、AIイノベーション、そしてクリエイティブツールとの連携強化が今回のアップデートの特徴

その他、Illustratorのターンテーブル機能、Lightroomの不要物を除去できる機能、Premiereのメディアインテリジェンス、オブジェクトマスキングなどの新機能について紹介されました。

横堀氏は、操作性の改善、AIイノベーション、そしてクリエイティブツールとの連携強化が今回のアップデートの特徴だと強調し発表を締めくくりました。

参考記事:Creative Cloud最新情報をサクッと確認 MAX 2025アップデート

https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/11/05/cc-creativecloud-october-2025-update-list

生成AI最新動向とAdobe Fireflyのベストプラクティス

2つ目のセッションは私(境)が Adobe Community Evangelistという立場で「生成AI最新動向とAdobe Fireflyのベストプラクティス[2025年11月版]」と題して「ビジュアルプロンプティング」や「構造化プロンプティング」、映像制作の最先端事例を紹介し、私たちが新しいクリエイティブの潮流をどのように捉え、AIと共に創造力を拡張していくのか解説しました。

複数画像のリミックスで理想の画像を生成

コラージュメソッドは、指定した複数の画像をリミックスする手法です。GoogleのNano BananaやByteDanceのSeedream 4.0などの高性能モデルで実行することができます。例えば、人物の画像、プロダクトの画像、背景となる画像を用意し、これらを「一貫性を保持したまま」違和感なく合成することで、意図したシーンを生成できます。

ただし、参照画像が増えすぎると生成精度が低下する傾向があるため、リミックスを繰り返しながら段階的に精度を上げていくアプローチが推奨されています。

コラージュメソッドは指定した複数の画像をリミックスする手法

視覚的注釈で意図を明確に伝える

ビジュアルプロンプティングは、参照画像に対して矢印や囲み線などの視覚的注釈を追加し、AIモデルに「どこを/なにを/どうしてほしいか」を明示的に指示する手法(※GoogleのNano Bananaで有効な手法です)。

文章で細かく説明するよりも、Photoshopで普段行っている編集作業の延長でAIに意図を伝えられるため、まさにクリエイター向けのアプローチといえます。

例えば、マガジンを読む人物の画像、ファッション雑誌の表紙、裏表紙の3つの素材に、Photoshop上で矢印を描き込み、それらを融合させる指示を与えるだけで、表紙を差し替えることが可能になります。

ビジュアルプロンプティングは、参照画像に対して矢印や囲み線などの視覚的注釈を追加し「どこを/なにを/どうしてほしいか」を明示的に指示する手法

構造化プロンプティング

本セッションのハイライトのひとつが「構造化プロンプティング」です。自然言語のプロンプトでは「霧深い森を歩くハイカー」といった指示はできても、「どの単語がどの要素にどれだけ強く影響するか」はAI任せでした 。これではカメラワークや照明、役者の演技、尺などを厳密に指定することが難しいため、JSONやYAML形式でプロンプトを記述する手法が提案されました。

この手法はGoogle Veoなどの高性能モデルに有効なもので、JSONプロンプトを記述するための専用アプリを開発する必要があり、現時点では一定の技術的ハードルがあります。

JSON形式で記述された構造化プロンプティング

ノード型ワークフローへの必然的な移行

AIモデルの種類は増え、特徴も多様化し、それぞれ最適なプロンプト技法が異なります。さらに、参照画像の準備や検証作業も膨大です。こうした複雑さから、もはや一人のクリエイターがすべての生成AIモデルを使いこなし、最適化していくのは現実的ではありません。

そこで注目されているのが、ノード型のワークフロー構築環境です。アドビがAdobe MAX 2025で発表した「Project Graph」をはじめ、FigmaやRunway、Freepikなど各社が次々とワークフロー構築環境を公開しています。

今後主流になっていくノード型ワークフロー構築環境

ノードグラフとは、機能を線でつないで、データの流れや処理の順序を視覚的に構築する手法。この概念は、3DCGソフトウェアやゲームエンジンでは以前から使われてきましたが、様々なAIモデルを提供しているAIアグリゲーターはこれをクリエイティブ作業全体に適用しようとしています。

ノード型ワークフロー構築環境の登場は、生成AI活用におけるワークフロー構築の重要性が業界全体で認識されていることを示しています。

テクニックはすぐ陳腐化する

本セッションで取り上げたコラージュメソッド、ビジュアルプロンプティング、JSONプロンプティングは過渡期のテクニックであり、数か月で別の最適解が生まれてしまう可能性があります。

特定のテクニックよりも、技術変化に対応できる制作パイプラインをどう構築するかがより重要になってくるのは間違いなさそうです。

AI時代に「どう作るか」を問い直す。

SNSのアルゴリズムや広告配信技術が目まぐるしく変化する現代。昨日まで効果のあったクリエイティブが、今日には通用しなくなる。そんな「正解」が短命化する時代に、企業はどう向き合うべきなのか。

ゲストセッションでは、楽天グループ株式会社 マーケティングディビジョン オペレーティングモデル統合部 ジェネラルマネージャーの鈴木英介氏、シニアマネージャーの村瀬恭史氏、クリエイティブデザイン戦略部 楽天デザインラボ インターメディアクリエイティブグループ マネージャーの宮下尚久氏、楽天カード株式会社 マーケティング本部 プロダクトデザイングループ アシスタントマネージャーの澤村皓基氏、そしてクリエイティブデザイン戦略部 ジェネラルマネージャーの鍋嶋靖弘氏の5名が登壇。

AIを活用したマーケティングとクリエイティブ制作の変革について、その全貌が語られました。

AI時代の「量×質」の課題をどう乗り越えるか

まず、鈴木氏が現在のマーケティング環境について「昨日の正解が今日のノイズになっていく」と表現し、人力中心の制作体制が限界に近づいているという危機感を示しました。これまでは「限られた人手と時間で量をどう増やすのか」が課題でしたが、これからは「AIを活かして無限に対応できる体制へ」と考え方を転換していると説明しました。つまり、「仕組みを設計して増やす」ことをテーマにしているということです。

「創ることが追いつかない時代に、どう創るか」

この方針のもと、楽天グループ マーケティングディビジョンでは組織を再編成。クリエイティブの質を追求する「クリエイティブデザイン戦略部」と量への対応を担う「オペレーティングモデル統合部」の2つの部署を設け、総力戦で臨む体制を構築しています。

AI導入の成熟度を可視化する

続いて登壇した村瀬氏は、「量と質の両立をこれまでになく高い次元で求められる時代に直面している」と語り、理想の未来を実現するための進化の道筋を5つのステップで説明しました。

一つのキャンペーンやクリエイティブを作って終わりではなく、一人ひとりに最適化された表現をリアルタイムに、大量に生み出していくことが求められているということです。

マーケティング&クリエイティブが目指す未来(AI Levelの定義)

最終的には「レベル5の世界観、AIが自ら学習して最適化するような自走型システムの実現」を目指しており、それによって業務全体の効率化と品質の安定化の両立を実現したいと語りました。

「モノを作る」ことから「仕組みを設計して増やす」ことへ。楽天グループが組織全体で制作のパラダイムシフトに挑んでいる様子が伺えました。

「資産の統一から表現の統一へ」というビジョン

次に登壇した宮下氏は、楽天デザインラボの制作内容を紹介する映像を流した後、グループ内で制作需要が肥大化する中、多くの外部パートナーやクリエイターが関わることで「ビジュアル表現のばらつき」が生じているという課題を指摘しました。

これまで楽天グループではロゴやフォントといった静的な資産を管理してきましたが、AI時代においてはそれだけでは不十分。そこで掲げられたビジョンが「資産の統一から表現の統一へ」です。

会場の注目を集めたのは、Adobe Fireflyのカスタムモデルを活用したデモンストレーションの解説でした。楽天グループ独自のブランドスタイルやトーンをAIに学習させることで、誰が生成しても一貫した「楽天らしい」クリエイティブが出力可能になります。

宮下氏は、AIに最短実現を担わせることで「クリエイターは何を伝えるか、なぜ伝えるかという本質にフォーカスできる」と強調。デザイン組織が「資産を作る組織」から「体験を設計する組織」へと進化していく決意を示しました。

Adobe Fireflyのカスタムモデルを活用

14色の背景画像をAIで量産、コスト削減と品質を両立

続いて登壇したのは、楽天カードのデザインチームを担当する澤村氏。「マイカラーセレクション、好きな色で私らしい毎日を」というキャンペーンを紹介しました。2025年4月に14色の新しいデザインのクレジットカードを追加。楽天カードはZ世代をはじめ個性を重視する層の獲得にも力を入れており、多様な好みに応えるクレジットカードのデザイン展開を進めているとのことです。

14色のカードカラー展開に合わせ、それぞれの色に対応した背景画像を制作するプロジェクトにおいて、当初の見積もりではAIを使用しなければ約30時間の工数が必要とされていました。ビジネスインパクトを考えると、通常であればコストが見合わず断念しかねない案件です。

しかし、AI活用によってこの壁を突破しました。 楽天は独自のカスタムモデルのAIを用意しており、それを用いて企画意図に沿ったプロンプトを作成し、Adobe Fireflyで画像を生成。その結果、14色×2パターンの計28枚を制作したにもかかわらず、1枚あたりの作業時間はわずか15分程度に短縮され、全体で約20時間の工数削減に成功しました。

澤村氏は最後に「最小限のリソースで最高のアウトプットを出す」ことの重要性を強調し締めくくりました。

Rakuten AIを用いて企画意図に沿ったプロンプトを作成し、Adobe Fireflyで画像を生成

質と量の両輪を組織で支える

最後に登壇した鍋島氏は、AI活用による変革が、実は創業時から受け継がれる「楽天主義」に通じていることに言及。楽天グループのクリエイティブ組織は、2025年1月に大きな転換を迎え、冒頭で鈴木氏が説明したように組織を二手に分けました。

鍋島氏は、AI活用によるデザインアウトプットの最適化とPDCAサイクルの確立について図を示しながら説明。AIを前提としたプロセスを組織レベルで回し、質の担保と大量生成の両立を同時に進めるという、国内企業として非常に先進的なアプローチが示されました。

AI時代の楽天グループ内協創・AIとの協創

最後に、楽天グループが顧客向けに提供している「Rakuten AI」の専用ウェブアプリ(ベータ版)を紹介。実際にAdobe Fireflyのカスタムモデルで生成されたアイコンが活用されていることが明かされ、実践が進んでいることを強調しました。

参考:「Rakuten AI」の専用ウェブアプリ(ベータ版)

https://ai.rakuten.co.jp/chat

本セッションを通じて印象的だったのは、楽天グループの包括的なアプローチです。単にAIツールを導入するだけでなく、データ基盤の整備、人材のケイパビリティ向上、プロセスの再設計、そして組織構造の変革まで、あらゆる角度から取り組んでいる姿勢が伝わってきました。

特に「量」と「質」を別々の組織が担当しながら、連携して顧客体験の向上を目指すという体制は興味深いものです。AI時代のクリエイティブ組織のあり方として、一つのモデルケースになるのではないでしょうか。

単なる効率化ではなく、より良い顧客体験の実現という明確な目的に向かっていることが感じられました。

AI主導型SNSコンテンツソリューション

後半はLT(ライトニングトーク)セッションとなり、株式会社電通ライブ コンテンツ&テクノロジー開発部 チーフクリエイティブディレクターの前澤克文氏が登壇し、同社が取り組むAI主導型SNSソリューション「VERTICAL」について紹介されました。

プレゼンテーションの中で特に印象的だったのは、既存の映像資産をAIで再活用するアプローチ。撮影した素材をInstagramに投稿するだけでなく、AIによる加工を施して別バージョンとして再投稿する取り組みです。一つの素材を複数のコンテンツに展開することで、100万ビューを超える結果につながった事例も紹介されました。

AI活用はコスト削減だけでなく、表現の幅を広げ、再利用価値を最大化する方向にも広がっていることがわかります。

A.I.導入によるコンテンツ制作

VERTICALプロジェクトにはアドビ、Googleをはじめとするパートナーが参加しており、電通グループの枠を超えたチーム編成で進められています。

最後に前澤氏は、AI導入の難しさに悩む企業に向けて「まずは小さく導入し、アジャイル的に実践していくことが重要」と語りました。

AIを単なるツールとしてではなく、戦略・制作・分析の全フローに組み込み、ビジネスのスピードと質を変革する「VERTICAL」。今後の展開に大きな期待が寄せられます。

参考記事:AI主導型SNSマーケティングソリューションVERTICAL

AIが変える撮影現場の未来

クリエイティブの現場では、撮影前に「どれだけ完成イメージを共有できるか」が作品の質を大きく左右します。しかし、実際には関係者の間でイメージのすり合わせが難しく、撮影当日にズレが発生してしまうケースも少なくありません。

本イベントの最後のセッションは、株式会社CAM Design Division 執行役員 / クリエイティブ統括の在原教朗氏。エンタメIPの現場で実際にFireflyを導入し、撮影プロセスに大きな変化をもたらした事例を紹介していただきました。

在原氏が担当するのは、アーティストの公式ファンクラブで展開される会員向けコンテンツやグッズ制作。企画から撮影、デザイン、リリースまでをワンストップで行うプロセスの中で、最も課題が大きかったのが撮影工程でした。

撮影現場には多くの関係者が関わるため、それぞれの認識に差が生まれやすく、さらに、リハーサルを行えず本番一発勝負になるケースも少なくないため、結果的に拘束時間が長くなったり、コストの負担が増えていきます。

そこで、制作チームが取り組んだのが、企画段階からFireflyで完成イメージを生成し、提案や撮影の段階で活用するという手法。AIで生成したイメージを参考に、構図、光、衣装、セットなどを事前に確認し、「撮影前に完成写真が見える状態」を作ることができたと述べられました。

最後に在原氏は「Fireflyを活用することで、撮影のリスクを減らしながら、表現の自由を広げられるようになった」と締めくくりました 。

Fireflyを活用した撮影ディレクションの成果

「実験」から「実装」へ。問われるのはAIと共に描く未来の解像度

AI協働型クリエイティブワークフロー変革」をテーマに掲げた本イベントを通じて浮き彫りになったのは、生成AIがもはや目新しいツールではなく、ビジネスの中枢を担うインフラへと進化を遂げたという事実です。

楽天グループ株式会社さまの事例が示した「組織レベルでの構造改革」、株式会社電通ライブさまや株式会社CAMさまが実践する「現場視点でのワークフロー最適化」は、AI活用の本質が「どう作るか(How)」という技術論から「なぜ、何のために作るか(Why/What)」という設計論へと移行していることを強く印象付けました。

単に画像を生成するだけなら、誰でもできる時代です。しかし、ブランドの一貫性を守り、ビジネスの成果に直結させ、そしてクリエイター自身が疲弊することなく創造性を発揮し続けるためには、AIを組み込んだ「新しい仕組み」をデザインする力が不可欠です。

私たちが目指すべきは、AIに仕事を明け渡すことではなく、AIという強力なパートナーと共に、人間の想像力だけでは到達できなかった高みへと駆け上がることではないでしょうか。

今回のAdobe Firefly Meetupは、私たちが次の一歩を踏み出すための羅針盤となる示唆に富んだ時間となりました。実験のフェーズは終わりです。これからは、皆さんの現場で、新しいクリエイティブの実装を始める番です。

Adobe Firefly Meetup 2025 #3の様子