AI時代においてクリエイター保護に必要な「CREATOR法」とは

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AIは、アーティストにとってこれまでにない強力なクリエイティブツールの1つとなる可能性を秘めています。デザイナーやイラストレーターをはじめ、あらゆる分野のクリエイターが新たな可能性を切り拓くことを支援し、アイデア創出の加速や表現の幅の拡大、さらには創作活動に参加するハードルを下げます。アドビは創造性を支援することを使命としてきました。そして私たちは、AIは人間の創造力をさらに高めるための強力な手段であると考えています。しかし、どれほど優れた技術であっても、悪用される可能性はあり、AIも例外ではありません。

現在では、AIを活用することで、誰でも簡単なプロンプト一つで特有のアーティストの作風を模倣した作品を大量に生成できます。そして、それらを本人の許可や対価の支払いなしに、ほぼゼロコストかつ瞬時に市場に流通させることも可能です。これは、今日のビジュアルアーティストが直面している現実の課題です。しかし、このようなAIによる作風の模倣に対して、既存の法制度は十分な保護を提供できていません。

しかし、本日米国で提出されたCREATOR法(Creative Rights for Artists' Technique and Originality Are Reserved Act:アーティストの技法と独創性に対する創造的権利保護法)が成立すれば、この状況は変わります。この超党派の法案は、AIによる作風の模倣からクリエイターを保護し、現行の知的財産制度に存在する法的な空白を埋めることを目的としています。アドビはこの法案を支持しています。

私たちはAIと人間の創造性は対立するものではなく、共に発展していけると信じています。しかし、それを実現するためには、AI時代においてもクリエイターの権利が適切に保護されなければなりません。

法的な空白を埋める

アーティストが独自の作風や美的表現を確立するまでには、長年にわたる努力と経験が必要です。技術を磨き、色彩やトーンの感覚を育み、感情やアイデアを表現する力を身につけながら、製作における無数の意思決定を積み重ねていきます。そうした経験の積み重ねによって形づくられる作風は、誰にも真似のできないそのアーティストならではの創造的な資産となります。多くのクリエイターにとって、それは市場におけるアイデンティティであると同時に、生計を支える重要な基盤でもあります。

例えば、フィラデルフィアを拠点とするイラストレーターのファビオラ ララ(Fabiola Lara)氏は、あるAIプラットフォームが自社のテクノロジーをアピールするため、自身の作風を模倣した生成AI画像を許可なく使用されました。このようにAI画像が容易に生成できることは、彼女のアーティストとしてのアイデンティティや生計を揺るがしかねない課題として受け止められています。

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これは、他の作品から着想やインスピレーションを得ることとは本質的に異なります。問題となっているのは、「なりすまし」とも言える行為です。そして、この問題に直面しているのはファビオラ氏だけではありません。

アーティストたちはこれまでも互いに学び合い、影響を与え合いながら創作活動を発展させてきました。創造的なスタイルは、技術の共有や作品への参照、芸術運動などを通じて進化してきたのです。しかし、AIシステムは今や、従来の芸術的な影響関係とは全く異なる規模と速度で模倣を自動化できるようになっています。既存の法制度は、この新たな現実に十分対応できていません。

現在の著作権法は、アーティストが創作した作品そのものを保護しますが、そのアーティストならではのビジュアルアイデンティティや作風までは保護していません。また、既存の法律や近年提案されている一部の法制度は、声や肖像の保護を扱っていますが、ビジュアルアーティスト特有の美的表現までは対象としていません。AIによる大規模な作風模倣を想定した法制度は依然として存在しておらず、その法的な空白によって、AI時代のクリエイターやアーティストは十分な保護を受けられない状況に置かれています。

CREATOR法が実現すること、そして実現しないこと

CREATOR法は、その法的な空白を埋めることを目的としています。この法案は、ビジュアルアーティストの特徴的な作風を、AIを利用した意図的かつ商業目的のなりすまし行為から保護する新たな連邦上の権利を創設するものです。これにより、クリエイターは損害賠償の請求や、なりすまし行為の差し止めを求めるなど、実効性のある救済措置を利用できるようになります。

重要なのは、この法案の対象範囲が慎重に設計されている点です。対象となるのは、商業的利益を得ることを目的として、AIを利用して意図的にアーティストになりすます行為です。一方で、芸術的な影響やインスピレーション、パロディ、ファンアート、あるいは幅広いAIの研究開発を制限するものではありません。CREATOR法が焦点を当てているのは、特定可能なアーティストの作風を利用した、意図的かつ商業的ななりすまし行為に限られます。

こうしたバランスこそが重要です。人間のクリエイターを保護すると同時に、イノベーションを阻害しないことが求められているのです。

アドビがCREATOR法を支持する理由

AI時代において、クリエイターは自身の作品やクリエイティブアイデンティティがどのように利用されるかについて、実質的なコントロールを持つべきです。アドビは長年にわたり、クリエイターを第一に考えたAI政策を提唱してきました。その中には、制作プロセスの一部としてAIを活用するクリエイターが、著作権保護を受けられる明確な道筋を整備することも含まれています。

私たちは、デジタルコンテンツの透明性向上と、クリエイターやアーティストへの適切な帰属表示とクレジット付与を推進するために、Content Authenticity Initiative(現在6,000名以上のメンバーを擁する)を共同設立しました。クリエイターはこれまで以上に、AI学習において自身の作品がどのように使用されることを望むのかを意思表示するための、Content Credentialsのような実践的なソリューションがこれまで以上に重要となっています。

CREATOR法は、こうした取り組みを補完する新たな仕組みとなり、AIのイノベーションを支えるクリエイターエコノミーが損なわれることなく発展していくための一助となるでしょう。私たちは、この法案を提出したヴァン ダイン議員、クラーク議員、フーシー議員の取り組みを高く評価しています。

彼らが取り組んでいるのは、今日活動するすべてのクリエイターに関わる課題であり、その先には人間の創造性によって支えられるあらゆる業界、ブランド、そしてプラットフォームにも関わる問題があります。私たちは議会に対し、この重要な法案の実現に向けた議論を速やかに進めるよう求めます。

その影響は、クリエイターだけにとどまらない

これはクリエイターだけの問題ではありません。クリエイティブエコノミーは毎年1.2兆ドル(米国GDPの約4.2%)を生み出し、米国経済を支える重要な原動力となっています。その経済を支えるアーティスト、デザイナー、写真家、イラストレーターが、持続的に創作活動を続けられる環境を確保することは極めて重要です。もしAIによるなりすまし行為が、彼らのキャリアや生計を維持する能力を損なうのであれば、その影響はクリエイター個人にとどまらず、社会全体に及ぶことになります。

アーティストの作風は、長年にわたる創作活動の積み重ねによって生み出されるものです。CREATOR法は、その創造的な成果が法的保護に値することを明確に示しています。アドビは、テクノロジーの進歩に法制度が追いつこうとする動きが広がっていることを歓迎するとともに、その実現に向けた取り組みを今後も支援していきます。

※この記事は2026年6月2日(米国時間)に公開された The CREATOR Act is the protection artists need in the age of AI抄訳です。