アドビの認定教員コミュニティAdobe Creative Educator (ACE) Innovator 2025 キックオフミーティングレポート
2025年5月11日、アドビ東京オフィスにて、アドビ認定教員コミュニティ「Adobe Creative Educator Innovator」(以下、ACE Innovator)のキックオフミーティングが開催されました。 全国から集結したクリエイティブとデジタルリテラシー教育の未来を担う先生方による、熱気あふれるプレゼンテーションとディスカッションの様子をレポートします。
ACE Innovator とキックオフミーティング
ACEプログラムの最上位である「Innovator」は、Adobe Expressを中心としたアドビ製品の活用に長けているだけでなく、子どもたちの創造性やデジタルリテラシーを育むことをめざして、教育現場で先進的かつ実践的な学びを実現し、その知見を広く共有している先生方の認定制コミュニティです。
こうした教育界のイノベーターたちは年度更新の認定制で、毎年新たなメンバーを加えて顔合わせや情報交換を行う場がこのキックオフミーティングです。 今回も創設当初からのベテランから、新メンバーまで一堂に会し、和やかな雰囲気の中で幕を開けました。
クレアからのオープニングメッセージ
スペシャルゲストとして登場したのは、アドビのバイスプレジデント上級副社長でグローバルで教育機関向けの販売を統括しているクレア・ダーレイ(Claire Darley)でした。
アドビのクレア
クレアはオープニングスピーチで、多忙な日々を送りながら子ども達のために貢献してくださっている日本の先生方への感謝を述べるとともに、創造性を育む教育が世界を変える力を持つこと、そして今後AIとともに成長していく子どもたちを、アドビと共に導いてほしいというメッセージを伝えました。
新たなメンバーとグローバルサミット
続いて、アドビ教育事業本部 執行役員 本部長の小池晴子より、ACE Innovatorが前身のAdobe Education Leaderプログラムから数えて今年で7年目を迎えることの感謝が述べられました。また、今年新たに4名のメンバーが加わったこと、7月にサンフランシスコで開催されるグローバルACE Innovatorサミットに参加する3名の先生の名前も紹介されました。
新たなメンバーを紹介するアドビ小池
Adobe Creative Cloud 最新情報
次はアドビ製品の最新情報です。
Creative Cloudエバンジェリストの仲尾毅による『Adobe Creative Cloud 最前線』では、生成AIであるFireflyの新機能が次々と紹介されました。Ultra品質オプションによる画質向上、動画モデル、ベクター生成、サードパーティ製AIエンジンとの連携など、加速度的に進化するFireflyの姿に注目が集まりました。
特に会場がどよめいたのは、開発中の動画翻訳機能でした。話している人物の映像から、多言語対応の音声が自動生成され、声質や口の動きも自然に調整されるという、まさに未来を感じさせる技術です。
「2時間分の内容を20分に詰め込んだ」というアドビ仲尾によるプレゼンテーション
さらに、共同作業向けの新機能として開発中のFireflyボード (Beta)も紹介されました。これは複数ユーザーが同時に作業できるツールで、画像やカラースウォッチ、テキストなどを持ち寄り、生成AIを活用してビジュアルアイデアを出し合い、複数のバリエーションを生成できるというものです。 生徒たちのアイデアが無限に拡がる、協働学習の新たなプラットフォームになる可能性が示唆されました。
このほか、Adobe Photoshopのオブジェクト選択ツールや背景削除機能の進化、Adobe Premiere Proの生成延長機能など、すぐに活用できるアップデート情報も続々と披露されました。 デモを見てすぐに自身のPCで試すメンバーの姿も多く見られました。
Adobe Express 最新情報
さらに、デザイン製品担当の岩本崇からは、多くの教育現場でも活用されているAdobe Expressの最新情報が紹介されました。 進化のスピードが最も早いとされるこの製品について、岩本は自らのプロフィール画像をAdobe Expressで作成しながら、新フォントや画像フィルター、ダイナミックアニメーション、自分を録画、スピーチの強調、字幕の生成・翻訳など、多彩な新機能をデモンストレーションしました。
軽快な口調で楽しいデモを見せてくれたアドビ岩本
普段からAdobe Expressを使いこなしているACE Innovatorメンバーにとっても未体験の機能が多く、新鮮な驚きに満ちたひとときとなりました。
ACE Innovator による実践紹介
後半は、ACE Innovatorのメンバーの参加型パートに移ります。
最初に行われたのは、各自が今年度の応募の際に作成した自己PR動画を上映し、1分間で解説を加える鑑賞会でした。プレゼンテーションにナレーションを吹き込んだものや、キャラクターアニメーションを用いたものなど、それぞれが個性を発揮。 アドビツールを活用した創造的な学びの実践やその背景が語られる映像が続き、会場全体に共感の輪が広がっていくのを感じることができました。
自己PR動画の解説をする先生方
また、発表を聞く他のメンバーの感想や質問は、Adobe Expressの共有ドキュメントにリアルタイムで書き込まれました。
実践発表:「高校生クリエイティブ動画ワークショップ」神奈川大学附属中学校
続いては、ACE Innovatorを代表して2人の先生による実践発表です。
まずは、神奈川大学附属中・高等学校 校長の小林道夫先生から2024年2月に産学連携で実施した福祉車両をテーマにした動画制作ワークショップについての発表がありました。
神奈川大学附属中・高等学校 校長の小林先生
「生徒たちは、まず福祉車両について学び、実際に乗車・操作体験をしました。その後、プロの映像クリエイターからテクニックを学び、グループで企画から撮影、Adobe Expressで編集、プレゼンテーションまで行いました。」と小林先生は語ります。
生徒からは「企業の人と直接話せて新鮮だった」「Adobe Expressは初心者にも使いやすく、共同編集もスムーズだった」といった声が寄せられたとのことです。
小林先生は「生徒たちが実社会のテーマに触れ、真剣に話しあい、協働作業を通して成長する貴重な機会となりました。これからもこうした創造的な活動を継続していきたい。」と報告を締めくくりました。
▶詳しくはこちらのレポートをご覧ください。
実践発表:「Adobe Fireflyを活用した高等学校情報Iの授業実践」東奥義塾高等学校
次はこの4月から東奥義塾の塾長(校長)になられた井上嘉名芽先生による学会発表の共有。
井上先生は「この授業では、まず生徒たちがAIが人間の知能を超えると言われる2045年の未来社会をイメージした画像を作成します。その画像を元にそれぞれの思い描く未来の風景についてディスカッションを行い、発表することで考察を深めました。」と語ります。
東奥義塾塾長の井上先生
授業後に行われたアンケートでは、ほとんどの生徒がAIを使うことで「2045年問題」への理解が深まったこと、またAI技術が進化することによる倫理的な問題や未来の課題についても考えるきっかけになったことが示されていました。
井上先生はこのように述べて発表をまとめました。「今回の実践を通して、AIを教育に活用することで、生徒たちの未来を創造する力や、AIと共存する社会について主体的に考える力を育てることができる可能性を感じました。今後の課題としては、長期的な学習効果の検証や、他の教科でのAI活用について検討していきたいと考えています。」
DXハイスクールパッケージの提供
最後はACE Innovatorの協力のもと始動したプロジェクト「DXハイスクールパッケージ」についての共有です。
文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」などにより、全国の多くの高校でCreative Cloudが導入されている一方で、十分に活用できていないという声も聞かれます。 そこで、アドビは特別な授業パッケージを提供するプロジェクトを立ち上げました。
神山まるごと高専/ドルトン東京学園の新井先生
今回はレーザーカッターを使ったものづくり出前授業を開発中の神山まるごと高専 新井啓太先生、および動画編集出前授業を開発中の聖徳学園中学・高等学校 品田健先生から、具体的な授業内容についての説明が行われました。
グループディスカッション ”We Love Express”
最後のプログラムはグループディスカッションです。 お気に入りの機能、好きなところ、改善ポイントをテーブルごとに意見交換し、Adobe Expressの共有ファイルに記入した上で順番に発表していきます。
白熱のディスカッションを経て発表へ
代表的な意見としては、著作権に配慮した素材の利用や、生成AIによる不適切なコンテンツの出力を抑制する仕組みが、教育利用に不可欠な要素として高い評価を得ていました。 また、直感的な操作性、豊富なテンプレート、コンテンツ制作に関わる様々な機能が充実している点も好評です。 改善要望としては、さらなる機能強化やデバイスによる差異の解消などの意見が寄せられました。
まとめ
4時間半にわたる全プログラムが終了した後には、リラックスした雰囲気の中での交流タイムが設けられました。 先生方は、この機会を活かして連絡先を交換したり、日頃の教育実践に関する悩みや成功体験を共有したりと、積極的にコミュニケーションを図り、親交を一層深めていました。 この日生まれた繋がりが、今後のACE Innovatorの活動をさらに豊かで実りあるものにしていくことは間違いありません。
懇親会で談笑する先生方とクレア
Adobe Creative Educator Innovator 2025 キックオフミーティングは、参加した全てのACE Innovatorおよび関係者にとって、学びと刺激に満ちた実りある一日となりました。 ここで共有された最先端の知識、斬新なアイデア、そして教育への情熱は、アドビの先進的なテクノロジーと融合することで、日本の教育現場におけるクリエイティブな学びの質を飛躍的に高め、子どもたちの未来を明るく照らしていく原動力となるでしょう。