国立大学法人北海道大学で13年目のAdobe Education Forumを開催!

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2025年6月24日、アドビの教育イベント「Adobe Education Forum 2025 -Creative Campus Summit-」が開催されました。今年の会場は国立大学法人北海道大学。緑豊かなキャンパスに全国から大学教職員が集まり、「生成AI時代のトランスファラブルスキル育成の視点」をテーマとして、デジタルツール活用の教育的意義や、具体的な活用事例など、さまざまな角度から活発な議論が行われました。

北海道大学の近未来戦略を加速させるAdobe Creative Campus への加盟

Adobe Creative Campusとは、学生のクリエィティブなデジタルスキルの育成にコミットする高等教育機関が加盟する世界的コンソーシアムです。加盟機関はAdobe Creative CloudやAdobe Expressなどを全学生が活用できる環境を整え、授業内外での積極的な活用を推進して、革新的な教育の充実を図っています。

今回のシンポジウム冒頭では、2024年10月に日本の国立総合大学として初めてこのAdobe Creative Campusに加盟した北海道大学の理事・副学長である山本文彦先生より、同大学のビジョンとデジタルスキルの関わりについてお話をいただきました。

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北海道大学の山本文彦先生によるWelcome スピーチ

北海道大学は近未来戦略「HU VISION 2030」を掲げ、教育・研究の卓越性である 「Excellence」と、教育・研究を社会に広げ地域課題を解決する社会展開力「Extension」の2つの要素を循環させることを目指しています。特に今後「Extension」を加速させるためには、AIの活用やデジタルリテラシーを含むトランスファラブルスキルの育成が重要な役割を果たすというご説明がありました。

大学が直面する挑戦とデジタルスキル

続いて、アドビの教育ストラテジー部門よりSebastian Distefanoが登壇し、現代の高等教育機関や学生が直面する挑戦に、創造的なデジタルスキルがどう貢献できるかという見解を示しました。また、日本国内のパートナーである立命館大学、北海道大学、東京電機大学それぞれが、各自のカルチャーに合わせてユニークなアプローチでアドビを活用していることにも言及しました。

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アドビ・Distefanoによる世界のAdobe Creative Campusに関する報告

創造性×生成AIが伸長するのはデジタルスキルだけにとどまらない

次に、同部門のManuela Franceschiniが「教育における創造性とAIについての調査レポート2025年版」の結果を概観しながら、創造性を育むことが学生の学業成績だけではなく、レジリエンスや好奇心、問題解決能力など幅広い認知スキルにつながることを示しました。

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アドビ・Franceschiniによる報告

なぜ、いま、トランスファラブルスキルなのか

続いて、北海道大学 情報基盤センター 教授の重田勝介先生より「課題解決型人材のトランスファラブルスキルとは? デジタルで創ることを通して学ぶ意義」と題したご講演をいただきました。

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北海道大学の重田勝介先生

ご講演の中では、トランスファラブルスキルの育成は「未来への適応力の育成」「学問領域を超えた課題解決力の育成」「成果(キャリア発達)への貢献」といった側面から重要であること、高等教育機関ではすぐに応用可能な「近い転移」だけではなく、将来どこかの地点で何らかの場面で応用できる「遠い転移(PFL:Preparation for Future Learning)」の促進も期待されることが述べられました。そのうえで、トランスファラブルスキルを下支えするものとして、デジタルリテラシーの育成が必要不可欠であることが強調されました。

拡充し続けるデジタルツール活用の現在地

続いて、立命館大学 副学長 三宅雅人先生から「デジタルツールを活用したマルチモーダルな学びと創発的人材育成」という題目でご講演いただきました。立命館大学は昨年の本フォーラムの開催地であり、日本で初めてAdobe Creative Campusに加盟した大学です。日々多方面に拡充し続けている同大学のAdobe Express活用の取り組みについてご紹介いただきました。

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立命館大学の三宅雅人先生

最近の活用例として、立命館大学と小学校が連携して行なった特別授業、同大学のプロジェクト型授業「QUITIVA」での活用など、授業内での事例のほか、大学と企業や社会をつなぐ共創プラットフォーム「TRY FIELD」での活用など、幅広い場面での創造的な活動にAdobe Expressが活用されています。

また、学生の視点からアドビ製品の活用と、周囲のデジタルリテラシー向上を推進する役割を担うAdobe Student Ambassadorを認定し、その学生たちがデジタルツール活用の中心的役割を担っていることも紹介されました。

北海道大学 Digital Creative Grids(グリッズ)を見学

続いて、2025年5月に北海道大学北図書館内に開設された「Digital Creative Grids(通称グリッズ)」を参加者全員で見学しました。グリッズは、デジタルリテラシー育成のハブとして設置されたもので、アドビが提供する Adobe Express をはじめとした各種クリエイティブツールの活用や、デジタルツールを活用する人材の環流を促進する、開かれたスペースです。広大な北海道大学のキャンパスの中でも、初年時の授業が数多く行われるエリアにある北図書館内に開所されました。廊下との境は一面ガラス張りになっていて、とても開放的なつくりとなっています。

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北海道大学北図書館内のDigital Creative Grids(グリッズ)

Adobe Expressを活用した実践事例

このセクションでは大学の授業や特別プロジェクトでのAdobe Express活用事例を2つ共有していただきました。

1つめは東京電機大学 システムデザイン工学部 教授、宍戸真先生によるご報告です。宍戸先生は第二言語習得論をご専門としており、これまでも積極的に語学学習にICTを活用されてきました。今回は理工系学生向けの英語授業での活用事例をご紹介いただきました。英語運用能力に課題を抱える傾向のある理工系学生からの提出物は、これまでは非常に短い文章や、大規模言語モデル(LLM)に生成させたような内容にとどまることが多く見られました。しかし、画像生成AIを用い、その画像に説明文を添える形式のタスクに変更したところ、学生たちは無意識のうちに、より長文で内容のある文章を書くようになったということです。学生たちの満足度も高く、教員としても学習効果を実感しているとご報告いただきました。

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東京電機大学の宍戸真先生

2つめは解剖学をご専門とされている筑波大学 医学医療系 特任助教 吉原雅大先生から、アドビとともに行った社会課題解決型のワークショップについてのご報告をいただきました。ワークショップでは学生たちとともに「慢性腎臓病の早期発見と治療の重要性を若年層に知ってもらうためのデジタルコンテンツの作成」に挑戦しました。ICTやデザインに特に精通しているわけではない学生たちでも、問題解決のための思考を深めてアイデアをカタチにするという一連のプロセスを通じて、学問領域を超えたトランスファラブルスキル(対課題、対自分、対人)が育成されたことが示されました。

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筑波大学の吉原雅大先生

パネルディスカッション & リフレクション

フォーラムの最後に、学校法人立命館理事の山下範久先生、北海道大学の重田勝介先生、アドビのSebastian Distefanoをパネリストに、アドビの小池晴子が聞き手を務めてパネルディスカッションが行われました。

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パネルディスカッションの様子

これから創造的なデジタルスキル育成の取り組みを進めるにあたって、大学組織の中でどのように進めると良いのかという論点について、主に正課内でAdobe Express活用を進めている北海道大学は、「もともとアドビの商品を積極活用している教員に声をかけて、協力者を増やす」、主に正課外で多産的に試行錯誤を続けている立命館大学からも「一気に全体を変えようとせず、できるところから局地的、特区的にやっていく」と、形は違えど両大学に共通する考え方が共有されました。

また、「さまざまなサービスやアプリがある中で、なぜAdobe Expressなのか」という質問に対して、北海道大学からは「生成AIの出力がエシカル(倫理的)である。学習データがクリーンであることで他のAIと比べて、教員として学生が出力してくるものを一番安心して見られる」とのコメントがあり、続いて立命館大学からは「やりたいことが明確なら、そのための手段はアドビでなくでもいい。しかし教育をめぐるシステムやコンセプトが変化し続け、方法もアウトプットも決まっていない今の時代、それをいっしょに考えて創ってくれる企業とでないと前に進むことができない。だから、アドビを選んだ」というまとめがありました。

終盤には「AIは生活の中に完全に入り込んでおり、教育場面だけでそれを無視することはできない。より良い学びを促進するツールとして教育に取り込んでいかなければならない」(Distefano)というコメントに、多くの参加者が深くうなずくシーンもありました。

今回のフォーラムでは、教育現場におけるAdobeツールの活用事例やトランスファラブルスキル育成の可能性、さらには生成AIを含むこれからの教育の在り方まで、幅広く多角的な議論が展開されました。現場での実践知と将来に向けたビジョンが交差し、多くの気づきと示唆が得られる一日となりました。今後もアドビは、教育機関と協働しながら、デジタルリテラシーや生成AIの活用を含む新たな教育課題の解決に取り組み、創造性を軸にした学びの変革を現場の皆さまとともに進めていきます。