ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識 2025 第5回「基礎からじっくり解説 文字組みのキホン」

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本記事では、Illustratorの文字組み機能について、ベタ組み・ツメ組みの基本から、2025年版で強化された新機能までを体系的に解説します。見た目の美しさと読みやすさの両立を実現するために、目的別に最適な設定を整理しました。

1.「ベタ組み」と「ツメ組み」

フォントによって例外はあるものの、文字組みの基本を理解するうえで、まずは以下の前提をおさえておきましょう。

1-1. 和文フォント

日本語の文字組みには、大きく分けて「ベタ組み」と「ツメ組み」の2種類があります。

和文フォントは縦組み・横組みの両方を想定して設計されており、文字は正方形の「仮想ボディ」と呼ばれるマスの中に収まるようにデザインされています。このマスに文字を等間隔で配置するのが「ベタ組み」です。原稿用紙に文字を一つひとつマス目に並べていくイメージを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

これに対して「ツメ組み」は、文字ごとの形状や余白に合わせて間隔を詰め、マス目の制約を超えてバランスよく文字を配置する手法です。

用途に応じて、次のように使い分けるのが一般的です。

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1-2. 欧文フォント

欧文フォントでは、文字ごとに幅が異なる「プロポーショナル(可変ピッチ)」が一般的です。

さらに、「To」「Tr」「Ta」「Tu」「Te」「Ty」「Wa」「WA」「We」「Wo」など、特定の文字の組み合わせにおいては、文字同士の隙間をより自然に見せるために、あらかじめ定義されたカーニング情報に基づいて文字間が詰められることがあります。これを「ペアカーニング」と呼びます。

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※ペアカーニングの情報は、フォントファイル自体に組み込まれており、アプリケーション側がそれを参照して調整を行います。

1-3. 文字組みの実践ポイント

目的に応じて、読みやすく美しいレイアウトを実現するには、Illustratorの各種機能や設定項目を正しく理解し、適切に使い分けることが欠かせません。

ここからは、文字の設計や組版ルールが異なる和文フォントと欧文フォントを組み合わせて文字組みを行う上で、どのように設定すればよいかについて具体的な手順を解説していきます。

2. 自動カーニングの種類と設定箇所

まずは、自動カーニング関連の設定箇所を確認しておきましょう。

2-1. カーニング

[文字]パネルの[V/A]と書かれた項目で設定します。この項目(正式には「文字間のカーニング」)には、主に次の2つの役割があります。

自動カーニングには次の設定があります。

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2-2.プロポーショナルメトリクス(OpenTypeオプション)

OpenTypeフォントに組み込まれた機能の一つで、フォントが持つ文字幅や字間情報に基づいて、文字を自動的に最適な間隔で配置する機能です。

[OpenType]パネルでON/OFFを設定します。

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2-3. 文字ツメ、トラッキング

[文字]パネルには「文字ツメ」と「トラッキング」という設定があります。

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「文字ツメ」はテキスト全体の文字間隔を一括で詰めたいときに使用する機能です。数値が0の場合は無効(=ツメなし)、数値を上げるほど詰まりの度合いが強くなり、**最大で100%**まで設定できます。

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[トラッキング]は、キャッチコピーなどで「アケ組み」(文字間をあえて広げる組み方)を行う際に活用します。

まずはメトリクスなどの自動カーニングで文字を詰めたうえで、トラッキングで全体の文字間を均等に広げ、さらに必要に応じて手動カーニングで細かく調整していくのが一般的な流れです。

このとき、句読点の前後のアキにも注意が必要です。

句読点(「、」「。」)は前の文字に属する記号のため、その直前に不自然なアキができないよう、適切に調整しましょう。

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3. 目的に応じた文字組みの着地点

改めて、使用用途によって文字組みの目指すゴールは異なります。

使用するフォントによって、結果は多少異なりますが、基本的な方針は次の通りです。

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A. ベタ組み

欧文のペアカーニングは有効にしつつ、和文は原稿用紙状に均等のピッチで並べていきます。

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B. ツメ組み(1)

フォントが持っている詰め情報、ペアカーニングの情報を利用し、文字ごとの字幅を考慮して並べます。必要に応じて、「文字ツメ」や「トラッキング」で調整します。

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C. ツメ組み(2)

文字の形状をIllustratorが分析し、最適な間隔で文字を詰める「オプティカル」を利用します。必要に応じて、「文字ツメ」や「トラッキング」で調整します。

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4. 注意点とハマりポイント

4-1. 自動とメトリクス

Illustrator 2020以降、「自動」は「メトリクス」に名称変更されています。

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おそらく「メトリクス」と「プロポーショナルメトリクス」が紛らわしいことが理由で「自動」になっていたと思われますが、InDesignと同じ用語に統一されました。

4-2. 和文等幅とペアカーニング

「メトリクス」はフォントに含まれるペアカーニング情報を利用します。

「To」「Tr」「Ta」「Tu」「Te」「Ty」「Wa」「WA」「We」「Wo」など、特定の組み合わせに適用される情報がある場合に有効です。

一方、「和文等幅」は「和文 等幅、欧文にはメトリクスカーニングを適用」という意味です。
ただし、モリサワのA-OTFフォントはペアカーニング情報を持たないため、調整はされません。

日本語の文章であっても、ペアカーニングの効果は活かしたいものです。そのためのひとつの方法として、合成フォントを使用し、アルファベット部分にペアカーニング情報を持つ欧文フォントを割り当てるという手段があります。

なお、ペアカーニング以外にも字形などが変更されているため、同じフォント名であっても互換性がないとモリサワからアナウンスされています。

4-3. メトリクスとプロポーショナルメトリクス

メトリクスを選んだ場合、プロポーショナルメトリクスをONにします。

これにより、手動カーニングを加えたときに、カーソル前後以外の文字が動くのを防げます。

4-4. フォントサイズとオプティカル

オプティカル設定は、フォントサイズによって結果が異なります。小さい文字、大きい文字それぞれで見え方が変わるため注意が必要です。

4-5. 縦組みとオプティカル

縦組みでは「オプティカル」は無効です。

5. 日本語本文で押さえるべき基本設定

日本語の文章を扱うときは、[段落]パネルで最低限、次の3項目を設定しておきます。

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5-1. 行揃え

日本語の折り返しのある文章では、行揃えを「両端揃え(最終行左揃え)」に設定します。これにより、最終行を除くすべての行の行頭と行末が揃い、全体が四角い箱のように見えるため、「箱組み」 とも呼ばれます。

一方、欧文では右端を揃えない 「ラグ組み(左揃え)」 が一般的です。これは、右端を無理に揃えると単語間のスペースが不自然に広がり、可読性が低下するためです。

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5-2. 禁則処理

禁則(キンソク)とは、日本語の文章を文字組み・レイアウトする際に、行頭や行末に特定の文字が配置されないよう制御するルール です。文章の可読性や視覚的な整いを保つために欠かせない基本的な規則です(「 止に関する規 」と考えるとよいでしょう)。

句点「。」は、それに続くのではなく、直前の文字に属する記号 です。そのため、「。」だけが行頭に 独立して配置されることがないようにする のが禁則処理の目的のひとつです。つまり、「句点が次の行に追いやられる」のを防ぐ処理として理解するとよいでしょう。これは 読みやすさ見た目の自然さ の両方を保つために重要です。

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Illustratorでは、禁則の適用範囲を「弱い」または「強い」から選択できます。

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5-3. 段落として複数行にわたる本文での注意点

テキストボックスの横幅が、使用しているフォントサイズの整数倍になっていない場合、「両端揃え(最終行左揃え)」を設定した時点で、ベタ組みの状態は崩れてしまいます。

これは、両端揃えが行頭と行末を揃えるために、行内の文字間を自動的に伸縮させる処理が働くためです。結果として、文字が右方向に引っ張られ、本来の等間隔な配置(=ベタ組み)が保てなくなります。

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一方で、禁則設定を有効にすると、禁則対象の文字が行頭や行末から移動しようとする力が働きます。このとき、文字を現在の行にとどめるか(追い込み)、それとも次の行へ送るか(追い出し)を制御するのが、[禁則調整方式]の役割です。

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禁則処理によっても、ベタ組みの整った見た目は容易に崩れてしまうことがあります。

段落として複数行にわたる本文では、単純なカーニングだけでなく、禁則・行揃え・アキ量設定など、複数の要素が複雑に絡み合って文字組みの結果に影響を与えます。そのため、設定の意図や優先度を理解し、適切に調整することが求められます。

6.文字組みアキ量設定の基本

文字組みアキ量設定 は、日本語組版特有の機能で、句読点や約物(読み方は「ヤクモノ」:かっこ、句点、読点など)の前後にどれくらいのアキを入れるかを制御する設定です。文字の間隔だけでなく、行頭・行末の見た目や文章のリズム感にも大きく関わります。

6-1. 主な対象

6-2.「文字組みアキ量設定」のロジック

「、」「。」などの句読点は、もともと 全角 でデザインされていますが、文字組みアキ量設定では次のようなロジックで調整します。

6-3. 和欧間のアキ

同様に、「1月23日」のような文字列では、数字の前後に不自然なアキができて見えることがあります。これは、文字組みアキ量設定によって、欧文(ここでは数字)の前後にアキを挿入するルールが適用されているためです。

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英数字の前後にアキが入らないように組むには、主に次の3つの方法があります。

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1行で完結するのか、複数行に渡る文章なのかにもよりますが、「[アキを挿入]をアキなしにする」は避けるべきバッドノウハウです。その理由は以下のとおりです。

理想的なのは、文字組みアキ量設定をカスタマイズする ことですが、手間をかけたくない場合は、設定を丸ごと「なし」にするのがシンプルで実用的です。

2か所を調整するよりも、1か所の設定で済む ため、作業効率の面でもおすすめです。

6-4. 「アキなし」や「文字組み:なし」の功罪

前後の[アキを挿入]を「アキなし」にするか、文字組みアキ量設定を「なし」にすれば、和欧間のスペースは削除されます(B)。

しかし、この方法では括弧や句読点の前後のアキまでまとめて削除されてしまうため、文章全体が極端に詰まった印象になります。

チラシなどで用いる比較的短い文章なら許容されることもありますが、句読点までも詰めてしまうと窮屈な印象で読みづらくなります。

人の話でも、息継ぎや間(ま)がない一気読みは聞き取りづらいように、日本語の読みやすさには句読点後のスペースが欠かせません。

パッケージや広告など、情報密度を優先するケースを除き、少しでも読んでもらいたい文章では、句読点後のアキはしっかり確保するのが理想です。

前後の[アキを挿入]を「アキなし」にしたり、文字組みアキ量設定を「なし」にしたりする設定は、1行だけの「日付」など、限られた用途にとどめるべきです。

段落テキストに対してこれらを適用するのは完全にNGです。可読性が大きく損なわれるだけでなく、調整も困難になり、実務において致命的です。

6-5. 「二分」や「四分」の意味は?

[アキを挿入]や[文字組みアキ量設定]のメニューに登場する「二分」や「四分」といった用語に、馴染みがない方も多い かもしれません。これらは、1文字分(全角)を何等分するか を表しており、それぞれ次の割合に相当します。

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文字と文字のすき間(アキ)を微調整する際に使われる単位で、特に日本語の文字組みでは細やかな見た目の整えに重要な役割を果たします。

7. 文字組みアキ量設定のアプリごとの設定の違いと新しい文字組みエンジン

文字組みアキ量設定は、アドビ製品の中でも Illustrator と InDesign のみに搭載されている日本語組版機能です。ただし、両者での実装には大きな違いがあります。

7-1. 優先度設定

InDesignでは、アキ量設定に「優先度」を持たせることができ、アキをどこで縮めるか・どこで伸ばすかを細かくコントロールできます。

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一方、Illustratorでは優先度設定の概念がなく、アキ量の最小値と最大値を設定するのみです。これにより、InDesignほど詳細な組版制御はできません。

7-2. [欧文の前後]設定の制約

Illustratorの「文字組みアキ量設定」では、[欧文の前後]という項目で欧文にアキを加える設定が用意されていますが、アルファベットと数字を区別できない という制約があります。

例えば数字だけ詰めたい、アルファベットだけ空けたい、といった細かい制御はできません。

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7-3. 新しい文字組み設定

Illustrator 2025(2024年10月リリース)からは、従来の文字組み機能を強化するだけでなく、これまでのバグを解消した新しい文字組みエンジン が搭載されています。

詳しくはAdobe Blogの記事をご覧ください。

保存版|Illustrator 2025 登場!文字組みの改善点と新機能、過去データの取り扱いを総チェック!

まとめ

「カーニング地獄」からの解放

本記事で紹介している機能は(「新しい文字組みエンジン」を除き)2004年1月にリリースされたIllustrator CS(バージョン11)以降、すべて利用できるものです。もちろん最終的な微調整は必要ですが、各機能を適切に設定すれば、すべてを手詰め(手動カーニング)で行わなくても、おおむね85点レベルの文字組み は十分に実現できます。

それぞれの機能のロジックを正しく理解して、日々の「カーニング地獄」から解放されましょう。

「文字組みは総合格闘技」

文字組みは目的や文脈によって最適なアプローチが異なります。

たとえば、折り返しのない見出しやタイトルと、段落として複数行にわたる本文では、使うべき機能や設定が大きく異なります。

さらに、使用するフォントの設計や特性によっても、文字の並びや印象が変わります。

まずは、各機能の仕組みと役割を正しく理解し、そのうえで「どんな目的で、どんな見せ方をしたいか」という方針を定め、場面ごとに的確な調整を行います。

美しく読みやすい文字組みを実現するには、それぞれの機能の仕組みを正しく理解し、目的に応じて使い分けることが欠かせません。

本記事をヒントに、ストレスのない文字組みづくりにお役立てください!

なお、今回はインデントや行送りや段落前後のアキといった縦方向の段落設定については割愛しました。

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