Vook | アドビ特別イベント “生成AIで映像制作はどう変わるか?LA最新レポート”開催

2026年6月2日にアドビ株式会社のオフィスで開催されたVook主催の特別イベント生成AIで映像制作はどう変わるか?LA最新レポート!」の内容をレポートします。

このイベントは、Vook代表の岡本俊太郎さん、ディレクター / シネマトグラファーの高橋遼さん、アドビのマーケティングマネージャー田中玲子が、ラスベガスで開催された国際放送機器展「NAB Show」、最先端の映像制作スタジオやAIスタートアップ、研究機関でヒアリングした最新テクノロジーやワークフローをもとに、「何が起きているのか」「生成AIとどう向き合っていくべきか」を語り合う場として開催されました。平日夜にもかかわらず、100名近い映像制作関係者が参集。視察メンバーから多くの刺激的で有益な情報が披露されると、来場者からは多くの質問や意見が寄せられ、場内は終始高いテンションに包まれました。

岡本俊太郎さん、高橋遼さん、田中玲子

100名近い参加者でいっぱいとなったアドビ東京オフィス

LA・ラスベガスの最前線レポート

視察はラスベガス4日間、ロサンゼルス3日間の計7日間にわたり、展示会および併催イベント、企業訪問、アドビオフィスなどを駆け巡って実施されました。

放送業界および映像制作向けの北米最大級の展示会「NAB Show」では、従来からの機材展示に加え、生成AIに関連するソリューションや有料カンファレンス、技術セミナーが台頭。業界では、AIの是非を議論する段階は終了しており、実務への導入とワークフローの最適化が前提となっていることが語られました。

世界中の熱心なユーザーが訪れて大人気となったアドビブースでは、Adobe Firefly活用した映像制作ワークフロー、Adobe Premiere搭載された画期的なカラーモード、クラウドを意識させないFrame.io DriveおよびマウントストレージAdobe After Effectsオブジェクトマットが注目されていました。さらに、ノードベースのGUIで各種ツールを横断する制作プロセスを視覚的に構築し、それを保存、共有を可能にするFirefly Graph for enterpriseの展示が行われたことも伝えられました。

「今後、生成AIはノードベースでコントロールする流れが来るのでしょう」と語る高橋さん

オープン直後のアドビのロサンゼルスオフィスでは、人間によるストーリーテリングと最先端技術を融合させた映像制作をモットーとするプロダクション、Native Foreignへのヒアリングが行われました。ストーリーボードなどプリプロダクションやVFXなどのポストプロダクションでは積極的に生成AIを活用しつつ、撮影では人間のクリエイティビティを尊重した本格的な実写を行う「ハイブリッド型」がメインストリームであることが強調されました。また、エディターが生成AIでBロール素材を提案してディレクターの領域を担うなど、ワークフローの見直しとともに職域がボーダーレス化してきていることも語られました。

“Future is Hybrid”が最重要キーワード

また、Adobe Fireflyのみを使用して短期間で制作されたアニメーションプロジェクトも紹介されました。さまざまな生成AIを使用した共同制作に最適なFireflyボードで、キャラクター設定のアイデア出しからストーリー構築、動画生成までをワンストップで完結。それぞれの分野に最適なパートナーモデルが利用できること、プロンプトの履歴を残して共有できることに大きなメリットを感じたそうです。

南カリフォルニア大学(USC)の研究機関「ETC(Entertainment Technology Center)」では、ラフな手書きイラストから8bit動画素材を生成して編集、後処理で映画レベルの32bit 4K EXRにアップコンバートするワークフローや、2台のスマートフォンでトラッキング情報を元にリアルタイムに生成された背景映像を見ながら撮影を行い、グリーンバック合成を効率化する手法などが紹介されました。プロンプトエンジニアが制作室に常駐し、ハッカソンのようにディスカッションしながら素材を生成して編集している姿も披露。「レイヤーベースの思考を持つVFX経験者が生成AIアーチストに最適」「著作権申請と成功評価のために生成ログを保管」「成功事例を語るエバンジェリストが大切」「まず小規模プロトタイプで合意形成」といったキーワードも印象的でした。

Adobe Fireflyにパートナーモデルを提供しているLumaは、テキストや画像からの動画生成および3Dモデル生成を得意としています。Amazon Primeとの大型プロジェクトでは、実写とリアルタイム生成AIの融合が推進され、従来のコンポジット作業を置き換える構造変化が始まっていることが示されました。

最後に紹介されたのは、Quicktureいうリアリティ番組のディレクターが開発したAdobe Premiere用プラグイン。膨大な素材をAIが解析し、話者ごとのタグ付けや要約、さらには自動編集機能を搭載しています。

Quicktureを試用してみた感想を語る高橋さん

視察のまとめとして、田中は「人とAIが融合して映像を作っていくハイブリッドAI、役割とワークフローの概念の変化、人が手がけた部分のログは残すといったキーワードが印象的でした」、高橋さんは「転換期であることを肌で感じ、5年後の映像制作は全く別物になると確信しました」、岡本さんは「フィルムからデジタルへと同じくらいAIのインパクトは大きく、大きな変革が起きている。それだけに若い人にもチャンスがある」と語りました。

「フィルムからデジタルへと同じくらいデジタル+AIのインパクトは大きい」

アドビ最新アップデート

続いて、Adobe Premiere、Adobe After Effects、Frame.io、Adobe Fireflyの今を知る最新機能アップデートが行われました。

Premiere

最も注目すべき新機能として紹介されたカラーモード(ベータ版に搭載)は、編集者の意向に添った新たなカラーグレーディングパネルです。思考に合わせて動作する直感的なUI/UX、効率的なグルーピングとスタイルの適用、AIオブジェクトマスクによる被写体別の適用など、まったく新しい色調表現のプロセスが体験できます。

グレーディングを刷新するカラーモード

開発責任者のアレクシス・ヴァン・ハークマンは、「既存のカラーグレーディングアプリケーションの操作画面は、1970〜80年代のアナログなハードウェア機器の設計をそのままデジタルに移植したに過ぎず、現代の効率的なワークフローを阻害しているとの問題意識から、新たなシステムをゼロから再構築した。」と述べています。

『カラーコレクションハンドブック』著者として世界的に有名なアレクシス

実際にカラーモードを使用した高橋さんは、他のツールと比べて優れているポイントを3つあげました。まずは操作が自然で直感的、どのように色を作っていくかに集中できること。そしてマウスで選択するだけでマスクが適用できるオブジェクトマスクにより、被写体ごとのライティング調整がスピーディにできること。最後に複数クリップやシーケンス単位でグルーピングし、カスタマイズしたプリセットを適用できる効率性を指摘しました。

「カラーモードは、想像以上にアツかった!」

さらにPremiere 26.2では、新しいGPU高速化エフェクトとトランジション、AIを搭載したオブジェクトマスク、シーケンスインデックス、再リンクの高速化などが追加されています。

After Effects

After Effects 26.2では、オブジェクトマットツール搭載されました。シンプルなホバー&クリック操作で、モーションデザインやコンポジット向けの高度なマットを作成します。トラッキングも高速かつ正確になり、精細で動きの速い被写体にも対応。

Frame.io

待望の日本語対応が実現。エンタープライズ版には、シームレスにクラウド上のアセットへの即時アクセスを可能にするFrame.io Driveおよびマウントストレージが実装されます。

Firefly

高品質、高速処理のKling3.0が追加され、Fireflyはワンストップで30以上のAIモデルが利用可能に。エンタープライズ版にはノードベースのワークスペース、Firefly Graph公開されました。

Fireflyのクレジットで30以上のAIモデルを利用可能

Q&Aとまとめ

充実した内容にあっという間に予定時間が終了しましたが、来場者からの生成AIの可能性や新機能への期待、著作権に関する不安などの質問や意見に対し、時間の許す限りの回答が行われました。

リアルタイムに書き込まれた来場者からの質問に、真摯に回答する視察チーム

最後に岡本さんから「生成AIは映像制作の世界をあっという間に変えていきます。この大きな転換期を生き抜くために、みなさんも新しいテクノロジーを恐れずまずは触れて理解して使っていきましょう。そのための情報提供は惜しみません!」とメッセージが送られ、刺激的で充実したイベントが締めくくられました。

アドビグッズのプレゼントで盛り上がる懇親会