「動画 × リスキリングの可能性〜最短最速で動画制作の内製化を目指す〜」オンラインセミナー開催レポート
Vook とアドビの共同ウェビナー「動画 × リスキリングの可能性〜最短最速で動画制作の内製化を目指す〜」が 2023 年 7 月 13 日に配信されました。リスキリングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)のような、大きな社会の変革に対応できるスキルや知識を人々に身に付けさせる国家レベルの人事戦略です。昨年秋の国会では、リスキリング支援を構造的な賃上げ対策の柱と位置づけ、5 年で 1 兆円を投じることが表明されました。DX 人材が不足している中、社員をリスキリングで育成することは、企業にとって現実的な選択肢となっています。
近年、急成長している分野の一つに、企業による動画活用があります。サイバーエージェントの調査によると、2022 年の動画広告市場は昨対比 133.2% と高い伸びを示しました。2026 年には、約 2 倍の規模に達すると同社は予測しています。広告以外にも、情報発信や社内研修に動画を活用する企業が増えていると、ウェビナーの司会を務めた株式会社 Vook 代表取締役 岡本 俊太郎氏は話しました。リスキリングで学びたいスキルの一つに動画制作が挙げられるのには、こうした背景があります。
企業が動画制作の内製化を進める理由
アドビ株式会社 Video Strategic Business Development Manager 高橋 絵未は、動画制作の内製化により成果を出している 4 社の事例を紹介しました。
- クレディセゾン:Youtube を新たな販促チャネルに育成
- ベルーナ:販促用の動画制作の内製化により商品購入率 20% アップ
- 大京警備保障:親しみある動画コンテンツでフォロワーを増やし採用難を克服
- ライドオンエクスプレス:人材教育用の動画コンテンツで研修参加者が 3 倍に
最初のクレディセゾンの事例は、未経験の社員が会社のサポートを受けてデザイナーに転身し、販促目的の YouTube チャネルを立ち上げたというものです。内製化したため、自社のビジネスをきちんと理解している人が、動画を企画して表現できることが評価されており、今ではクリエイティブチームも発足しています。「また、自分のスキルアップが会社に還元できていることが嬉しいという当人の声もあります」と高橋は話しました。
2 つ目のベルーナの事例は、通販カタログに関わるコスト上昇に対応するため、それまでは紙媒体だけ扱っていた制作チームが動画制作のスキルを習得し、デジタルでの販促活動を始めたというものです。動画制作を内製化して動画コンテンツの活用を始めたところ、ウェブでの商品購入率が 20% 向上し、TV 局の取材が来るほどの評判になったそうです。
3 つ目の事例の大京警備保障は、人材獲得のために動画を活用した事例です。親しみある動画コンテンツを投稿することで、合計 440 万人を超えるソーシャルメディアのフォロワーを集めました。会社の認知を高め、採用難を克服できたユニークなケースです。
最後の事例として紹介されたライドオンエクスプレスでは、社内研修や各種マニュアルの動画コンテンツ化が行われました。動画であるため料理の手順や盛り付け方が細かく伝わり、アーカイブされていつでも視聴できることが好評で、研修参加者がおよそ 3 倍に増えたそうです。
これらの事例を踏まえ、高橋は、「外注コストを削減するため」のような守りの姿勢ではなく、「営業、宣伝、社内教育などに使う」攻めの姿勢の動画内製化が増えていると指摘しました。
スマートフォンと Adobe Premiere Pro で動画制作を内製化
ウェビナーには、動画制作の内製化を推進しているつきぢ神楽寿司 取締役 営業企画部長 松井 麻帆氏がゲストとして登場しました。松井氏は、スマートフォンで撮影した動画を Adobe Premiere Pro で編集するという、シンプルなワークフローで動画制作を行っています。
初めて Premiere Pro を使った松井氏は「携帯で撮影した動画素材だけで、ここまで出来てしまうことに感動しました」と感想を語りました。採用活動のために制作した動画ですが、会社の紹介などにも使われているそうで、社内の評価の高さが伺われます。
松井氏は、動画活用のメリットについて、「社内の空気感とか、社員の笑顔とか、みんなの頑張ってる姿を社内外に伝えていけたらという想いがあるのですが、動画だと静止画よりも、空気とか、熱い思いとかが、伝わりやすいんです」と話しています。内製化により、撮影の調整など、現場とのコミュニケーションを密にとらなければならず大変だったそうですが、「そのおかげで現場とのコミュニケーションがさらに深まって良かったです」と松井氏は述べました。
最初は何をするのかわからない状態だったという松井氏ですが、Premiere Pro の画面を開くところから、キーボードの使い方、専門用語の意味などの基本知識、そして、撮影時の携帯の構え方、ナレーションの喋り方などを Vook のサービスで学びました。今後は学んだスキルを活かして、主流になりつつあるショートムービーに注力し、もっと身近な動画をたくさん配信していけたらと考えています。
Premiere Pro を使うメリット
松井氏のように、テレビや映画を制作する映像のプロではない、ビジネスや個人的な動機で動画制作を始める人が増えていると、岡本氏と高橋は口を揃えます。そうした動画クリエイター達に最も使用されているツールが Premiere Pro です。
アドビと UUUM の共同調査によると、Premiere Pro の使用率は 22.6% と、2 位以下を大きく引き離しています。使用満足度においても Premiere Pro を「とても満足している」と回答した人は、主要な 5 つのアプリの中でもっとも高い 38.4 %でした。Premiere Pro を選択する理由のトップ 3 は、「機能が充実している」、「プロに近い品質で編集できる」、「動画編集業界のスタンダード」です。
動画編集歴が長い人は Premiere Pro の使用比率が高い 出典: PRTIMES
学習コンテンツが充実しているのも Premiere Pro の利点です。 YouTube チャネル、アドビのオフィシャルサイト、さらには Premiere Pro のワークスペース内にも、チュートリアルや解説動画が用意されています。
また、Premiere Pro にはクリエイティブカレッジという初心者向けの講座もあります。実践的なワークショップを含む約 10 回の講座を、無料で学べるオンラインコースで、素材の読み込みから、編集、動画の書き出しまで、一連の動画制作の流れを体験できます。
高橋は、Premiere Pro の優れている点として、充実した装飾機能、Illustrator などのアドビの他製品との連携、そして、AI による工数削減を挙げました。
例えば、文字起こしベースの編集は、AI により自動文字起こしされたテキストを切り貼りしたり削除したりすると、映像もそれに合わせて編集されるという、ワープロ感覚で動画の編集ができる画期的な機能です。「この機能はアドビ製品だからこそ備わっている、非常に有益な機能です」と高橋は解説しました。
Premiere Pro に搭載されている AI を活用した支援機能はこれだけではありません。動画の尺に合わせて自動的に BGM を調整してくれるオートリミックス、複数のソーシャルメディアプラットフォームに配信するため動画の画角を変えると、AI が被写体の位置を自動調整してくれるオートリフレームなども、時短に役立つ便利な機能です。
法人向け動画制作学習プログラムのご案内
ウェビナーの最後には、Vook スクール事業部 マネージャー 伊藤 洸一氏が登場し、動画制作の内製化を目指す法人を対象にした、スマートフォンと Premiere Pro を使った制作プロセスを学べるプログラムを紹介しました。提供される内容は、オンデマンドで視聴できるカリキュラム、現役映像クリエイターによる全 3 回の動画添削、そして、自由に活用できるオリジナルテンプレートです。受講により得られるものは、オリジナルの動画 1 本と、動画制作の内製化に必要なスキルです。
伊藤氏は、内製化ができれば、いろんなビジネスシーンで動画を活用できると話しました。「製造業なら、人が 1 時間かけて教えている製品マニュアルを 30 分の動画にまとめることができるかもしれません。すると、教える人が不要になるだけでなく、教わる側の時間も節約できます。飲食店なら、店舗紹介の興味深い動画を見たことが、店舗に行くきっかけになるかもしれません」
最後に、伊藤氏は、Premiere Pro は初心者でも簡単に扱えることを示す例として、動画にテロップを追加するデモを披露しました。
最初はトライ&エラーで、実績を積み重ねる
現場主導で動画活用を始める場合は、上司や経営陣の理解を得ることが必須になります。ボトムアップで上申する時のヒントを聞かれ、高橋は次のように答えました。「上層部の方が、動画の効果を全く信じていないケースがあったのですが、現場の方々が自主的にショートムービーを制作して顧客に見せて、動画の方が良かったという反応を集めて上司に持っていったところ、徐々に認められるようになり、今では応援してくれるまでになったそうです。顧客に評価されると、上司も OK を出しやすいかもしれません」
動画制作を内製化しようと思っても、最初のうちは、何を動画にすればよいのか分からないかもしれません。そんな時は、考え込むよりも行動することを高橋は提案します。「企業それぞれで正解は異なってくると思いますので、まずは何かの仮説を持って、トライ&エラーを繰り返していくという考え方が大事だと思います。良い動画を出していらっしゃる企業からも、最初は何が正解か分からなくて、出して改善してを繰り返したという声が非常に多かったです」