アドビのクリエイティブツールに搭載されたサードパーティーの生成 AI モデルを安全に利用するためのヒント
アメリカ、イギリス、日本など 8 か国で 1 万 6 千人以上のクリエイターを対象にアドビが 2025 年に行った調査によると、制作作業に生成 AI を使用するクリエイターは既に 86% に達しています。このような状況を踏まえ、クリエイターのためのプラットフォームを提供する企業として、アドビは Adobe Firefly の開発や、生成 AI を前提とするワークフローの効率化に注力してきました。
さらに、同調査は 60% のクリエイターが複数の生成 AI ツールを使用していることを明らかにしました。こうしたコミュニティの現状に応えるために、アドビが 2025 年秋に導入したのがパートナーモデルです。これにより主要なサードパーティの生成 AI モデルを、アドビのクリエイティブツールから直接利用できるようになりました。
既に複数の生成 AI を使いこなしている人にとっては嬉しいアップデートですが、Firefly だけ利用しているという人には「パートナーモデルを使うメリット」を実感することが難しいかもしれません。安全性を考えれば Firefly は望ましい選択ですし、画像の編集など Firefly でできることは着実に増えています。そこで「なぜパートナーモデル?」という人に向けて、この記事はパートナーモデルの具体的な利点と、利用者のためのヒントを紹介します。
パートナーモデルを統合するメリット
アドビが提供するデザイン環境にサードパーティの生成 AI モデルが組み込まれたことにより、Adobe Firefly だけではできなかったことが可能になります。以下は、パートナーモデルがもたらす主要な 5 つのメリットです。
- 素早く様々なアイデアを得られる 異なる特徴を持つモデルを併用すればバリエーションを容易に展開できます。アイデアを広げたい場面で複数モデルを組み合わせるのは効果的です。
- 幅広い視点からアイデアを検討できる 複数のモデルの生成結果を比較すると、単一モデルだけでは気づかなかったポイントを発見できます。それぞれの強みをまとめ上げれば、より精度の高いアイデアへ昇華できます。
- より効率的なワークフローを実現できる 局面に応じて最適なモデルを使い分けるとワークフローを効率化できます。適切なモデルの選択は、無駄な時間や生成クレジット消費の抑制にもつながります。
- 一つの環境一つのプランで簡単明快に利用できる いつものワークフローの中で、アプリを離れることなく、使用する機能ごとにモデルを選択できます。また、他社のモデルであっても個別に契約する手間は不要です。
- ユーザーデータが保護される パートナーモデルを使用した場合でも、利用者のデータが生成 AI の学習に使用されないことをアドビが公表しています。
パートナーモデルで生成したコンセプトを Firefly で仕上げる 出典: アドビ
パートナーモデルを安全に使用するヒント
パートナーモデルの使用は利用者の責任です。これは、他社の提供するサービスの品質にアドビが責任を持つことはできないためです。そのため利用者は、パートナーモデルを使用する前に商用利用における安全面や倫理面の要因を調査して、プロジェクトへの影響を評価する必要があります。(参考記事:アドビの安全性への取り組みと、倫理性への取り組み)
パートナーモデルの使用により想定されるリスクの程度は、用途によっても異なります。例えば、生成物の内部利用を前提とする場合であれば、知的財産権に関わるリスクは低いと考えられます。
一般公開するコンテンツ制作であっても、ゼロから生成するのではなく、権利関係のクリアな素材(例:正しくライセンスを取得したストック素材)の加工に利用するのであれば、他者の権利を侵害するリスクは低いと考えられます。
以下はその具体的なユースケースです。作例はすべて Adobe Photoshop の生成 AI 機能「生成塗りつぶし」を使い、モデルには Nano Banana Pro を選択して、Adobe Stock の素材を加工・合成することにより作成したものです。
1. キャラクターの表情やポーズを変更
キャラクターの同一性を保ちつつ、異なる表情やポーズの素材を生成する使い方です。
プロンプト:自然な笑顔に変更
プロンプト:後ろを向いて振り返る
2. キャラクターの衣装・スタイルを変更
服の色を変えたり、衣服の画像やスケッチをモデルが着用した状態を生成する使い方です。
プロンプト:服の色を青に変更
プロンプト:緑の服を着た女性に変更
3. 写真が撮影された時間や天候を変更
撮影時間や天候などの自然環境を、実際に撮影された時の状況から望ましい条件へと変更する使い方です。
プロンプト:天気を晴天に変更
プロンプト:時間をマジックアワーに変更
4. カメラの撮影条件、照明を変更
撮影した際のカメラの角度・ピント・ボケを変更したり、照明のセッティングを変更して生成する使い方です。
プロンプト:ライトをドラマチックな三点照明に変更、暗い背景
プロンプト:ローアングルに変更
5. 作風を変更・エフェクト加工
画像の作風を変更したり特定の効果を加えて印象の異なる画像を生成する使い方です。
プロンプト:水墨画風のイラストに変更
プロンプト:ライトリーク風の画像に変更
なお、特定の作者やブランド固有のスタイルを模倣するような生成は行わないようにしましょう。Firefly モデルでは、具体的な作家(例:「ピカソ風」)をプロンプトに指定すると警告が表示されることがあります。
6. 画像内の文字を変更
画像データになっている文字やその見た目を変更して生成する使い方です。
プロンプト:「CLOSED」という文字を「OPEN」に変更
プロンプト:電球フォントに変更、レンガの背景
7. 画像内のオブジェクトを削除・オブジェクトを置換
背景に映り込んだ不要なオブジェクトの削除、あるいは画像内のオブジェクトを他の素材のオブジェクトと入れ替えて生成する使い方です。
プロンプト:人混みを削除
プロンプト:子犬を子猫に変更
8. 画像素材の合成
素材を合成して実際に存在しない撮影や商品パッケージなどの画像を生成する使い方です。
プロンプト:両手で香水を持った女性の画像に変更
プロンプト:人物と背景を合成してライティングを背景に合わせる
クリエイターの新しい道具としてのパートナーモデル
パートナーモデルが利用できるようになったことで、クリエイターは、画像、動画、音声などの各領域における最先端の生成 AI モデルを、アドビのクリエイティブツールのワークフローを離れることなく利用できます。クリエイターには、さらなる創造的な自由と効率的な作業環境が提供されることになります。
この記事で具体的な例をいくつか紹介したように、利用権のある素材の編集にパートナーモデルを使用するのは、他者の権利を侵害するリスクの低い使い方です。他にも、山・海・空などの自然環境、テクスチャ・パターンなどの抽象的な表現、特定のブランドを特定できない椅子・机・食器などの日常的なオブジェクトの生成はリスクが低いと考えられます。プロンプトのテーマに、肖像権や商標権などに抵触しにくい汎用的・中立的なものを選択することも推奨されるプラクティスです。
パートナーモデルをまだ使ったことがなかったとしても、いつものワークフローの中で Firefly の代わりに気軽に試せる仕様になっています。個人的に生成 AI を使用すること自体に違法性はありません。将来のプロジェクトで必要になったときに備えてパートナーモデルの特徴を把握し、クリエイティブの道具を増やしてみるのはいかがでしょうか?
Firefly を利用するには生成クレジットが必要です。現在お持ちの生成クレジットを確認する方法は、こちらをご覧ください。
その他の生成クレジットに関するよくある質問は、こちらのページをご覧ください。