「Adobe MAX Japan 2025 」開催レポート|Create magic.ひらめきをおどろきに
世界で開催しているAdobeのイベント「Adobe MAX」。2025年2月13日(木)に日本にてAdobe MAX Japan 2025が開催されました。昨年は2024年10月14日~16日に、米国フロリダ州・マイアミで「Adobe MAX 2024」が開催され、日本での開催は約1年3ヶ月ぶりとなりました。
Adobe MAXはクリエイティブなプロフェッショナルやアマチュアにとって、スキルの向上、インスピレーションの獲得、コラボレーション、ネットワーキング、およびアドビ製品に関する最新情報の入手といった価値ある経験を提供する重要なイベントです。会場には3,000名を超える方にご来場いただきました。
わたしの担当するデザイン製品のセッションも多数開催され、さまざまなコミュニケーションを通じてインスピレーションが溢れる大盛況のイベントとなりました。
本ブログでは、当日のデザインセッションの内容や各コーナー、当日の会場の様子などをご紹介します。セッションの一部はアーカイブでご視聴いただけますので、当日参加された方も、そうでない方も、是非本ブログをご覧ください。
アドビCEO・シャンタヌ ナラヤンがAdobe MAX Japan初登壇。日本のクリエイティブコミュニティへ特別なコミットメント
Adobe/会長兼CEO(最高経営責任者) シャンタヌ・ナラヤン(Shantanu Narayen)
Adobe MAX Japan 2025のメインセッション「キーノート」では、アドビの会長兼CEOであるシャンタヌ・ナラヤンが初登壇し、大きな注目を集めました。
シャンタヌは、日本市場との長年の関わりについて語り、自身が30年前にアドビで最初に担当した製品が、日本市場向けの「Hotaka」(現在のInDesign)であったことを紹介しました。その製品が現在も日本の大手出版社や企業で広く活用されていることに触れ、日本語で喜びのメッセージを送りました。
また、アドビが日本市場向けに進めているさまざまなイノベーションとして、Adobe Expressの日本向け最適化、Illustratorのテキストエンジンの改良、Premiere Proのタイトル機能の強化など、ユーザーの要望を反映した最新のアップデートを紹介。これらの取り組みが日本のクリエイターの創造性を支える重要な要素であることを強調し、日本のパートナー企業やコミュニティの協力に対する感謝の言葉を述べました。
クリエイティブの未来へ期待と興奮が加速する、最新のインスピレーションを届けたキーノートセッション
Photoshopの最新機能「フレームツール」を紹介
Photoshopの新機能紹介では、Creative Cloudエバンジェリストの仲尾毅が、アップデートされた削除ツール「不要な物を検出」機能を紹介しました。
この機能は、写真の背景に写り込んだ観光客や、美しい風景写真の邪魔になる電線などを自動的に検知して削除し、新たなコンテンツを生成して背景を置き換えることで、より自然な仕上がりを実現します。すでに多くのユーザーに利用されている機能ですが、今回のアップデートにより精度がさらに向上しました。
また、ディテールと正確さが大幅に向上した「生成塗りつぶし」や「生成拡張」、最新のアップデートで追加された「フレームツール」、さらにPhotoshop Web版との連携による、より自由な編集作業についても、実際のデモを交えて紹介しました。
アドビ デザイン製品担当の“前髪ぱっつん”岩本崇
Adobe Fontsに加わったアドビオリジナルバリアブルフォント「百千鳥(ももちどり)」
わたし岩本崇からは、デザイン製品の最新情報として、新たにAdobe Fontsに追加されたアドビオリジナルのバリアブルフォント「百千鳥(ももちどり)」を紹介しました。Adobe Originalsからリリースしたこのフォントは、1つのフォントでさまざまな表情をコントロールできるというのが最大の特徴です。長体と平体の圧縮率により“かな”の字形が切り替わるなどのアレンジも施されており、さらにバリアブルのカラーグリフも搭載されているなど、ユニークな遊び心がふんだんに取り入れられています。
バリアブルのステータスバーを動かすことでチドリが歩く様子を紹介すると、壇上からみなさんの笑顔を見ることができ、このフォントの魅力を感じていただけたかと思います。この「百千鳥」はCreative Cloudの有償メンバー向けに提供されています。ぜひご活用ください。
2025年2月 日本語のバリアブルフォント「百千鳥」がついに登場!さらに Adobe Fontsのラインナップが大幅拡充しました
https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/02/13/cc-design-adobefonts-2502 - _blank
Illustratorのパフォーマンスが大きく向上し、生成AIによるクリエイティブな補助機能が強化
Illustratorは、パフォーマンスが大幅に向上しました。画像の埋め込み速度が最大10倍、画像処理が5倍、さらに使用頻度の高いエフェクトの処理速度も5倍向上し、パワーと生産性が大きくアップしています。これにより、大容量ファイルの処理や複雑なベクターグラフィックの編集がスムーズになり、作業中の待ち時間が短縮されることで、作業効率が大幅に向上するなど、ストレスのない快適なワークフローを実現します。
また、Fireflyの生成AIによるクリエイティブな補助機能が強化され、短時間で高品質なデザインを生み出すことができます。これらの機能強化により、より直感的でスピーディーなデザイン制作が可能になります。
Adobe IllustratorとAdobe InDesignのクリエイティブプロフェッショナル向け最新機能
https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/10/14/cc-even-more-speed-precision-power-get-started-latest-illustrator-indesign-features-creative-professionals
Webブラウザ上で動作する3Dデザインツール「Project Neo」
「Project Neo」で作成したアートワークから作ったTシャツを披露して会場内を盛り上げた
続いて、アドビが提供する「Project Neo」を紹介しました。
「Project Neo」は2024年10月14日~16日にアメリカ・マイアミで開催された「Adobe MAX 2024」でリリースを発表し、パブリックベータ版として正式に公開された、Webブラウザ上で動作する3Dデザインツールです。
グラフィックデザイナーやイラストレーターが直感的に3Dアートワークを作成・編集できるよう設計されており、作成した3Dアートワークはベクター形式に変換してIllustratorで編集を続行できます。そのため、IllustratorやPhotoshopユーザーにとって、2Dデザインに3D要素を簡単に組み込むための強力なツールとなっています。
会場では、岩本が「Project Neo」で作成したアートワークを、Illustratorで編集して仕上げたTシャツを披露すると、大きな拍手と歓声が上がり、この新しいアプリへの期待の高さがうかがえました。
簡単に3Dデザインを作成できるProject Neoのパブリックベータ版を本日から提供開始
https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/02/13/cc-easily-create-3d-designs-with-project-neo-now-public-beta#_blank
これらのデザイン製品の進化は、クリエイティブの新たな可能性を広げ、創造性を高めるものばかりです。ぜひ、みなさんの日々のデザインワークにご活用ください。
全ての参加者の視線が壇上のスクリーンに注がれる
キーノートセッションではその他にも、ビデオに生成AIを導入するAdobe Firefly Video Modelが大きな注目を集めました。「テキストから動画生成(ベータ)」はみなさんの想像力をかき立てる革新的な機能です。
Premiere Proのキャプション翻訳機能を始めとする新機能や、誰でも簡単に魅力的なコンテンツを作成できるAdobe Express、クリエイティブとマーケティングをつなぐ新しいプラットフォーム「Adobe GenStudio」など、さまざまなイノベーションとアドビ製品の最新情報を1時間半に渡って紹介しました。
「Adobe Firefly Video Model」: 比類なきクリエイティブコントロールを備えたAIがもたらすクリエイション
https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/02/13/cc-meet-firefly-video-model-ai-powered-creation-with-unparalleled-creative-control
キーノートセッションのアーカイブ視聴はこちらからご覧いただけますので是非ご覧ください。
創造力を刺激する多彩なセッションで、新たな可能性を発見
午後からのAdobe MAX Japan 2025会場では、クリエイティブの最前線で活躍するスピーカーたちが登壇し、70以上のブレイクアウトセッションが開催されました。開催されたデザイン製品のセッションとその一部を紹介します
株式会社れもんらいふ 千原徹也 氏
株式会社れもんらいふ アートディレクターの千原徹也さん(@thechihara)より、「デザインだけでは生き残れない時代を生き抜くアイデア」と題したセッションが行われました。
AIの登場により、デザインを取り巻く環境は大きく変化しており、数年後にはデザインの仕事の8割が奪われるとも言われています。セッションでは、デザインの仕事がどのように変化しているのか、そしてこれからのクリエイターがどのように向き合うべきかについて語られました。
「デザインは絵作りではなく、コミュニケーションである」。デザインの仕事が減少しているのは、デザインの本質が変化しているためであり、新たなデザインの形として、技術を身につけた上で人とコミュニケーションすることが求められると、自身の経験から得た洞察が述べられました。そして最後に、「ぜひハラカドに遊びに来てください」というメッセージで、セッションを締めくくりました。
はあどわあく 大石十三夫 氏、Lamplighters Label 小林功二 氏、Adobe/Principal Scientist・Adobe Type ナット マッカリー、岩本
「開発担当×文字組み職人が語る『Illustrator、ここがすごい!』」と題したセッションでは、はあどわあく 組版者の大石十三夫さん(@works014)、Lamplighters Label 編集・DTPの小林功二さん(@luktar)、Adobe/Principal Scientist・Adobe Typeのナット マッカリー(@macnmm)、そしてわたし岩本から、最新のIllustrator(バージョン29)に搭載された新しいテキストエンジンと、進化した文字組み機能について解説しました。
セッションでは、Illustratorの強化された文字組み機能のビフォーアフターを、1つのアートボード上で比較しながら紹介しました。組版のプロ・大石さんとベテラン編集者・小林さんが息の合った解説を行い、機能の進化をわかりやすく伝えました。
また、日本語テキストエンジンの開発を担当するナットは、「これらの改善はUserVoiceや、みなさんのフィードバックのおかげで実現しました。」と壇上から感謝の言葉を述べました。
セッション中にプレビューされた現在開発中の「文字組みアキ量設定」については、参加者の95%が「使いたい」とアンケートで回答し、高い期待が寄せられました。
このセッションと、開発中の「文字組みアキ量設定」については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
Illustratorでプロの組版品質をワンクリックで実現する、新しい文字組み設定を開発中!|Adobe MAX Japan 2025 セッション振り返り
https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/02/21/cc-design-max2025-illustrator
保存版|Illustrator 2025 登場!文字組みの改善点と新機能、過去データの取り扱いを総チェック!
https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/11/01/cc-design-illustrator-text-update-2025
コズフィッシュ 祖父江慎 氏、アドビプリンシパルデザイナー 西塚涼子
コズフィッシュ ブックデザイナー・アートディレクターの祖父江慎さん(@sobsin)と、アドビプリンシパルデザイナーの西塚涼子(@ryon106)より、「ついにリリース!新時代のバリアブルフォント『百千鳥』徹底解説」と題し、新時代のバリアブルフォント「百千鳥」を解説しました。
キーノートセッションでも岩本から紹介した「百千鳥」ですが、このセッションは、「この書体は、いかにすごいかを学んでほしい!」という祖父江さんの力強いメッセージで幕を開けました。
西塚が「百千鳥」を着想し、開発から完成に至るまでの間、デザイナーの方々に協力いただいたエピソードや、行事さんが書いた圧縮された手書き文字、新聞紙、標識、店舗サインなど、インスピレーションの源となったさまざまな資料が紹介されました。15年という長い年月をかけて生み出された「百千鳥」には、多くの試行錯誤と深いこだわりが込められていることが伝わる、貴重なセミナーとなりました。
京都芸術大学 情報デザイン学科 宮城ラファエルケンジ 氏
京都芸術大学 情報デザイン学科 イラストレーションコースに在籍する、宮城ラファエルケンジさんからは、「アメリカでの初インターン体験 〜Project Neoで広がる3D制作〜」と題したセッションが行われました。
セッションでは、Adobe本社での3ヶ月インターン経験を通じてアメリカで学んだことや、実際にインターンシップ中に制作した作品、Project Neoを使ったデモンストレーションなどが紹介されました。また、当時のオフィスの雰囲気や休暇中の様子にも触れ、日本では体験できない環境で過ごした貴重な時間について語られました。帰国が近づく頃には、「まだ帰りたくない」と思うほど充実した日々を送り、自身の個性を再発見する機会となったといいます。
最後に、自分にこのようなチャンスを提供してくれた学校の先生やアドビのメンバーに感謝を伝え、ラファエルさんのクリエイティブへの熱意と真摯な姿勢が伝わるセッションとなりました。
メンターセッションを新設。参加者からさまざまな質問が寄せられた
Adobe MAX Japan 2025では、各業界で活躍するクリエイターに、日々のクリエイティブの悩みやキャリアについて相談できるメンターセッションが新設されました。
参加者からはさまざまな質問が寄せられ、業界のプロフェッショナルたちがリアルな成功体験や失敗談を交えながらアドバイスを提供。より実践的で具体的な知見を得られる貴重な機会となりました。これにより、参加者は今後のクリエイティブ活動に役立つ新たな視点やヒントを得ることができたのではないでしょうか。
その他にも各コーナーでは多彩なデザインセッションが開催され、参加者のみなさんに多くのクリエイティビティとインスピレーションをお届けしました。
スポンサー企業がさまざまな魅力を発信!ブース展示で来場者との活発なコミュニケーション
会場内では各スポンサー企業のブース展示が設けられ、参加者とさまざまなコミュニケーションが行われました。普段は直接話す機会の少ない企業の担当者と交流できたことは、企業と参加者の双方にとって有意義な時間となったのではないでしょうか。
また、毎年恒例となったアドビ工房では、セイコーエプソン株式会社/エプソン販売株式会社の協力による「アドビ工房 powered by Adobe Express」コーナーが設けられ、Adobe Expressを使って、オリジナルのトートバッグとポスターを作る体験が提供されました。
午後一に実施された、ゆかまるデザインさん(@yukamaru_design)によるセッションでこの工房の魅力が紹介され、工房内は終始参加者で賑わいました。多くの方がオリジナルグッズの制作に挑戦し、Adobe MAX Japan 2025の思い出を持ち帰っていただきました。
「アドビ工房 powered by Adobe Express」コーナーの展示
クリエーター同士の活気溢れる交流で、新しい繋がりと閃きが生まれたコミュニティラウンジ
コミュニティメンバーが仲間と自由に交流する「コミュニティラウンジ」
会場内には、さまざまなコミュニティが集う「コミュニティラウンジ」が設けられました。このスペースでは、各コミュニティのメンバー紹介や交流会が行われ、クリエイター同士が自由に交流できる貴重な場となりました。クリエイター同士が気軽に交流し、これからコミュニティに参加してみたい方が気になるコミュニティを見つけるなど、メンバーが仲間と自由に交流を楽しみました。
会場でしか体験できない特別なアクティビティで、感性に最高のインパクトを。熱気が溢れるパワフルな1日に
熱気と活気に溢れる会場内
ゲームをしながら参加者同士自由に交流できる「ボードゲーム」コーナー
Adobe MAX Japan 2025は、セミナーだけでなく、さまざまなイベントと企画で会場全体が盛り上がりました。また、Adobe MAX Japan 2025の開催決定と同時に、デザインコンテストとして「MAX Challenge」がスタートし、みなさんから686もの作品を投稿いただきました。イベント当日にグランプリ作品が発表され、素晴らしい作品を全員で共有しました。
MAX Challenge 2025 グランプリ決定!応募総数は686作品
https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/02/13/cc-design-max-challenge-winners-2025
Bombay Sapphireのジンで作られたアドビオリジナルカクテル
オリジナルカクテルを楽しみながらステージ上の「Sneaks」を見つめる参加者
イベントの最後には、Beer Bashを開催。さまざまなフィールドで活躍するクリエイターが一同に会する大パーティーでAdobe MAX Japan 2025を締めくくります。ステージ上で紹介されたおなじみの「Sneaks」では、現在開発中のプロジェクトがデモンストレーションで披露され多くの注目を集めました。
会場内ではこの場でしか味わえないBombay Sapphireのジンを使用したアドビオリジナルカクテルが提供され、参加者たちはイベントの締めくくりのひとときを自由に楽しみました。
多くの支援で実現したAdobe MAX Japan 2025
Adobe MAX Japan 2025は今年も大盛況となりましたが、この成功はアドビだけの力では成し得なかったものです。ご来場いただいたみなさん、講演をしてくださった登壇者の方々、そしてブース運営を支えてくださった社内外のボランティアのみなさんの協力があってこそ、今回のイベントを実現することができました。
このような大規模なイベントを開催するためには、長期間にわたる準備が欠かせません。イベント会社やクリエイターのみなさん、制作会社、そして多くのパートナーと力を合わせ、試行錯誤を重ねながら取り組んできました。その結果、多くの努力が実を結び、今回の成功へとつながりました。
また、開催当日も、イベントスタッフのみなさん、カメラマン、音響や設営を担当された方々、そしてその他多くの関係者に支えられ、Adobe MAX Japan 2025を無事に終えることができました。みなさんのご尽力のおかげで、私も安心して登壇することができました。
改めて、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
クリエイティブで創る未来をもっと自由に、もっと豊かに
Adobe MAX Japan 2025キーノートセッションを担当したメンバー
このイベントを通じて、新たな発見や多くのインスピレーションを得ることができたなら、わたしたちも嬉しく思います。
わたしたちはそれぞれのクリエイティブな道を歩む中で、優しさと思いやりを持ち続けることが、これからの創造力をさらに豊かにする力になると信じています。
アドビはこれからも、みなさんの創造の旅をサポートし、ともに成長していきます。
今後もともに、新しいクリエイティブの可能性を広げていきましょう!