教育現場で生まれた実践を、教育現場の先生に直接伝える。そんな学び合いの場が、2026年8月に開催された「第19回全国高等学校情報教育研究会(全高情研)全国大会〈神奈川大会〉」のアドビブースで生まれていました。
毎年、全国の情報教育関係者が集い、研究発表や情報交換が行われる全高情研の全国大会。アドビの展示ブースは今年の新たな取り組みです。特徴的だったのは、運営を担当していたのがアドビ社員ではなく、アドビのグローバル教員コミュニティ「Adobe Creative Educator(ACE) Innovator」の先生方だったことでした。
なぜ教員が企業展示ブースの運営を担ったのか。そして、その取り組みからどのような学びや価値が生まれたのか。ブース運営の中心を担った神奈川大学附属中・高等学校 校長の小林道夫先生にお話をうかがいました。
「現場の先生が伝えることに意味がある」 ACE Innovatorがブース運営を担った理由
「全国の情報科の先生方が集まる場だからこそ、現場で実践している教員の言葉で伝えることに価値があると考えました」小林先生は、今回の取り組みの出発点をそう振り返ります。
Adobe Creative Educator (ACE)は、創造性を育む学びの実践に取り組む小中高校の先生方のグローバルコミュニティです。Adobe ExpressやAdobe Fireflyなどのツールを活用しながら、学校種や地域を超えて教育実践や知見を共有し、新しい学びの可能性を探究しています。中でもACE Innovatorは、ACEコミュニティをリードする先生方で、毎年厳正な審査を経て認定されるメンバーで構成されています。
今年の全高情研 全国大会〈神奈川大会〉では、そうしたACE Innovatorの先生方が協力し、企画や準備から当日の来場者対応まで中心となって運営に携わりました。その背景について、小林先生はこう説明します。「アドビ製品の機能を紹介するだけであれば、企業の方の方が詳しいかもしれません。しかし、教育現場で実際にどのように活用しているのか、どのような学びにつながったのかという話は、現場の教員だからこそ伝えられると思っています」
7月に実施されたACE Innovatorの企画会議で、当日の運営方針や役割分担について議論をスタート。大会までの約1か月間、運営に参加する先生方がオンラインで連携しながら、展示内容やデモンストレーションの方法、来場者とのコミュニケーションの進め方などを検討し、準備を進めていったといいます。教育現場での活用事例や授業設計の考え方、導入時の工夫や課題。実践者だからこそ語れるリアルな経験を共有することが、今回のアドビブースの出発点となりました。
教員同士だからこそ生まれた対話。全高情研のアドビブースで起きていたこと
今年の全国大会は8月7日と8日の2日間にわたり神奈川大学横浜キャンパスで開催されました。ポスターセッション・企業展示の会場には約90のブースが並び、情報教育の現在と未来について活発な議論が交わされました。
大会副委員長も務めた小林先生は、大会全体について次のように振り返ります。「想定を大きく上回る参加者数となり、情報教育に対する関心の高さを改めて実感しました。会場全体に熱気があり、多くの先生方が積極的に情報交換をされていたことが印象的でした」
アドビブースには両日を通して200名近くの先生方が来場されました。Adobe ExpressやAdobe Fireflyを活用した授業実践、生成AIの教育利用、探究学習や情報デザイン教育への活用方法などについて、多くの質問や相談が寄せられたといいます。
小林先生が特に印象的だったと語るのは、
- 実際の授業ではどのように使っているのか
- 生徒はどのような活動を行っているのか
- 探究学習ではどのように活用しているのか
- 評価はどのように行っているのか
といった、授業実践に直結する具体的な質問が数多く寄せられたことでした。小林先生をはじめ当日のブース運営を担ってくださったACE Innovatorの小池則行先生(和光高等学校)、篠原孝文先生(宇都宮文星女子高等学校)、白井美弥子先生(兵庫県立伊丹北高等学校)、竹中章勝先生(京都精華大学 / 苅田町教育委員会 ICT教育アドバイザ)、西澤廣人先生(ドルトン東京学園 中等部・高等部)、能城茂雄先生(東京都立三鷹中等教育学校)、濱田和幸先生(済美平成中等教育学校)、山田将太先生(洗足学園小学校)が、そうした質問に次々と対応。単なる機能紹介にとどまらず、学びの設計や授業づくりの工夫まで踏み込んで回答。教員同士ならではの実践的な対話が何度も展開されたそうです。
「私たちACE Innovatorの狙いどおり、授業実践について情報交換をする場になっていました。『うちの学校ではこうしています』『その取り組みは面白いですね』といった会話が自然に生まれていて、教員同士だからこそできる交流になったと感じています」
生成AIへの高い関心。来場者との対話から見えてきた教育現場のニーズ
ACE Innovatorの先生方によるAdobe ExpressやAdobe Fireflyの使い方デモにも来場者の関心は非常に高く、特に「生成AIに強い関心を持っている先生が多かったです」 と小林先生。
一方で、「生成AIをどう授業につなげたらよいのか、どのように学びとして成立させるのかについては、まだ試行錯誤されている段階であるという印象を受けました」 とも小林先生は話します。来場者にとって、ACE Innovatorの先生方による実践紹介は具体的なヒントになったようです。
実践を共有し、学び合うコミュニティへ。ACE Innovatorのこれから
今回の全高情研での取り組みを通じて、小林先生が改めて実感したのは、ACE Innovatorというコミュニティの価値でした。「普段であれば接点のない先生方がつながり、それぞれの経験や知見を持ち寄りながら活動できることは、ACE Innovatorならではの魅力であり、強みだと思います」
とくに今回のアドビブースは、全国各地で活動するACE Innovatorの先生方が地域や学校の枠を越えて協力しあうことで作り上げたもの。「協働のプロセスそのものにも大きな価値があったと感じています」 また、来場者との対話そのものが、運営メンバーにとっても学びの機会になったといいます。「私たち自身も学ばせていただくことがたくさんありました。来場された先生方との対話を通じて、新しい課題やニーズも見えてきました」
最後に、ACE Innovatorの可能性について、小林先生は次のように語ってくださいました。
「生成AIをはじめ、新しい技術が次々と登場する時代だからこそ、一人で取り組むのではなく、実践を共有しながら学び合うことが重要だと思います」
「だからこそ、ACE Innovatorには、そのためのコミュニティとして大きな可能性があります」
「これからも全国の先生方がつながり、互いの実践から学びながら、情報教育や創造的な学びの発展につながる活動を続けていきたいと思います」
今回の全高情研で見えてきたのは、実践を共有したいという教育現場の強いニーズと、それを支える教員コミュニティの価値でした。企業展示という枠を超え、教育現場の実践者同士が学び合う場を生み出したACE Innovator。教員だからこそ伝えられる実践があり、教員同士だからこそ生まれる学びがあります。
ACE Innovatorは、これからも全国の教育者同士をつなぎ、実践を共有しながら創造的な学びの可能性を広げていきます。アドビはその活動を支援しながら、教育現場における新しい学びの実現に取り組んでまいります。